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第58回定期・慈善演奏会

キリスト教カウンセリングセンター(CCC)のために

Der Friede Gottes 〜嘆きは歓びに〜

演奏曲

ヨハン・アダム・ヒラー Johann Adam Hiller(1728〜1804):
神の平安 Der Friede Gottes 
すべてのものは喜び歌う Lass sich freuen Alle

カルロ・ルイージ・ピエトロ・グルア Carlo Luigi Pietro Grua(1665〜1726):
主を畏れるものは幸い Beatus Vir

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ Johann Sebastian Bach(1685〜1750):
カンタータ第103 番 嘆きから喜びへ Ihr werdet weinen und heulen, BWV103
カンタータ第192 番 いざやもろびと、神に感謝せよ Nun danket Alle Gott, BWV192

讃美歌285 番 主よ、み手もて

開催日:2015年10月22日(木)19時開演(18時半開場)
会場:練馬文化センター小ホール(つつじホール)

指揮/アルト:青木 洋也
ソプラノ:藤崎美苗
テノール:中嶋克彦
バリトン:浦野智行

合唱・管弦楽:東京スコラ・カントールム

トランペット:中村孝志
リコーダー:高橋明日香
トラヴェルソ:菊池香苗、斉藤紫都
オーボエ:森綾香、小野智子
ファゴット:永谷陽子
ヴァイオリン/コンサートマスター:大西律子
ヴァイオリン:小池吾郎、高橋真二、関口敦子
ヴィオラ:上田美佐子
チェロ:十代田光子
コントラバス:角谷朋紀
オルガン:重岡麻衣

◆チケット:前売3,000円、当日3,500円、学生1,500円


プログラムノート

ヨハン・アダム・ヒラー:神の平安/すべてのものは喜び歌う

ヒラーは、バッハの次の世代の音楽家で、ライプツィヒのゲヴァントハウス管弦楽団で指揮者として活躍し、またバッハの3代後にライプツィヒのトーマス教会の音楽監督を勤めました。喜歌劇の形式を作り出した作曲家として有名で、多くのコミック・オペラを作っています。これらのこと以外にも音楽教育家、音楽理論家としても知られる存在だったようです。
18世紀の終わりといえばドイツでは市民社会への移行期で、ヒラーは女性や子供のための音楽教育の方法について著作も残しています。今日歌う2曲のモテットは、バッハの時代のような、男性中心の専門のコーラスグループ(聖歌隊)が歌うモテットではなく、アマチュア合唱団も歌える曲として作られています。その作風は美しい旋律と和声が特徴で、同時代人であるカール・エマヌエル・バッハと共通するものがあるとも言われています。
Der Friede Gottesは、新約聖書のパウロの手紙の一つ、『フィリピ信徒への手紙』からの一節です。聖書に詳しい方なら、この訳が新共同訳のような定訳と異なることにお気付きかもしれません。ヒラーは、ルターの訳を忠実に採用していて、神の平安が人の心と精神を守らんことを、という祈り・願望として訳しています。
現代の聖書との違いは、もう一方の歌、Lass sich freuen alleにも見られます。ルターは、「冠を賜る」という言葉を使って、神の祝福に光栄を添えていますが、現代の聖書には「冠」の字句を採用したものはありません。

 

カルロ・ルイージ・ピエトロ・グルア:主を畏れるものは幸い

グルアについては、残念ながら詳しい資料が手に入りません。その甥に同姓同名の音楽家がいるそうですが、本日歌うBeatus virは、諸状況からこの甥ではなく、「大グルア」の作ったものとみて差し支えはないようです。
生まれは1665年ミラノあるいはフローレンスといわれ、22歳でドレスデンのプファルツ選帝侯の宮廷礼拝堂でカンターテノール歌手を勤めた後、楽長となり、1年後にデュッセルドルフに呼ばれて、宮廷楽師として活躍しました。その名声を買われてか、1705年から1707年まではウィーンの神聖ローマ皇帝ヨーゼフ一世のもとで過ごしたそうです。1719年から7年間、ヴェニスのピエタ慈善院の聖歌隊長として働いていました。ピエタ慈善院といえば、前回の演奏会で取り上げた「Gloria」の作曲家A.ヴィヴァルディが楽団長として働いていたところで、二人はほぼ同時期に活躍していたことになります。
デュッセルドルフではJ. H. ヴィルデラーのもとにいましたが、それは、バッハやヘンデルの直前の世代のことであり、二人はドイツでのカトリック教会音楽を代表する作曲家とみなされています。
今日演奏する曲は、グルアがいつどこで作ったものかは明らかではありません。しかし、この曲に触れてわかるように、詩編111(現代の詩編番号では112)全部を表情豊かに、しかもてらいなく紡ぎ上げており、詞の内容を味わうにふさわしいものです。ちなみに、この詩編は、原語では各節の頭文字がヘブライ語のアルファベット(アレフ、ベト、ギンメル・・・)の順に語が並んでいるそうで、旧約聖書ではよく見られる形です。
この詩編で歌われる「正しい人」こそ、神の平安のうちに生きる人と言えないでしょうか。

