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ダービー 素焼き白磁像「横笛を吹く羊飼い」 (1790-95年頃)
Derby Biscuit Figure "Shepherd Playing a Flute" Ca.1790-95
左のひじを切り株に乗せて横笛を吹く羊飼いの素焼き白磁像である。足元には羊が一匹横たわっている。この像の構図は、直接には16世紀フィレンツェのブロンズの青年裸像から取られたものとされているが、もともとはローマ時代の石像(切り株に肩肘をつき両足を軽く交差させた裸の青年像(一例として、ローマのカピトリーノ美術館にある「カピトリーノの牧神(Capitoline Faun)」)に源流があるとされる。本品は、そうした古代から伝わる構図を、羊飼いの若者(もちろん着衣の)と羊という牧歌的な設定で再現したものということになる。
本作品には、ダービーのフィギュア型番リストで369番という番号が付与されており、女性像とペアを成している。(本品台座裏には"No.269"と刻まれているが、これは製造時のミスであり、369番が正しい。)
このフィギュアの造型師(モデラー)は、スイス出身のジャン=ジャック・スペングラーだとされる。彼は1790年にダービーにやってきたモデラーで、以後1796年頃まで断続的にダービー窯に雇用され、ロマンチシズム溢れる独特のフィギュアをいくつも残した。本品も、古典的構図に想を得つつも、体つきや顔の表情などにスペングラーならではの雰囲気が漂っており、彼の代表作の一つと呼んでもよいと思う。(コラム11.ダービー窯「芸術家」列伝を参照。)
高さ(H):26cm
マーク:台座裏面に刻んだ「交差バトンマーク」、「No.269」(No.369の間違い)、及び「*」。
Marks: Crossed-batons mark, "No.269" (should be No.369) and a "*", all incised on the bottom.
参照文献/References:
- John Twitchett "Derby Porcelain" Plate 196
- H.G. Bradley "Ceramics of Derbyshire 1750-1975" No.38
- Peter Bradshaw "18th Century English Porcelain Figures 1745-1795" p.216 and Plate 128
- Peter Bradshaw "Derby Porcelain Figures 1750-1848" pp.374-376 and Plates 314-315
(2010年3月掲載)