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フライト社「クウェイル・パターン」コーヒーカップ (1795年頃-19世紀初期)
Flight Factory "Quail Pattern" Coffee Cup Ca.1795-early19th century



  

 Simon Speroによると、ウースターには9種類の鶉図柄があるそうである(ただし、そのうちのいくつかは、ロンドンのJames Giles工房の図柄である)。本品に描かれているのは、それらの中で、最も遅く導入されたものである。鶉や梅の木の配置など、全体の図柄自体は、柿右衛門作品をコピーした欧州及び英国全域に共通するもの(ボウ「B1」参照)であるが、縁飾りにトルコブルーが用いられている点が大きな特徴である。
 このトルコブルーは、本図柄やジャバウォッキー図柄(チェルシー・ダービー「CD1」参照)をはじめとする日本風の図柄を中心に、作品の縁を飾る波型の模様に使用され、ウースターを代表する色の一つとなっている。
 本品は、幅広の縦縞とループハンドルを持つ小ぶりなコーヒーカップで、一見したところ、1770年頃の典型的なウースター作品のように見える。しかし、磁体が非常に白くて、かっちりと焼き上げられており、絵付けに関しても、細部まで一糸乱れぬ筆遣いであるなど、ドクター・ウォール期作品とは異なる特徴がいくつかある。磁質については、フライトによる経営に移行した当初、1795年頃までに、大幅な向上があったことが知られている。一方、鶉図柄に関しては、18世紀初頭あたりからは、縁飾りがボウ譲りの赤い唐草模様(ボウ「B1」参照)に「先祖返り」した例も多くなっている。また、取っ手の形状に関しては、フライト社ではリング・ハンドルが多くなり、ドクター・ウォール期のようなループ・ハンドルは、あまり見られない。
 以上の点を考慮すると、本品が作られたのは1795年頃以降のフライト社の時代であるが、新規の作品としてではなく、ドクター・ウォール期の作品の補充として注文生産されたものである可能性が高い。
高さ:5.8cm
Height:5.8cm
マーク:なし
Mark: None