 

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ:カンタータ第103番 嘆きから喜びへ/カンタータ第192番 いざやもろびと、神に感謝せよ

カンタータという形式

今回はバッハの教会カンタータを取り上げますが、現在ではカンタータと名のつく作品には実に様々なものがあり、形式については何ともとらえどころのない印象です。カンタータとは、単声または多声のための器楽伴奏付き声楽作品のことで、典型的なものは17世紀後半のイタリアで作曲されたレチタティーボとアリアで構成される独唱と通奏低音のための曲や、18世紀前半のドイツにおけるコラールを取り入れた教会カンタータ、18世紀フランスのレシタティフとエールが交互に3曲ずつ繰り返される独唱と通奏低音にしばしば小編成の器楽を伴う世俗作品のことを表します。ところが、19世紀以降は合唱と管弦楽のためのさまざまな作品のことを表すようになりました。
18世紀までのカンタータというと、イタリアでは多くが牧歌的あるいは歴史的題材による愛をテーマにしています。オペラに似ていますが、演技や衣装は用いず、ローマを中心とした少数の貴族のために作られ、より親密で洗練された雰囲気の、時には実験的な要素をも含むものでした。また、17世紀末から18世紀初めにかけてイタリア音楽全般に形式化が進み、レチタティーボとアリアがはっきりと区別され、アリアが独立した楽章となります。この流れはストラデッラ(1644〜1682年)等によって進められ、スカルラッティ(1660〜1725年)の作品に典型的に示されます。1703年からの第2次ローマ時代に作られた作品では、2曲のダ・カーポ・アリアの前にそれぞれレチタティーボが付く形式が基本になり、その後の世俗カンタータの標準的な形式になりました。ところが18世紀後半になるとオペラのシェーナとアリアとほとんど違いが無くなり、独立した形式は失われることになります。
フランスでは18世紀前半にサロンの発展とイタリア音楽の流行とともに「カンタータ・フランセーズ」と呼ばれるフランス語の声楽作品が数多く作られました。これらはフランス音楽とイタリア音楽の融合をめざして作られたもので、イタリア由来の構成や器楽による伴奏法と、リュリ(1632〜1687年)がフランス・オペラで開拓したフランス語の朗唱法、優雅な抑揚や繊細な装飾を伴うフランス風の様式を結びつけていました。それはフランス音楽をより華やかに、和声的に充実したものとすることに貢献しましたが、18世紀中頃にはより簡潔なカンタティユに取って代わられます。また、教会カンタータはいくつか作られたものの周辺的なものにとどまりました。
一方、ドイツでは教会カンタータが発展しました。17世紀の古い形式では、聖句にもとづく声楽と器楽のためのコンチェルト、有節形式のアリア、コラール編曲で構成されましたが、ノイマイスター(1671〜1756年)が当時のオペラにならって脚韻も行の長さも不規則なマドリガーレ様式のレチタティーボとダ・カーポ・アリアを採用し、聖句やコラールを組み合わせた新たな宗教詩を創作しました。この新しい形式の教会カンタータにクリーガー(1649〜1725年)やテレマン(1681〜1767年)が作曲しています。その他にも18世紀前半には多くの作品が作られていて、バッハも作品を残しています。ドイツ語やイタリア語による独唱用の世俗カンタータも17〜18世紀を通して作曲されましたが、イタリアの影響のもとにあり、独自色は薄いものでした。また、バッハの世俗カンタータのように、都市や宮廷の行事のために作られた複数声部の作品もありますが、この種の作品は当時、「セレナータ」「音楽劇」などと呼ばれ、カンタータという扱いではありませんでした。

【曲目解説】

カンタータ第103番 嘆きから喜びへ (1725年)
ライプツィヒ時代の中でもとりわけカンタータに集中していた時期の作品です。ソプラニーノ・リコーダーが印象的な復活節第3主日のためのカンタータで、ヨハネによる福音書にもとづく歌詞で始まり、ゲルハルトのコラールでしめくくられます。

カンタータ第192番 いざやもろびと、神に感謝せよ (1730年?)
カンタータをあまり作らなくなった頃の作品で、正確な作曲年代もその用途も不明です。テノールパート譜も欠落してしまい、旧バッハ全集のスコアはテノールパートが空白の状態で出版されました。現在演奏されているのは復元されたものです。聖書の引用は無く、リンカートのコラールに基づく曲です。

 

tsc58th

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