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ダービー 壺 (1781-84年頃)
A Derby Vase Ca.1781-84

 

 

 チェルシー・ダービー期の壺。小ぶりなので蝋燭立て兼用の壺(蓋は逸失しているが、蓋を裏返してその上に蝋燭を立てる。)の可能性もある。

 卵型の胴体に四角い台座がつき、縦縞の入った首、それに山羊の頭部を模した取っ手と、チェルシーダービー期の新古典主義の典型的な形状である。装飾面での金彩ストライプもこの時期のダービーの特徴である。絵付けは、黒のモノクロームで片面に女性像、もう片面に風景画が描かれている。女性像の方は「ダービー(D2-14)」のケデルストン型水差しに描かれているのと同じ「イノセンス(Innocence)」である(ただし、図中には画題の記載はない)。台座には金彩で大理石風模様が描かれ、その中に隠すようにして「金色の錨」マークが描かれている。

 裏面にはパッチマークが4つあり、中央には大きな通気孔が開けられている(いずれもダービーの特徴である)。また、壺の型番である「No.10」が刻み込まれている。この10番という形は、これまでどこにも記録されていないものである。ダービーにおける壺の型番制度は、1774年のロンドン店舗開設に合わせて導入されたと考えられるが、1774年の同店舗のカタログにも、本品と同じと見られる形の壺は記載されていない。一方で、絵柄の「イノセンス」が初めてダービーの文献に登場するのは1781年のクリスティーズでのオークション・カタログであることから、本品の製造時期は(型自体が導入された1774年頃ではなくて)、1781年以降だと考えた方がよいと思う。

 また、裏面には、他にアルファベットの「JW」も刻み込まれている。おそらく、本品を組み上げたリペアラーのマーク(イニシアル)であろう。このイニシアルの主が誰であるかは分かっていないが、チェルシーダービー期のリペアラーでこのイニシアルに適合する人物としては、Jonathan Wedgwoodがいる。この人物は、1772年にダービーと3年間の雇用契約を結んでいるが、その後もダービーに残っていたようで、1787年時点でダービーで働いていた記録がある(下記、JewittとTwitchettの文献を参照)。


高さ(H):15cm

マーク:台座脇に金色の錨マーク。裏面に刻み込みで「No.10」及び「JW」。裏面にパッチマーク。
Marks: A gold anchor on the side of the base. <No.10> and <JW> incised on the bottom. Patch marks on the bottom.

参照文献/References:
- L. Jewitt "The Ceramic Art of Great Britain" (Volume II) p.94 and PP.105-106      
- J. Twitchett "Derby Porcelain 1748-1848 An Illustrated Guide" p.113


(2014年2月掲載)