本研究の目的は、安全衛生にかかる伝統的な監督取締法体系の再編と実効性の維持向上を図るための参考素材を提供することにある。具体的には、英米の最新の法事情を調査したうえで、わが国への導入の可能性について検討する。その際、事業者自らが職場にある危険・有害性の評価を行い、その結果に基づいて合理的な災害防止対策を選択できる仕組み(いわゆる性能要件(分権)型規制方式)に焦点を当て、特にその法的位置づけ、実施体制、実施状況、受け止められ方等を明らかにする。
わが国の安衛法令は、その制定から40年を経て、@法令全体での条文数が肥大化し、特に中小企業者にとって確認及び遵守が困難、A適時の適切な見直しが困難、B企業ごとの合理的な判断に基づく自主的取り組みへの制約等の問題を生じている。
そこで、以下のような項目について、調査研究を行い、既存の法規制の整理統合を図りつつ、労働安全衛生水準の維持向上を図り得る法体系のありようを検討する。
1)英米の関連法制度の概要と特徴
2)性能要件(分権)型規制方式への移行状況(@性能要件型の規制を体現する法政策の導入状況、Aリスク管理の法的位置づけ、実施状況の監督のありよう、違法性の判断基準、労使協議や事業所自治との関係等、B安全衛生面での優良企業を認証し、優遇措置(労働監督の免除、労災保険料の減免、表彰等)を講じる制度の有無及び有る場合の内容
3)法の執行体制
4)事業場外資源(特に中小企業を対象にリスク管理の実施を支援するための事業外資源の法的位置づけ、活用状況など)
5)効果(1)〜4)の制度ないしその運用がもたらした安全衛生上の効果)。
6)わが国での導入の可能性・手法