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 サイバー経済と企業の将来
<前編>


21世紀の経営手法

2000・8月

 

 

 

 

 

 

突然、大きな会社が倒産に追いやられたり、

スタートアップカンパニーがわずか数年で市場リーダーになったり。

そして、今までは想像もつかなかった新しいサービス、
新しい業態の会社が爆発的な勢いで誕生しています。

また、消費者あるいは一人の人間という立場から見ても、
より便利で快適な状況が提供される世の中に急速に変化を遂げている真っ最中であることがわかります。

消費者にとっては、より安く、より速く、必要なものを手に入れることができるパラダイスのような状況ですが、その状況を提供する側、すなわち企業が扱うべきこと、取り組むべきことは、複雑さを増しており、経営を取り巻く環境の変化も加速しています。

21世紀の恐竜になりたくなければ、
企業は何かをしなければならないようです。
しかも、今までとは違うことを。

経済環境の変化をつかむ

「21世紀に生き残るには企業は何をなすべきか」というテーマを考えるにあたって、進化論のダーウィンの言葉は実に啓発的です。

「強いものや頭のいいものが生き残るのではなく、環境変化に適応できたものが生き残る。」

では、この変化に適応するために、この変化とは何かを見てみましょう。

一つ目は、アマゾン・ドット・コム。

設立後、2年で世界最大の書店に。
私も時折、利用します。
その理由は安くて便利だからです。
以前は、本や知識が必要なときには、本屋に行って、書棚を探すわけですが、アマゾンの便利さを知ってしまうと、わざわざ本屋に行って、目当ての本を探すという行動自体が間抜けに思えてなりません。また、本屋にその本があるという保証もありません。

アマゾンであれば、家あるいはオフィスにいながらにして、パソコンの画面上に必要情報が光の速度でやってきます。また、その分野のベストセラーランキングや、読者による忌憚の無いその本の書評等もあり、本を選ぶ上での情報に不自由することがありません。

しかも、価格が数十%のディスカウントプライスです。また、支払はその場でクレジットカードで決済され、数日後にはその本が手元に宅配されています。忙しい人には、欠かせない21世紀の書店です。

書店とはいっても、店舗はありません。では、どこに存在しているのかといえば、サイバー空間に存在しているわけです。しかしながら、書籍販売という市場では最大シェアを占めています。

次は、デル・コンピューターです。1984年に、わずか1000ドルの資金をもとに会社を起こし、今や年商2兆円を超える企業に成長を遂げました。

マイケル・デルが会社を起こした時期は、IBMが超エクセレントカンパニーとして君臨していた時期です。

IBMは全世界に広がる高度な営業網を持っていましたが、パソコンを卸売業者や小売業者を通じて売るという方法を採用しました。アップル・コンピューターも同様です。巨大な資産と最高水準のテクノロジーを擁した大手パソコンメーカーにデルはどのように闘いを挑んだのでしょうか。

そのポイントは、たった一つの彼のアイデアです。

彼は特に、新しいハードウエアも新しいソフトウエアも開発していません。

開発したのは、新しいサービスです。パソコンを直接ユーザーに販売するというサービスでありアイデアです。こちらも、アマゾンと同様、店舗を持っていません。インターネットを介した一日あたりの売上は約27憶円です。

資本がわずか1000ドルでも、
アイデアが良ければ世界的な成長を遂げるのが現代です。

また逆に、莫大な資本を投下しても、
アイデアや経営の舵が合っていなければ、窮地に追い込まれるのが現代です。

頭を使う時代がやってきました。朝から晩まで昨日と同じことを今日やっている企業に未来はありません。待った無しの局面です。西部開拓時代のアメリカで、西へ西へとフロンティアが開拓されていったように、今は中国に西部開拓の時代が訪れています。上海、深浅、北京など東側の都市は流入する人口で都市化が爆発しており、地球上最高水準の成長と活気が生み出されていますが、その都市化最前線は西へ西へと向かうようです。東も西も都市化が進んだ日本、開拓され尽くした日本はどこに向かうべきでしょうか。

サイバー経済に不可欠なポータルテクノロジー

サイバー空間開拓の時代が訪れました。サイバー空間こそが日本にとってのフロンティアです。

フロンティア開拓に必要なのが投資です。投資が正しければ成長します。単純な経済原則です。しかし、投資が間違っていると成功にはつながりません。日本の設備投資の落ち込みや情報化投資の少なさがメディアを通じて伝えられてましたが、GDPに占める設備投資額の比率は日本のほうが上であり、情報化投資も決して少なくありません。

問題なのは、投資額ではなく、何に投資したかです。

ここで、日米格差の本質に言及したいと思います。そのポイントは、ITに対する知識です。米国企業やベンダーは、ITに何ができるのか、ITをどのように活用すべきなのかについて実に良く勉強し、勉強をし続け、自分の知識を刷新しています。企業のIT担当者が、ベンダーやコンサルタントに任せきり、あるいは、言いなりになる事はありません。

しかし、日本の多くの企業においては、IT担当者任せ、一方、IT担当者はベンダーやコンサルタント任せという無責任な体制がまかり通っているようです。IT担当者は自分に知識がないが故に、外部のベンダーに任せるわけですが、ここでの問題は、そのベンダーに十分な知識が無い、勉強不足であるということです。

名の通ったグローバルコンサルティング組織だからといって信用できる時代は既に終わっています。

知識、知識、知識です。アイデア、アイデア、アイデアです。そして、テクノロジー、テクノロジー、テクノロジーです。土地、建物をベースとした経済から、サイバー経済へと急速な変貌を遂げている真っ最中ですが、従来の経済に土地、建物が不可欠だったように、サイバー経済にとって不可欠なのはテクノロジーです。さらに、特定するならば、ポータルテクノロジーです。蒸気機関、自動車、電話が20世紀経済に不可欠のテクノロジーだったと同様に、21世紀の経済に不可欠なテクノロジーはポータルです。

次号では、ポータルとビジネスモデルについて言及します。

推薦図書および情報源

www.tompeters.com  スーパーコンサルタント、トム・ピータースのサイトです。氏の講演記録が掲載されているばかりか、そこで使用したスライドがダウンロードできます。

www.delphigroup.com  サイバー経済におけるIT活用に関し、常に中立的な情報を発信し続けている専門家集団です。その洞察の確かさで、業界最高の栄誉を与えられています。

「デルの革命」 マイケル・デル著 日本経済新聞社刊 21世紀のビジネスモデルが、明快に解き明かされています。

「思考スピードの経営」  ビル・ゲイツ著 日本経済新聞社刊 21世紀の企業の必要条件が羅列されています。

By Hiroshi Mikami in Tokyo

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