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シカゴ美術館(米国:シカゴ)
The Art Institute of Chicago (USA: Chicago, IL)


 米国を代表する大美術館の一つです。特に、欧州絵画が充実しており、中でも印象派のコレクションは米国内でも一、二を争うレベルではないかと思います。欧州の陶磁器についても、装飾美術の一環として幅広い作品を収蔵しており、"European Decorative Arts in the Art Institute of Chicago" という出版もあります。

 欧州陶磁器の展示は、正面から入ってそのまま真っ直ぐに通路を進み、中ほどに来たところで階段を地下に降りた右手にあります(ちょっと分かりにくいです)。家具や銀器、それにガラス製のペーパー・ウエイト(とてもユニークなコレクションです)などと一緒ですが、全部で10部屋ほどあり、かなり内容の濃い展示です。

 一番見ごたえがあるのは、セーヴル作品でしょうか。高さが何と130cm以上あり全面金地の上に花絵が描かれている「ロンドンデリーの壷(Londonderry Vase)」にまず圧倒されます。これは19世紀初頭にナポレオンが製造を命じたものの、最終的にはルイ18世が外交上の贈呈品として、英国の外交官だったロンドンデリー公爵に贈ったものだとのことです。その他ヴァンサンヌ/セーヴルでは、18世紀作品を中心に、白磁像(素焼きと釉薬をかけたもの両方)、花瓶、食器類など数多く展示されています。

 大陸作品では、マイセンも多く、特に「猿の音楽隊(指揮者も含めて全15体)」は見事です(デウィット・ウォラス装飾美術館のページを参照)。ケンドラーによる中国風モチーフを生かしたセンターピース(台座、砂糖入れ付き)も必見です。他には、サンクルー、シャンティイー、カポディモンテ、ドッチア、フュルステンブルグ、ニンフェンブルグ、ウィーン、それにロシアやスペインの作品まであります。陶器についても、デルフトはもちろん、マルセイユやストラスブールの作品まであります。

 英国磁器については、18世紀のウースター作品が幅広くそろっています。東洋風図柄(Two-Quail、Queen Charlotte、Sir Joshua Reynolds、Bishop Sumner、Jabberwockyなど)の描かれた多様な作品を見ることができます。しかし、より目をひくのは、チェルシーの「闘鶏を模したスープ入れ」、「うさぎを模したスープ入れ」(ウィンタートゥアのページを参照。なお、本品は7体の存在が知られていると解説されていました。)や、柿右衛門風の鳥が描かれた壷や口細のJarなど、またボウ作品では、迫力満点のモンゴル人のペアの白磁胸像、同じくペアの小さなライオン像やフクロウ像などの珍しい作品でしょう。

 ダービー作品も秀逸です。まずは、Vulliamy社製の気圧計が注目です。これは、ダービーの素焼き白磁像を用いた「人形つきの気圧計」ですが、Vulliamy社は、1780年代以降、ダービーの素焼き白磁(ビスケット)像を購入し、それを組み込んだ置時計や計器類を多数製作しています。上品で洗練された同社の製品は当時の上流階層に好まれたとされますが、美術館ではなかなかお目にかかれません。その他ダービーでは「四大陸(Four Continents)」と題される四人の子供像(それぞれ、アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパと名づけられています)の人形などもあります。他の英国窯では、ボクソールの昆虫が描かれたソースポート、ブリストル(硬質磁器)の柿右衛門風の花鳥図が描かれた六角形の壷など、米国ではなかなか見ることのできない作品も展示されています。スタッフォードシャーの陶器作品もあります。

 東洋の陶磁器も充実しています。展示室は、1階正面入り口近くの右手という分かりやすい場所です。特に、中国各期の作品は見ごたえがあります。韓国の青磁もなかなかですし、日本の作品は数は多くないですが、柿右衛門や鍋島の皿などに優品があります。


(2006年8月執筆)