コラム1.あこがれ?あやかり?もう一つの社名
18世紀の英国磁器窯は(同じ地域に複数の窯が存在するのでない限り)窯の存在する地名をそのまま社名にし、実際にも地名で呼ばれることが一般的です。しかし、それとは別に、自らを特徴付けるために特別な呼称を使っていたケースもあります。
代表的なのは、ボウが名乗っていた”New Canton”でしょう。もちろん磁器の故郷である中国の地名を冠した名称です。”MADE AT NEW CANTON 1750”と製造年と社名をあわせて記したインクポット(装飾は柿右衛門スタイル)もあります(コラム2のボウのページ参照)。
ボウに対するライバル心むき出しの例がウースターで、同社の設立契約書において、社名を”Worcester Tonquin Manufacture”としています。もっとも、この名称はすぐに”Worcester Porcelain Manufactory”に変更されており、部外に向けて使用されたことはなかったようです。
上記2社が東洋からの強い影響を自らの社名に反映させたのに対し、大陸への傾倒を示したのがダービーです。同社は、自らを”Second Dresden”と呼び、マイセンからの影響の強い作品を多く製造しました。