1999年4月2日(土)


■本郷3丁目-湯島-上野池之端-谷中墓地-日暮里



●不忍池

本郷で仕事の打ち合わせ。たらたら歩いて湯島天神。また改装工事している。儲かっているのかな。不況のときに肥えるのは神社仏閣ばかりかな。春日通りを広小路方面へ。とちゅう左折して不忍池にでる。春爛漫。知り合い同士写す人、水鳥を写す人。いろいろ。肥えた鴨は、「うまそう」としか思えない私だが。弁天堂の裏手に焼け跡。まだ焦げ臭い。火事には気をつけよう。

●上野は花見

いまや花見はインターナショナル。歩いていると中国人、アラブ人、黒人、白人(国際的にこういう分類しか私にはできにくい)が入り交じっている。でかい声で話しているのは、たいてい中国人だ。そして、必ず桜を背景にニコパチ写真を撮っている。こういうのが、お国柄、文化なのだろう。かつての日本人も、ヨーロッパでこういうことをやりまくったのだろうね。いまもやってるって? 上野公園にはいると、席取りの青いビニールシートが目立つ。今年は、マージャンやってるやつとか、きてれつなのが少ない。広い席にごろりと寝ている姿は相変わらずだけど。こういう組織的なグループとは別に、背後の階段やベンチ付近でこぢんまりと数人でウーロン茶などすすっているオバサン2人や異国人(白色人種がめだつ)もいたりして、なかなかにインターナショナル。「そらにまごううえののはつはな」なんて、花を眺めていたら、オバサン4人連れに「写真撮ってください」と使い捨てカメラ押しつけられる。にっこり微笑むオバサンたちはいったい何者なのか? どてーもいい。わたしは、こうやってよく頼まれごとをする。銀座を歩いていれば道を聞かれ、寄席ではばばあに声をかけられたりする。「それは私が信頼感に満ちているからだ」と主張すると、相手は「おめーの姿恰好が地元住民にみえるだけだ」とか「男としての危険度がないからよ」などと無粋なことをいう。いわせておけ。

●国立図書館

噴水から奏楽堂あたりは、個人客も多くなる。ホームレス(最近上野では女性ホームレスも出現している)の青ビニールとも紛れて、山全体がホームレス風。いっそ、交流会でもやればいいのにねえ。国立図書館上野分室がカバーに覆われている。閉館だそうだ。新しくなってオープンするらしい。設計者は、時の人安藤忠雄とか書いてあったが。どうするんだ。あの外観を残すのか? 壊すのか? いずれにしても、奇妙きてれつな建築物になって醜い姿を晒すに違いない。建築家なんて、たいていが街の破壊者だ。現代建築で後世に残るような物件は現れていない。いずれ、個人の趣味指向で自己顕示欲を発揮させるのみ。雑誌や音楽なら触れないで済むが、建築はそうはいかない。押しつけや強制となって登場する。「おらー、この建物は嫌いだから、なにがあったってへーらねーぞ」と、いえない場合だってあるじゃねーか。まったく。

●寛永寺

なんてぶつぶついいながら、図書館前から横道にはいる。なにやらわからぬ公立の建物や研修所がたくさんある。「税金でつくりやがったな。この野郎」と、その不合理さにいささかの後ろめたさも不合理も感じていない役人が出入りする姿に、斧をもって追い回したい気分に、なんてならないよ。寛永寺。桜の木は少ないが、本堂横の桜は実に絵になる。これ1本で凡百の桜を凌駕する存在だ。いいねえ。アングルをさがせば、まさに絵はがき風の写真が撮れる。事実、脚立を据えて写真を撮っているじじいが約1名、風雅を汚していた。

●谷中墓地から日暮里

谷中墓地へ。徳川慶喜の墓の近くにござ敷いて談笑するばばあ約3人。墓地の中だぜ。周囲はみな墓石。物好きとしかいいようがないが。だが、やんやの騒々しさもなく、しずかに語らうにはもってこいのシチュエーションかも知れない。まあ、好奇のまなざしをびしびしと受けとめる覚悟があればの話だが。・・・ううう。そんなデリカシーがあったら、墓場で花見何ぞしないだろうな。谷中墓地のメインストリートへ。こちらは、ここ10年で上野公園に劣らぬ酒宴のメッカに成り下がってしまった。穴場だなどと、お世辞にもいえない。ゴミ箱も設置され、狂乱の宴会は深夜までつづくと見える。まあいい。そういうものだ。バブル期の日本人の土地投機、土地開発とおんなじだ。未開発のところがあればどーっと群がってぺんぺん草も生えないくらいに開発しつくす。風流人気取りの新規花見スポット開発者は、次なる場所を探していることだろう。勝手にさらせ。
そうした中で、段ボールにちょこねんと並んで座る老夫婦の缶ビール姿は、なかなかにほほえましい。ま、一番余録をうけるのは、谷中在住の野良猫どもであろうが。

●谷中せんべい前でTVロケ

日暮里駅前から御殿坂をあがる。ん? 特機のバスのようなのがならんでるな。と思ったら、ロケ。谷中煎餅前で、なにやらやっている。少々立ち見。谷中煎餅店前に巡礼者のような恰好の20人ぐらいの集団。その手前に、黒塗りの車。まだ、リハーサル中らしい。集団が手にした鈴を鳴らしながら踊る。そこに車がきてとおせんぼ、ということらしい。車は、よくよくみたら霊柩車のよう。スタンダードな霊柩車のように唐破風屋根がついていない。写らないから必要がないのかな? みていてもらちがあかない。近くのダージリンで昼のカレー。キーマカレーを食する。出てきて見ると、まだロケしてる。経王寺前にクレーン。そこにVが乗っている。こんどは、車からでた男女二人が、集団の踊りを見ている様子を背後から撮っている。カメラが2人の背後にすーっとあがっていく。「あ、いま、店のシャッター開いてた。撮り直し」なんてやってる。男女2人が誰だか私には判別がつかず。早々に立ち去る。



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