認知件数の推定

 1980年以降の刑法犯(交通業過を除く)について、検挙状況に関する統計をもとに成人と少年の認知件数を推定した。さらに両者について推定犯罪率(人口10万人あたりの推定された認知件数)を求めた。なお、被疑者の年齢に着目した検挙状況の統計には大きく分けて検挙人員と検挙件数の2種類があり、その両者について認知件数の推定値及び推定犯罪率の算出を行った。

1.検挙件数の統計に基づく認知件数の推定

1−1.検挙件数の内訳
 警察庁の犯罪統計書に記載された「罪種・態様別 認知・検挙件数及び検挙人員」によると、検挙件数は解決件数と解決件数を除いたものの二つに分けられる。ここで、解決件数とは解決事件の件数で、解決事件とは「刑法犯として認知され、既に統計に計上されている事件であって、これを捜査した結果、刑事責任無能力者の行為であること、基本事実がないことその他の理由により犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件」をいう。
 さらに、前記統計書の「成人・少年事件別 共犯形態別 検挙件数」には成人事件、少年事件及び成人少年共犯事件の解決件数を除いた検挙件数が示されている。以下の記述において成人事件、少年事件及び成人少年共犯事件に解決事件は含まれていないものとする。

1−2.認知件数の推定
 上述のように検挙件数は解決件数と(解決件数を除く)成人事件、少年事件、成人少年共犯事件の検挙件数の四つに分けられる。これらの値の検挙件数総数に占める割合が認知件数のそれに等しい(つまり解決事件と成人事件、少年事件及び成人少年共犯事件の検挙率が等しい)と仮定して認知件数を割り振った。ただし、少年事件及び成人少年共犯事件は少年関係事件として一纏めにした。
 刑法犯には何十もの罪種があるが、大きく6つ(凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯、その他の刑法犯)に分類される。これらの罪種別に解決事件を除いた成人事件と少年関係事件の認知件数を推定し、各々足し合わせた。
 なお、警察庁の犯罪統計書において1988年まで知能犯とされ、以後はその他の刑法犯に分類されている占有離脱物横領は、認知件数の推定に際し一貫してその他の刑法犯に含めた。

 以上を式で表すと、次のようになる。

 刑法犯(交通業過を除く)をn組の罪種に分け、i番目の罪種の認知件数をXi、検挙件数をYiとする(i = 1,2,…n)。
 i番目の罪種の成人事件の検挙件数(解決件数を除く)をYMi、少年関係事件の検挙件数(解決件数を除く)をYmiとする。
 そして、成人事件の認知件数推定値(解決件数を除く)をXMi、少年関係事件の認知件数推定値(解決件数を除く)をXmiとすると、それぞれ、

XMi = Xi * YMi / Yi
Xmi = Xi * Ymi / Yi

 あとは、刑法犯(交通業過を除く)の成人事件の認知件数推定値(解決件数を除く)をXM、少年関係事件の認知件数推定値(解決件数を除く)をXmとおいて、各罪種の和を取ればよい。

XM = XM1 + XM2 + … + XMi + …+ XMn

Xm = Xm1 + Xm2 + … + Xmi + …+ Xmn

注 
 全罪種をまとめた刑法犯の認知件数を成人・少年別に推定した結果は、刑法犯の各罪種をどのようにグループ化するかによって変わる。
 例えば、少年関係事件の認知件数推定値は、交通業過を除いた刑法犯全体の検挙件数に占める少年関係事件の構成比を用いて一回で計算した場合と、罪種ごとに計算した結果を足し合わせた場合とで一般に異なる。
 認知件数に占める少年関係事件の割合(推定値)は、前者の場合には各罪種の検挙件数に占める少年事件の割合を各罪種の検挙件数で重み付け平均した値となり、後者の場合には認知件数で重み付け平均した値となる。罪種ごとに検挙率が違うので、刑法犯全体に対する各罪種の比率は認知件数と検挙件数で異なる。このため、上の二通りの方法で求めた値は一般に等しくならない。
 なお、これは検挙人員をもとに認知件数を推定する場合にも当てはまり、重み付け平均に検挙人員の認知件数のどちらを用いるのかによって違いが出る。

1−3.推定犯罪率の算出
 成人(20歳以上)の人口10万人あたりの成人事件の認知件数推定値を成人推定犯罪率、少年(14〜19歳の)人口10万人あたりの少年関係事件の認知件数推定値を少年推定犯罪率とした。成人及び少年の人口は警察庁の犯罪統計書の「年次別 年齢別 人口」および総務省統計局の人口推計資料『我が国の推計人口 大正9年〜平成12年』の「第4表 年齢(各歳),男女別人口」による。

2.検挙人員の統計に基づく認知件数の推定

2−1.検挙人員の内訳
 警察庁の犯罪統計書に記載された「罪種・態様別 認知・検挙件数及び検挙人員」によると、検挙人員は少年(14〜19歳の)と成人(20歳以上)に分けられる。

 以上を式で表すと、次のようになる。

 刑法犯(交通業過を除く)をn組の罪種に分け、i番目の罪種の認知件数をXi、検挙人員をZiとする(i = 1,2,…n)。
 i番目の罪種の成人検挙人員をZMi、少年検挙人員をZmiとする。
 そして、成人の認知件数推定値をX'Mi、少年の認知件数推定値をX'miとすると、それぞれ、

X'Mi = Xi * ZMi / Zi
X'mi = Xi * Zmi / Zi

 あとは、刑法犯(交通業過を除く)の成人の認知件数推定値をXM、少年の認知件数推定値をX'mとおいて、各罪種の和を取ればよい。

X'M = X'M1 + X'M2 + … + X'Mi + …+ X'Mn

X'm = X'm1 + X'm2 + … + X'mi + …+ X'mn

2−2.認知件数の推定
 認知件数の少年による部分と成人による部分の割合が、検挙人員のそれに等しいと仮定し、凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯及びその他の刑法犯の認知件数を成人と少年に割り振り、両者について合計を取った。なお、占有離脱物横領の取り扱いは検挙件数による推定の場合と同じである。

2−3.推定犯罪率の算出
 成人(20歳以上)の人口10万人あたりの成人の認知件数推定値を成人推定犯罪率、少年(14〜19歳の)人口10万人あたりの少年の認知件数推定値を少年推定犯罪率とした。成人及び少年の人口は警察庁の犯罪統計書の「年次別 年齢別 人口」および総務省統計局の人口推計資料『我が国の推計人口 大正9年〜平成12年』の「第4表 年齢(各歳),男女別人口」による。

用語の説明

少年率とは、検挙人員(14歳以上)に占める少年(14〜19歳)の割合をいう。
少年関係事件率とは、解決件数を除いた検挙件数に占める少年事件及び成人・少年共犯事件(解決事件を除く)の割合を言う

3:犯罪白書レビューと懇談会発表

5:参考資料

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