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ダービー ペアの壺 (1760年代頃)
A Pair of Derby Vases Ca.1760s



 ダービーのペアのロココ調の壺。肩から胴体にかけて左右非対称のフリル状の装飾が、また、肩から首にかけては花の装飾が施されている。腰部分にもフリル装飾がある。一般にフリルベース(frill vases)と呼ばれるもののバリエーションの一つである(ボウ(B9)ボウ(B10)を参照)。本品の用途は、首に穴がいくつも開けられていることから、ポプリ入れだと思われる。もともとはドーム状の蓋があったはずであるが、逸失している。

 エナメル絵付けについては、胴体部分に蝶などの昆虫模様が描かれている。ダービーで昆虫を描いた絵付師としては、1750年代から活躍した、氏名不詳のいわゆる'the moth painter'が有名だが、彼の蝶はもっと大きく大胆に描かれており、本品に描かれている蝶は、それとは大分異なるものである。蝶の絵付け以外では、フリルや足部分が薄い青で色付けされている。金彩はフリル、口や足の縁取りに用いられている。

 本品には一見して明らかなように、焼成時に生じたかなりの反り返りがある。写真の右側の壺では、反りを直すために底面が大きく削られている。(最初の写真から見て取れるように、足の接地部分の金彩の縁取りが部分的になくなるほど大きく削られている。製品の完成後に(もしかしたら、後世の所有者が)削ったと見られる。)


 本品は同形の壺のペアであるが、この形の壺を中央に置いて両脇にやや形の異なる類似の壺(ダービー(CD17)を参照。)を配したセット(garniture)も作られたようである。下記参照文献のGilhespyの著書にはそうしたセットの写真が、またMalletの論文にはチェルシー版の同様のセットが掲載されている。



高さ(Height):20cm

マーク:パッチマーク
Marks:Patch marks

参照文献/References:
- George Savage "Eighteenth Century English Porcelain" Plate 69(a)
- F. Brayshaw Gilhespy "Crown Derby Porcelain" Fig.3
- J.V.G. Mallet "Chelsea Gold Anchor Vases I: The Forms" ECC Transactions Volume 17 Part I (1999) Fig.57
- Dennis G. Rice "Derby Porcelain The Golden Years 1750-1770" Appendix 4 Ornamental Ware 5.(ii) Asymmetrical Garniture (pp.204-205)
- Stuart Shepherd "A Garniture ofThree Rococo Pot-Pourri Vases and Covers" Derby Porcelain International Society Newsletter No.79 (2018)

(2019年1月掲載)