フィラデルフィア美術館(米国:フィラデルフィア)
Philadelphia Museum of Art (USA: Philadelphia, PA)
荘厳な建築にふさわしい重量級のコレクションを誇る大美術館です。陶磁器にも力を入れており、本美術館の収蔵品に基づいて、イタリア・ルネッサンス陶器、デルフト陶器、それに米国のRookwoodの陶器といった特徴ある分野の書籍も出版されています。
陶磁器の展示は館内でいくつもの場所に分散しています。18世紀の英国及び欧州陶磁器に関しては、2階右手の「欧州美術1500−1850年」のセクションの中ほどに、小さいですが専用の展示室が設けられています。マイセンの「白鳥のセット(Swan Service)」の大きなトレイは実に見事ですし、お約束のチェルシー「山羊と蜂の水差し」(彩色版)もあります。ウースターではドクター・ウォール期の典型的作品群もいいですが、フライト期の「ホープ・セット(Hope Service)」の丸皿の美しさが目を引きました。なお、この専用展示室のすぐ近くに、ニューヨークから移築した豪邸の一室が再現されており、その中にセーヴルの美しい壷など(青いものとピンクのもの)が整然と陳列してあります。
個人的に一番うれしかったのは、ダービー作品がいくつも展示されていたことです。米国の美術館では、18世紀英国陶磁器というと、チェルシー、ボウ、ウースター、ウェッジウッドあたりが中心で、ダービー作品はなかなか見ることができず、ダービー・ファンとしてはいつも残念な思いをさせられるからです。ダービーの展示品は、具体的には、人間の顔が両側についた「フリル付きの壷(frill vase)」、人形の周囲に塩用(?)の皿がいくつも配された「センター・ピース(center piece)」、ネプチューンなどの磁器人形といったところです。(本美術館とは直接の関係はありませんが、フィラデルフィアとダービーとの関係についての一つのエピソードとして、ダービー「D3-8」をご参照ください。)
英国磁器でもう一つ見落としてはいけないのは、1階右手「欧州美術1850−1900年」のセクションに入ってすぐの部屋にある、ミントンのpate-sur-pateの壷です。大御所SolonとBirksによる、ため息が出るほど美しい作品を4〜5点見ることができるはずです。(このセクションは、基本的には、印象派絵画の極めて充実したコレクションを展示してある場所ですが、ところどころに、はっとするような陶磁器作品が置かれています。)
アジアの陶磁器は、2階左手奥の「アジア美術」のセクションに展示されています。中国と韓国の作品が特に充実しています。中国作品は各時代の作品が揃っていますが、唐三彩のコレクションは特に目を引きます。
その他、オランダのタイルなどの展示もユニークなものですが、展示場所も奥まった場所にある階段の壁であったり、売店やレストランのある地下の通路だったりと、これまたユニークです。
(2006年1月執筆)