故宮博物院(中国:北京)
故宮博物院(The Palace Museum)
明、清代の皇帝の居城であった紫禁城は、今は故宮博物院として一般に開放され、北京を代表する観光地となっています。ユネスコの世界遺産にも登録されている一大建造物群で、訪れる人々を感嘆させてやみません。しかし、こと陶磁器の展示に限っては、そもそも、かつての収蔵品の多くは、現在では台北の故宮博物院にありますし(国立故宮博物院(台北)のページを参照)、北京に残っている作品のうちでも展示室に置かれているものは少数です。しかも、案内が不親切なので、広大な敷地の中で展示室を探し出すだけでも一仕事です。
以下は、それでも陶磁器の展示を確認しつつ見学を進めたいという方のための目安として読んでいただければと思います。
入り口は、長大な城壁の南と北にそれぞれあります。南口がいわば正門で、天安門を入ってまっすぐ行ったところにあります。そこからしばらく進むと、皇帝が政事を執った太和殿を中心とする故宮の中心部に出ます。普通なら、石を敷き詰めた広い前庭を直進して、吸い込まれるように太和殿に向かうところですが、そこをぐっとこらえて向かって左側の通路のような建物に向かいます。そこが宝物の展示室になっています。この展示室は、いくつかの部屋に分かれており、その一部に宋代などの陶磁器が展示してあります。並んでいる作品はどれも素晴らしいですが、残念ながら数量的には若干物足りなさを感じます。
さて、その先にも続々と登場してくる巨大かつ主要な建築物(陶磁器の展示はほとんどありません)を過ぎると、皇帝や皇后、妃たちの住居だったいわゆる後宮に入ります。左右に比較的小ぶりな(といってもかなりの大きさですが)住居群が連なっています。どれも似ている上に、それぞれが高い壁に囲まれ、その間を通路が網の目のように走り、地図を持っていても迷子になりそうです。北に向かって右奥の区域の建物群が、宝物の更なる展示室に当てられており、「古陶磁研究センター(古陶瓷研究中心)」もその一つです。この建物は二階建てで、一階は清・同治帝、光緒帝の婚礼用磁器セット(黄色地に寿、卍、蝙蝠などが描かれたもの)などが展示されていました(常設展なのか企画展なのかは不明)。二階は陶片室で、各時代・各窯の窯跡から出土した陶片の山です。汝窯作品など一部は完成品と並べて比較できるようになっています。
また、向かって一番右奥は「珍宝館」と呼ばれる、これも一連の建物群になっています。(ここだけ別料金です、と言っても安いですが。)手の込んだ工芸品の多くは、ここに展示されています。見事なものですが、陶磁器は少ししかありません。
全体を通して展示場所に関する説明が少なく、また、膨大な数の建物群を全部見て回ることなどほぼ不可能ですから、もしかしたらまだ見落としている場所があるかもしれません。しかし、いずれにしても、ここでは陶磁器は脇役であると心得て、古の皇帝になった気分で巨大で複雑なこの城を楽しんでください。なお、土産物店は敷地内に点在していますが、どこも小さな店ばかりです。中では、珍宝館の奥にある店が、陶磁器関係の書籍を多く扱っているようです。
(2008年1月執筆)