住信為替ニュース

             

    第100号     1988年05月17日(火)


1.「9:30」

 今月発表分からアメリカの夏時間入りに伴い、貿易統計発表は日本時間の午後9時半です。先月までは、午後10時半と本当に待つ時間が長かった。サウナにゆっくり入ってもまだたっぷり時間が残っていて、本を読む時間さえあったものです。今日からその冗長さから解放されます。
 赤字予想はまだ100億から140億ドルまで広がっていますが、予想のセンターは125億ドル位でしょうか。110−130億ドルだと今の相場環境から見て、「どっちらけの一夜」になりそう。改善予想が多いだけに、先月の138億ドルに接近するような数字なら、ドルが売り圧力を受けることは十分予想されます。逆に、100億ドル飛び程度だと、かなり上も期待できそう。問題は、発表後のVOLATILITYなのですが.......

2.WAITING FOR THE NUMBER

 前日のニューヨーク市場は、典型的な「数字待ち」の市場だったようです。ドルは強含みで一時125円台に片足を入れたようですが、全体には模様眺め気分が強く、結局は124円台で東京市場に戻ってきました。株は17ドル強の上げで、ダウで2000ドルの水準を回復。債券利回りは上昇。
 債券売りにつながったのは、金や原油、それに穀物などの商品市況の上昇。金や原油相場の上昇は、前日の東京市場の午後から目についたもので、この結果CRB指数も大幅上昇となりました。白金相場の上昇、中東情勢などが背景。

3.BRITISH POUND

 先週末に続き、欧州市場の関心の的はポンド・マルク相場。ポンド高傾向には歯止めがかからず、一時1ポンド=3.19マルクのミドルがあったようです。ただし、この段階ではイングランド銀行が市場介入。
 前日も取り上げましたが、ポンド安定を重視し、そのために金利を低めに維持したいというローソン蔵相の路線と、インフレ対策を重視し、むしろ金利の引き上げを志向、その結果ポンドが上昇してもやむを得ないというサッチャー路線の対立は、どちらかと言えばサッチャー有利で進行しており、ポンドにはまだまだ上値がありそう。英国経済の奇跡を演出したローソンも、「鉄の女」にはかなわない。

4.CRISIS OF CREDIBILITY

 東京の株が新値追いを続けているというのに、ニューヨークの株はもう一つ冴えない動き。「なぜだ」とくるわけなのですが、資料(割愛、ニューヨーク・タイムズ記事)を読めばなるほどと頷けます。まず10月19日の大暴落。ついでプログラム・トレーディングに対する一般投資家の不信感。更に、インフレ再燃、リセッション、金利上昇、ドル安、政治的指導力の欠如、双子の赤字などのファンダメンタル要因に対する懸念。
 投資家の不信感は、出来高の減少という形で表面化しており、業界は業績悪化の危機に見舞われている。このまま行けば、企業は株式市場での調達が難しくなり、産業発展の阻害要因にもなりかねないとか。他山の石としたいもの。

5.HUNDRED


 「100号」は、相場で言えば大台代わり。一応の区切りと言えましょう。開始が昨年の12月1日。「何か新しいものを」という気持ちで当カスタマー班が始めたのですが、何かお役に立てましたでしょうか。俗に、「3日、3ヶ月、3年」と言います。「住信為替ニュース」が前の二つのハードルを越え、三桁の号数に達することができたのも、お客様のご支援があったればこそで、感謝いたしております。
 実は、開始当初はこんなに毎日続けられるとは思っていませんでした。事実、前の夜の飲み過ぎなど様々な理由で、発行が危うかった時もありました。若手の積極的な参加があったればこそ継続できたと思っています。当カスタマー班といたしましては、今後ともお客様のニーズに合ったサービスを心がけ、努力する所存であり、ご支援の程を宜しくお願いいたします。                                       (伊藤)


 時移ってすでに90年代の半ば過ぎ。1988年というと、日本の株式市場が絶好調なのに対して、アメリカの株式市場はブラックマンデーの後遺症から抜け出せていない時期。この100号にもそれがよく現れている。アメリカを哀れんでいた日本。今は全く逆だと言えます。何が変わったのか。思えば、当時既にアメリカは産業社会から情報化社会への入り口にいて、その移行の痛みを味わっていたのかもしれない。一時「アメリカを追い抜いたかも」と思った日本は、実はかなり遅れていた。
 市場の材料の「花形」は実は数年単位で変わる。70年代の後半は、「アメリカの通貨供給量」が大きな材料だった。木曜日、その後金曜日のニューヨーク時間の夕刻が発表時間だった。80年代は日米貿易不均衡の拡大とその政治問題化の中で、「アメリカの貿易統計」が大きな材料。日本中のディーリング・ルームは、特にアメリカの冬時間帯は貿易統計の発表そのものが日本時間の午後10時30分と遅く、ブローカーを含めて総動員・臨戦「夜戦」体勢だった。事実、相場は発表された数字に激しく反応した。
 今の為替市場の最大の材料は....。日本の金利水準。そして、日本の貿易収支黒字の減り具合。市場の材料は、時が移っても似ているようで、また変わってもいるようで....。(96年5月末記)                                 ycaster@gol.com


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