1998年6月23日(火)
■上野東急-上野公園-青いビニールテント-谷中-日暮里
●「ディープインパクト」は怖いよ
12時から上野東急で「ディープインパクト」(ミミ・レダー監督)を見た。トム・クルーズみたいな顔をした女優が出ていた。話はたわいがない。映像も美しくない。屋外のシーンなどちゃんとライティングしてんのか? といぶかるぐらい汚い。すい星目指して宇宙船が飛ぶシーンはとんでもなく退屈だ。SFXもちゃち。はっきりいって雑な二流もの。ところが、面白いテーマがある。地球が滅びかけるので100万人を地下基地へ待避させることになるのだけど、そのうち20万人は医者や科学者、芸術家で決まり。それ以外の80万人は社会保障番号からランダムに選ぶ(ただし、50歳未満から)らしいんですわ。50過ぎはまず切り捨て。さらに、対象米国民の100人に1人しか抽選に当たらない。こういう事態って、考えると怖いよな。アタリハズレで生死が分かれるんだから。やだね。「医者だの科学者は偉いのか!」「ゲージツカなんて、要らない!」なんて反乱起きないのかな? 当たれば49歳でも生き残って、外れれば子どもでも死ぬしかない。うーん。現実的にはそーゆーことにするしかないんだろうけど。怖いね、これ。
ま、人類が生き残らなくちゃならない理由なんて、地球規模で考えたら何もないんだけどね。ゴキブリ天国になったってかまやしない。人間は生き延びる必要がある、って、そんなものねーって。単なる人間の傲慢。
それにしても、アメリカ映画。すべてアメリカがイニシアチブとって、他国のことは関係ないって感じ。こういう態度なんだろうな、アメリカ人って。自分たちのことしか考えてないの。そういう気分で政治とか経済も動かしているに違いない。
●上野公園はホームレスが増えていた
終わって2時。アメ横センタービル近くの「サムラート」でカレーセット890円。おいしい。どこ行こうかと考えて、久しぶりに上野公園。平日の昼下がり。曇り。人出少ない。噴水、水なし。国立博物館の近くの敷地から音楽。公園入り口から追い出されたじいさんばあさんのカラオケか? と近づいていくと、あれ? 人が行列。何かをもらっている? あれま。炊き出しだ。するってーと、並んでいるのはホームレスか? ざっと150人はいるぞ。音楽はキリスト教のものだ。マイクで次の配給予定日を告げている。日本人の声ではなさそうな・・・。ちょっと見ぬ間に、こんなに増えた? 見渡せば、都美術館や奏楽堂の周囲は青いビニールテントの群が、まるでキャンプ場のごとく密集している。ここ数カ月で一気に様子が変わったような気がする。よそから追い出されて来たのかな。相対的に増加しているのかな。日本の不況はこうやって目に見えるものなのだ。それにしても、国はなにもすることなく、救済を異国の宗教団体に頼ったままというところに日本の惨めさが見える。日本の仏教はどうした。神社はどうした。本堂や庫裏の改築だの石碑や銅像、鐘楼づくりなんてしてる場合か?
●東京芸術大学から谷中へ
芸大の工事は進んでいる。外観の骨組みがすでに立ち上がっていた。愛玉子近くの、元銭湯のギャラリーを覗く。妙な円のリトグラフかスケッチか? 床には、木枠の大きな円。焼けた円柱。わけわからん。ぱらぱらと小雨。寺町。いろいろな功徳のお言葉が寺々の入り口に書かれている。読むと、もっともだと思う。人に知られずによいことをしなさい、とか、見えないものを見えるようにしよう、だとか。はいはい。しかし、本来は救済集団である寺は、この不況の中、食べるものも満足になく、住む家とてない人々になにをしてやっているのだろうか? 手入れされた植え込み、瀟洒なたたずまい、増改築・・・。どっから、そーゆー浄財はやってくるの? みんなどこも、立派なクルマが何台も並んでるけどなあ、お寺さん。なんて思いながら、日暮里へ。