ワルシャワ国立博物館(ポーランド:ワルシャワ)
Muzeum Narodowe w Warszawie (National Museum in Warsaw; Warsaw, Poland)
近年すっかり現代化(あるいは西洋化)して明るくなったワルシャワですが、それでも所々に旧共産主義下の「灰色の町」を思い起こさせる建物がまだ残っています。このワルシャワ国立博物館の建物もそうしたものの一つかもしれません。あまり装飾のない鉄筋コンクリートの頑丈な作りで、正面はいかめしい鉄柵の門で閉じられています。すぐ横には軍事博物館が隣接しており、その正面庭にかつての戦闘機や戦車などが所狭しと並べられているのが見えます。
この博物館は、中世の欧州絵画や20世紀のポーランド絵画をコレクションの主力としていますが、それとは別に欧州装飾美術部門もあり、おっと思うような良質の欧州陶磁器コレクションを有しています。
銀器やガラス器なども含むそれら装飾美術作品は、最上階にあたる2階(日本的には3階になります)に集められています。18世紀のデルフト作品10数点に始まり、かなりの数の18世紀マイセン作品が続きます。聖ピーターと聖ポールの大きな白磁像(ケンドラー作)はひときわ目を引きます。「スワン・サービス」は大皿、チュレーン、フルーツ用カバーなど10点以上が揃っています。狩猟図の描かれたティーセットは、エナメルと金彩で装飾された木箱と一緒に展示されています。大型の3点組の壺や柿右衛門図柄の皿などもあります。
ヴァンサンヌ/セーヴルも皿、ティーセット、壺など、かなりの作品が展示されています。その他ではウィーンやベルリンの作品が、やはりティーセットを中心に目立ちます。中型から小型のフィギュアにも、マイセン、ベルリン、ニンフェンブルグ、フランケンタールなどのよい作品がいくつもあります。ロシアの作品もいくつかあり、サンクト・ペテルブルグのカップや壺、高さが150cmくらいありそうな巨大壺(シカゴ美術館の「ロンドンデリーの壺」を彷彿とさせます。ロシア製?とクエスチョンマーク付きで表示されていましたが。)もあります。
英国作品は少ないですが、花と緑の葉が付いた植木鉢(花も葉も全て磁器)にチェルシー(1760年頃)のクレジットがついていました。植木鉢本体には緑を主体とする田園風景内に恋人図が描かれており、顔を模した取っ手が両側についていました。あとはウェッジウッドのジャスパーウェアの楕円形の陶板が一つ。
その他の階の絵画展示室にも、部屋の中央などに装飾美術作品が展示されていることがあり、18世紀のファイアンスの壺などを見ることができます。
博物館の建物は、外観だけでなく内部も一昔前の面影をとどめており、空調を旧式の家庭用扇風機に頼っている部屋まであります。各部屋に監視の職員がいますが、何だか「共産主義下の公務員」的な雰囲気です。館内マップがないかと尋ねたら、売店で売っているということで、1ズロチ(30円程度)でした。何年か後に、博物館自体がどう変化しているかを見に来たいと思わせる、ちょっと変わり種の博物館です。(場所は、市の中心部の一角で、バスや路面電車でも行けるようですが、旅行者にはタクシーが便利だと思います。)
(2009年8月執筆)