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第四回「鬼女の鱗」
原作:「鬼女の鱗」
   (『鬼女の鱗』より)
脚本:松平繁子
演出:佐藤峰世
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[あらすじ]
 料理屋。女が一人部屋へ通される。唐花屋の内儀だ。唐花屋は内儀に、次の間に
控えるよういう。寄り合いに出ている商人に唐花屋は何かを見せる積もりらしい。
内儀の控えている間を開けると彼女は長襦袢になっている。その長襦袢を脱ぐと、
背中には娘道成寺・白拍子花子の般若と化した彫り物があった。

      *       *      *     *

 料理屋で内儀は一人の男に出会う。
「堀田様……」
「これは驚いた。何年ぶりかな」
「十年……です……」
 翌朝、両国橋の杭にに土左衛門があがった。屍体は心の臓を一と突きで刺されて
いる。屍体は木更津の漁師・寅助のものだった。どうも彼は抜け荷と関わっていた
らしい。辰は松吉を見張りに付けていたのだが、その矢先に殺されたのだった。能
坂もそれを聞いて、
「しゃらくせえ……。辰、その黒幕をいぶり出せ」

 辰は、怪しいと睨んだ堀田屋を見張る。そこへ女が一人通りがかった。暖簾から
誰かが出て来る様子に女は身を隠す。出てきたのは店の主・堀田屋と若い女房だっ
た。物陰にいた女を見た堀田屋は驚くが、すぐに駕篭に乗る。女は唐花屋の内儀、
堀田屋は、先日彼女が出会った男だった。
 辰は松吉に堀田屋の後を尾けさせる。さっきの女の後ろにいた辰は、彼女が男に
絡まれているのを見る。男は彼女・蘭に彫り物を見せてくれと頼んでいたのだが、
彼女を顔を見て、
「お前さん、以前どこかで……」
 辰が現れて彼を追い払った。辰は彼女の鼻緒をすげ替えてやる。
 蘭はもと白蘭という名の花魁で、吉原に出ていたのを唐花屋に落籍されて内儀に
なったのだった。長屋へ帰った辰に松吉から知らせが入った。堀田屋が豊島町に妾
を囲っているとのこと。堀田屋の内儀は公儀御用達の油問屋の娘。これではうかつ
に手が出せない。
 その矢先……。
 堀田屋の屍体が発見された。屍体の側で捕らえられた男は般若の勝という彫物師。
彼は先日辰が追い払った男だった。凶器は南蛮渡りの刃物。屍体をあらためると、
その足には彫物があった。丸に揚羽蝶と、三ツ鱗の比翼紋。勝はその彫物に憶えが
あるという。その紋は彼が彫ったものだと……。

                   (以下原作のネタバレになるので省略)


[みどころ]
 ・今回、一番のみどころはお蘭と辰の出会いとその交流。もう一つのみどころも
  あるのだが、下手するとネタバレになるからなぁ……。


[原作との比較]
 今回は原作に割合忠実に作ってある。原作では語り手が比翼紋を彫った彫物師、
般若の勝はその下の職人で、屍体を見てきただけの役回り。辰を主人公にする必要
上、原作通りに映像化出来ない以上、むしろこの脚色は望ましいものといえる。た
だ、そのために原作では重要な伏線になるシーンがカットされているのは困り物だ
が……。個人的な好みでいえば、今回の話の人情の部分だけではなく、ロジックを
も活かすためにも謎解きはもう少し遅くても良かったんじゃないかと思う。ラスト
は悪くないのだが、原作に比べて蛇足の感が強い。
 今回はそれほど時代考証に穴がない。と、いうか、へんなことをしなかったので、
安心して観られた。
 多少文句を。松吉が辰の家に「大変だぁ!」といって飛び込むが、これじゃあ、
まるでガラッ八だ。なにも銭形平次の真似をする事もなかろう。それと、照月と頓
鈍だが、ここは無裡庵の世界の住人なんだから、所帯を持たして欲しいなぁと思う。


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