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ダービー 壺 (1770年頃)
A Derby Vase Ca.1770



 左右に取っ手のついた壺。肩が張り出し、口はすぼまっている。上部は幅広の縦縞が施された形状になっているが、下部は丸くなっている。1750年代のセーヴル作品に倣ったものだと思われるが、セーヴル作品は取っ手がかなり小さく、口がこれほどはすぼまっていないなど、見た目の印象は大分異なる。(また、同じダービー作品でもプロポーションの異なる作品がある。)絵付け装飾面では、上部にフルーツが多色彩で描かれ、下部は地色がトルコ色(あるいは空色)となっている。また、取っ手、口縁、それにトルコ色部分と白磁部分とのV字型の境目には金彩が施されている。

 本品は、全体的には端正な形状であり、1770年以降のチェルシー・ダービー期の作品かとも思われるが、取っ手は60年代のロココ調であり、台座もチェルシー・ダービー期で一般的な四角形ではないなど、多分に過渡的な特徴を有している。蓋は逸失しているが、ダービー美術館の類似作品にはドーム状に花のつまみがついた蓋が付随しており、これもチェルシー・ダービー期より前の時期の特徴と言える。なお、このダービー美術館の作品には、文献によると"20"という型番が刻まれているとされており、そうであれば、型番制度が導入されたと目される1773〜74年以降の作品ということになるのだが、同美術館に直接確認したところ、文献の記載ミスで実際には型番は刻まれていないとのことであった。これまでのところ、この型の壺には型番が記された作例が見つかっておらず、この点からも、1770年代初頭以前の作品である可能性が高いように思われる。

 一方で、フルーツの絵付けはチェルシー・ダービー期に見られるものであり、絵付けに関しては現存する他の類例と合わせてさらに検討する必要があると思われる。(ダービー「D2-24」参照。)



高さ(H):18.5cm

マーク: パッチマーク
Marks: Patch Marks

参照文献/References:
- Gilbert Bradley "Derby Porcelain 1750-1798" Item 46 (p.99)
- V&A Museum website: http://collections.vam.ac.uk/item/O165604/vase-william-duesbury-co/
- William King "Chelsea Porcelain" p.55 and Plate 55, Fig. 1
- Joanna Gwilt "French Porcelain for English Palaces" pp.22-23
- Royal Collection Trust website:
http://www.royalcollection.org.uk/collection/36117/vase-cannele-or-vase-a-corset


(2014年4月掲載)