入賞作品が発売される




5月16日、大賞を受賞した女性が書いた、完成度が高いという時代小説と、佳作の作品が発売された。大賞の作品は、よくできていると思った。ただ、派手さが無くてちょっと地味だった。佳作の方は、本当にマンガのノリ。しかし、こういうのを少年たちは読んでいるのね、と改めて驚いた。ところで、僕は6月15日刊行のために4月15日には直しも含めて入稿原稿はすべて揃えて渡している。2カ月前だ。刊行予定を告げられたのが3月24日。80日前だ。てえことは、大賞と佳作の2作品が発売された5月16日の80日前というと、おいおい、2月20日前後っていうことじゃないのか。僕が中間発表の折り込みチラシを見てニカニカしていた3月の半ばに、彼らは原稿を出版社に渡していた。げげっ。なんか、とっても自分が間抜けに思えた。
5月20日過ぎに、集英社から「出版の内容について」という、プリントされた紙が送られてきた。それによると、発行部数は30,000部だという。ありゃ。印税は10%だから、完売したら30,000×450円=1,350,000円の収入だ。
(ここで、完売したらというのは、まだ印税のことを理解していなかったからだ。印税は、完売しなくても印刷することで成立して、僕は源泉徴収税10%(100万超えた分については20%)を差し引かれた後の金額を、後に銀行に振り込まれている。増刷があったら、刷った分だけの印税が入るということですね) この後、追加の手直しのやり取りがFAXで行なわれたが、心は次のストーリーでいっぱい。歩きながらいろいろ考えるほどになってしまった。これまで興味の無かった霊感や悪霊の本とか、見向きもしなかった文芸誌を手に取るようになってしまうし。
6月7日、集英社から小包が届く。開けると、刷り上がったばかりの自分の本が15册、見本として入っていた。へー。嬉しいというよりは、誤植でもないかと気がかりで、ざっと読んでしまう。それに、これからやっていけるかが不安(後から思えば、心配の必要はなかったわけだけれど)。
6月12日の夜、会社からの帰りに、駅のそばの小さな書店を覗いたら、自分の本が平積みで並んでいた。3册。一番上の本を手にとって、ぱらりとやってみる。意外と感動がない。「売れるのだろうか?」という不安の方が大きい。でも、ちょっとだけ、店の人に「いま、この本の作者が自分の本を手にしてますよ」と無言のメッセージを送ってみた。






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