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ダービー 小花をあしらった蓋付きの壷(ペア)(1775年頃)
A Pair of Derby Lidded Vases with Applied Flowers Ca.1775
首が長く、丸みを帯びた肩から下にいくに従ってすぼまっていく形の壷で、全体に小花が貼り付けられ、地には茎の模様が浮き彫りにされている。地色は緑一色(薄い青緑)で、小花は花びら部分は白磁で中心に金が打たれている。ドーム型の蓋にも同様の小花が配され、上部つまみは紫色のバラになっている。蓋の縁と本体の底縁に薄く金彩が引かれている。
特異な作品であるが、大英博物館とヴィクトリア&アルバート(V&A)美術館の類例が知られている。大英博物館の作品は3点からなるセットで、中央に置かれるメインの壷が、装飾も形も本品と似ている。ただし、大英博物館の作品にはスクロール型の取っ手が両側についており、本体の底部が若干ペデスタル状に広がっている。両脇に置かれる2点も同様に本品に似ているが、やはり左右にフック型の取っ手があり、口が大きく広がっていて、しかも蓋がない(なお、うち一点にはチェルシー・ダービーの金色の錨とDが組み合わされたマークがついている)。V&A美術館にあるのは、大英博物館のメインの壷と同様の作品であるが、こちらはペアである。なお、どちらの美術館の作品も本品より背が高い。
本品は取っ手なしのバージョンだと思っていたのだが(同様の取っ手のない作品を以前にネットで見たこともあり)、注意して見ると、ちょうど取っ手が付けられる位置(肩と腰の部分)の小花が左右とも変色しており、その周辺の下地の緑色も微かではあるがまわりと異なる(二番目の写真を参照)。ペアの両作品とも同様である。おそらく当初は取っ手が付けられていたのが破損して、取っ手のない形に作り変えられたのであろう。後世の修復かもしれないが、取っ手跡に貼られた小花の出来や、下地の緑の色合いがほとんど変わらないことなどから見て、もともとの製造工程の途中で修復されたものかもしれない。
最後の写真は、同様の小花を貼り付けた装飾による壺(ダービー(D2-29))と並べたものである。このダービー(D2-29)は、上記の二つの博物館の収蔵品と同様の作品だと考えられる。比較すると、本品とは色、サイズ、形、さらには雰囲気まで異なることがよく分かる。
マーク:パッチマーク
Marks:Patch marks
高さ/Height:18.5cm (7 1/4in)
文献/Literature:
-R. L. Hobson "Catalogue of the Collection of English Porcelain in the Department of British and Mediaeval Antiquities and Ethnography of the British Museum" Item II.306 & II.307 (Plate 18). See also the British Museum Website: The Centre Vase & The Side Vases
-Bernard Rackham "Catalogue of the Schreiber Collection Vol. I Porcelain" Item 370 (Plate 44). See also the V&A Museum Website: One of the Pair & The Other
(2007年5月掲載。2015年10月更新。)