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ダービー 嗅覚の像 (1752-55年頃)
Derby Figure of Smell Ca.1752-55
ダービー最初期の白磁フィギュア。五感覚(five senses)を偶像化したセットの一つで、嗅覚を題材にしたものである。ちなみに五感覚のセットには他に、味覚、視覚、聴覚、触覚のフィギュアが含まれ、多くの窯で作品化された人気の題材である。ダービーのこのセットは、マイセン作品に基づくものとされている。
本作品は、座った男性が嗅ぎ煙草を一つまみ嗅いでいる像である。左手に煙草入れを握り、右手でつまんだ煙草を鼻先に持っていっている。背面には丸い穴が開けられているが、これは蝋燭立てなどを付ける場合に金属の支えで固定するためのものである。(この穴が丸いのはダービー作品の特徴であり、ボウでは四角い穴が多い。ボウ「B27」を参照。)裏面は平らで、小さな穴が開けられている。ダービーのこの時期のフィギュアには、台座の縁に釉薬がかかっていない「ドライエッジ(dry edge)」と呼ばれる特徴が見られることが多い。本作品ではこの特徴はそれほど顕著に見られないが、掲載した該当部分の拡大写真から確認することは可能である。
ダービー最初期に位置づけられるこの「ドライエッジ期」(1750-55年頃)には、フィギュアが主要な作品であったと考えられているが、かつては、経営者のアンドリュー・プランシェ(Andrew Planche)がモデラー(造型師)も兼ねていたと見られていた。しかし、近年の研究により、イタリア(ジェノバ)出身で、オランダ(ハーグ)を経て、1752年頃に英国に渡ってきたアゴスティーノ・カーリー二(Agostino Carlini)が、これら作品のモデラーだったのではないかと考えられるようになっている。
高さ(H):16.5cm
マーク:なし
Mark:None
参照文献/References
-J.V.G. Mallet "Agostino Carlini, Modeller of 'Dry-Edge' Derby Figures?" British Ceramic Design 1600-2002 (ECC) pp.42-57
-Peter Bradshaw "Derby Porcelain Figures 1750-1848" Model B34 (pp.30-31 and pp.48-50)
-Peter Bradshaw "18th Century English Porcelain Figures 1745-1795" Model J33 (Colour Plates L-N, p187 and p301)
-John Twitchett "Derby Porcelain" Plate 23 (p39)
-Dennis G. Rice "Derby Porcelain The Golden Years 1750-1770" Plates 5-8, p27 and pp178-179)
-F. Brayshaw Gilhespy "Derby Porcelain" Plate 14
-Winifred Williams "Early Derby Porcelain 1750-1770" Item 2
(2016年12月掲載)