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ダービー 壺 (1770年頃)
A Derby Vase C.1770



 

 ダービーのロココ調の壺。上部が広がり、首と蓋に細かな穴が開けられている。用途はポプリ入れだと考えられる。首周辺と蓋には幾種類もの花が配されている。腰部分にフリル状の装飾があるこのような壺は、一般にフリルベース(frill vases)と総称されている。本品は単品で購入したのだが、ペアで作られたか、あるいは、ダービー(D1-19)の形状の壺の両脇に置いて3点セットを構成するものであった可能性もある。

 絵付けについては、胴体の表裏両面に、枝に止まる鳥が多色彩で描かれている。フリル部分及び蓋の摘みは薄い紫色と金の縁取り、取っ手は薄い青緑と金の縁取り、足部にも同様の青緑で色付けがされている。本体最上部には金で櫛状の縁取りが施されている。

 全体にかなり繊細な作りで、ダービー(D1-19)のような反り返りなどもない。ただし、フリル上面にある金色の錨マークは、製造時に生じたと思われる傷を隠すように記されている。

 同様の壺はチェルシーでも作られており、本品にも金色の錨マークはあるものの、裏面にパッチマークが見られることから、ダービー作品だと判断される。製造年代については、このような典型的なロココ調の壺は1760年代に多く作られたものであり、本品は1770年以降のチェルシー・ダービー期の作品だとしても、その最初期に作られたものだと思われる。


高さ(Height):23cm

マーク:フリル上面に「金色の錨」マーク。裏面にパッチマーク
Marks:A gold anchor on the upper side of the frill. Patch marks at the bottom.

参照文献/References:
- H.G. Bradley "Ceramics of Derbyshire 1750-1975" Item No.120
- George Savage "Eighteenth Century English Porcelain" Plate 69(a)
- F. Brayshaw Gilhespy "Crown Derby Porcelain" Fig.3
- J.V.G. Mallet "Chelsea Gold Anchor Vases I: The Forms" ECC Transactions Volume 17 Part I (1999) Fig.57
- Dennis G. Rice "Derby Porcelain The Golden Years 1750-1770" Appendix 4 Ornamental Ware 5.(ii) Asymmetrical Garniture (pp.204-205)
- Stuart Shepherd "A Garniture ofThree Rococo Pot-Pourri Vases and Covers" Derby Porcelain International Society Newsletter No.79 (2018)
- V&A Museum Website: http://collections.vam.ac.uk/item/O165664/vase-william-duesbury-co/


(2019年2月掲載)