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ダービー 壺 (1792-94年頃)
A Derby Vase Ca.1792-94
素焼白磁(ビスケット)の壺で、両側に取っ手があり、胴体と口の上に素焼の花がいくつも付けられている。それらの花の一部は薄青く彩色されている。基本的な形状は、ダービー(D2-8)の壺と類似している。(なお、このダービー(D2-8)の説明文には、今となっては修正すべき点が多くあることに留意が必要。なかなか更新ができないでいる点はご容赦願いたい。)
裏面には"No 115"と"*"が刻まれている。前者は壺の型番で、後者はリペアラーのアイザック・ファンズワースが使用したマークである(なお、写真中に見える黒い手書きの数字と文字は、製造当時に書かれたものではないと思われる。鉛筆で書かれたメモであろうか)。前者は壺の型番であるが、115番の素焼の壺は、ダービーのロンドン店舗の帳簿に、1794年5月に販売された記録がある。
素焼の壺は、ダービーでは1770年代初期に初めて導入されたが、現存する作品の多くはそれより時代の下ったもので、交差バトンマークが刻み込まれたものも少なくない。壺の型番でいうと、110番台(100番台後半も?)に素焼の壺が集中している。それらの壺は1790年以降の販売記録が多く残っているが、中でも112番の壺は1792年1月に販売されたときに"new Vauses"と記されている(ちなみに、このときの販売先は装飾時計メーカーのヴリアミー社で、同社はダービーの素焼白磁のフィギュアや壺と組み合わせた置時計を多数製造している。)ことから、これら110番台の壺は型の導入そのものが1790年代に入ってからだったと考えることができる。
高さ(H):13cm
マーク:台座裏面に、手刻みで「No 115」と「*」
Marks: A shape number "No 115" and a repairer's mark "*" for Isaac Farnsworth, both incised on the back of the base.
参照文献/References:
- A. P. Ledger "Derby Vase Numbers" Derby Porcelain International Society Newsletter No 63 pp.45-50
- A. P. Ledger and Roger Smith "Benjamin Vulliamy and the Derby Porcelain Manufactory 1784-1795" Appendix B (pp.113-115)
(2014年3月掲載)