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カーフリー/チェンバレン 二枚の風景皿 (1792年頃)
Two Caughley/Chamberlain Plates with Landscapes Ca.1792

 





 カーフリー製の皿に、チャンバレン・ウースターで絵付けされた作品。縁部分の月桂樹の葉をモチーフにした文様と中央枠周辺の金彩文様、そして中央枠内の風景画という組合せは、1790年代初期のカーフリー/チェンバレン作品に特徴的なものの一つである。しかし、中央の風景画はもっと単純な田園風景や建物である場合が多く、本品のように広がりのある風景がしっかりと描きこまれたものは珍しい。

 本品の風景画は、一つは馬に乗った人物とその横に立つ人物を中心に、その右脇に犬、左側には大きな木とその向こうに家、遠景には川に橋がかかり、さらに遠くには淡く山が連なっている。もう一点の方は海辺から帆を上げた帆船を見たもので、手前には二人の人物、遠景には円柱の塔がある建物が描かれている。どちらも、濃淡によって明確に遠近感を出している。

 こうした題材や技法、描きこまれているモチーフは、多くの窯を渡り歩いた絵付け師フィデル・デュヴィヴィエ(Fidelle Duvivier)の特徴と考えられるものである。彼は、ベルギーのトゥルネー(Tournai)窯出身の絵付け師で、フランスのソー(Sceaux)窯を経て、1768年頃に英国に渡ってきて以来、チェルシー、ダービー、ウースターなどで働いた(あるいは、そうした窯の作品に絵付けを行った)。一時大陸に戻ってオランダなどで活動した後、再度英国に戻り、ニューホールなどで風景画や人物画を中心に優れた作品を残している。このニューホール時代の作品はよく研究されており、本品に見られる特徴も、ニューホールに残された作品と共通するものである。(これらニューホール作品は、下記参照文献に多数取り上げられているが、ネットで参照できるものとしては、例えば、2007年12月のBonhamsのオークション2003年9月のBonhamsのオークションで扱われた作品がある。)

 デュヴィヴィエは、1790年にニューホールとの契約を終了し、ダービーへの復帰を試みるが(原典を読む7.デュヴィヴィエの手紙を参照。)果たせず、1792年10月にはチェンバレン・ウースターにいた記録が残っている。この時期は、チェンバレンは自ら磁器焼成を始めようとしていた時期であるが、まだそれは軌道に乗っておらず、引き続きカーフリーから白磁を購入してそれに絵付けを施していた。デュヴィヴィエがチェンバレンにいたのは極めて短期間だとされ、そこで残した作品は、従来カーフリー製のティーセット1件のみだと言われてきたが、現在では本品の2枚の皿がそれに次ぐ2件目の作例と考えられている。(なお、1件目のティーセットの絵付けは人物画であり、本品の風景画とは異なる種類のものであるが、そのティーセットのいくつかの作品は下記参照文献のGoddenの最初の2冊に著者自身のコレクションとして写真掲載されている。また、このティーセットのうち、ミルク・ジャグが2012年10月のBonhamsのオークションで、また、ティー・キャニスターが2013年11月のBonhamsのオークションで売却されている。)

直径(D):24.5cm

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参照文献/References:
-Charlotte Jacob-Hanson "In the Footsteps of Fidelle Duvivier" pp.57-58 and fig.64
-Geoffrey A. Godden "Chamberlain-Worcester Porcelain 1788-1852" pp.51-54, Plates 27-28, and pp.194-196
-Geoffrey Godden "Eighteenth-Century English Porcelain A Selection from the Godden Reference Collection" Chapter XXIX Fidelle Duvivier
-Geoffrey A. Godden "New Hall Porcelains" Chapter V Fidelle Duvivier and Other Decorators
-David Holgate "Fidelle Duvivier Paints New Hall" ECC Transactions Volume 11 Part 1 (1981)
-David Holgate "New Hall" pp.118-127
-Jonathan Turner "Some Rare Duvivier Pots" ECC transactions Volme 20 Part 1 (2008)
-The Ironbridge Gorge Museum Trust "Caughley in Colour" Items 32-34 (for the set pattern)
-Stephen Mitchell "Marks on Chelsea-Derby First Supplement" pp.22-45
-Bernard Watney "Four or Five pointers to the possibility that Fidelle Duvivier worked for James Giles" ECC Transactions Volume 14 Part 3 (1992)

(2014年8月掲載、2020年6月更新)