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チェルシー・ダービー ティーポット (1775-77年頃)
Chelsea-Derby Tea Pot Ca.1775-77



 

 胴体の中央部から底部にかけてパイナップルの地模様が施されたティーポットである。全体に平たい円形をしており、安定感のある形状である。縦縞の入った注ぎ口はS字状に伸び、途中2箇所と縁に金彩模様が施されている。ループ型の取っ手も、金彩で縁取られるとともに、中央に金彩の連続した点が打たれている(下にいくほど小さな点になっており、James Giles工房がカップなどの取っ手に施す金彩模様と類似している)。エナメル絵付けは、本体上部に紫の線と薄緑の花葉による簡素な唐草文様があるだけである。裏面マークは、金色で王冠の下に錨を記したものである。このマークは、チェルシー・ダービー期のマークの中では最も希少なものであるが、Stephen Mitchellの研究(下記文献)によると、1775年から77年までという短期間に、チェルシーで絵付けされた作品に用いられた(ただし外部絵付け工房でも用いられた可能性はある)とされている。なお、この時期のチェルシー自体が、デュズベリー経営下で絵付け工房化しており、磁器焼成は行われていなかったとされる。

 本品は、形状も装飾もチェルシー・ダービーとしては珍しい作品である。同じパイナップル地模様の「チェルシー・ダービー(CD8)」とはマークも同じであるが、素地の色合いや簡素な絵付けの傾向まで似ており、関連性の強い作品だと考えられる。本品は蓋が欠落しているが、Mitchellの同文献には本品と同型のティーポットが掲載されており、もともとはパイナップル地模様にパイナップル型のつまみのついた蓋があったとものと考えられる。なお、同著のティーポットには「赤い錨」マークが付されており、絵付けはチェルシーまたは外部絵付け工房で行われたとされている。本品は、エナメル上絵の図柄はMitchellの作品と異なるが、金彩(特に注ぎ口の)は極めて似ており、興味深い作品と言える。
マーク:裏面に金色で「王冠の下に錨」
Mark: <Anchor surmounted with Crown> painted in gold on the bottom
長さ:約20p(注ぎ口から取っ手まで)
Length:About 20p (7 7/8 in) from spout to handle
文献/Literature:
-Stephen Mitchell "The Marks on Chelsea-Derby and Early Crossed-Batons useful Wares 1770-c.1790" Chapter II and Plate 10-12 (Plate 12 illustrates a tea pot in the same shape but carrying a red anchor mark.)

(2007年8月掲載)