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ダービー キューピッドを目覚めさせる二人の女性像 （1780年頃）
Derby Group of Two Virgins Awakening Cupid Ca.1780

　二人の女性が、岩によりかかって寝ているキューピッドを起こそうとしているもので、チェルシー・ダービー期を代表するグループ像の一つである。もともとは、スイスの画家・アンジェリカ・カウフマン(Angelica Kauffmann)の描いた絵画をもとに版画化されたものを下絵としており、構図や色合い、さらには顔の表情と、女性的なやわらかさを感じさせるものとなっている。ダービー窯におけるこの作品のモデラーは、ピエール・ステファン(Pierre Stephan)だとされている。ただし、スイスのチューリヒ窯にも類似の作品があるという（ステファン自身もスイス出身である）。なお、この作品のモデラーが（やはりスイス出身の）ジャン=ジャック・スペングラー(Jean Jacques Spangler)だとする説がかつてあり、下に掲げた参照文献のいくつかでもそう論じられているが、これは誤りである。この作品が作られた時期にはスペングラーはまだダービーに来ていない（コラム11を参照）。

　製造年代に関しては、1778年のダービー作品のオークションに本作品が出品されており、その頃に導入されたものだと考えられる。高さが30cmあり、かなり大型の像であるが、他のサイズでは作られていない。裏面の写真にも見られるとおり、195番という型番が与えられている。隣番の196番「パンを飾り付ける二人の女性像(Two Bacchantes Adorning Pan)」とのペア、あるいは、235番「キューピッドを苦しめる三人の女性(Three Graces Distressing Cupid)」も含めた3体セットとして作られたのではないかと指摘されている。196番も235番もカウフマンの絵画に基づく版画を題材としている点で同様である。


高さ(H)：30cm

マーク：刻込みで「No 195」。パッチマーク。
Marks：Incised "No 195". Patch marks.

参照文献/References
-Peter Bradshaw "Derby Porcelain Figures 1750-1848" pp.295-297 and Plate243
-Peter Bradshaw "18th Century English Porcelain Figures 1745-1795" p.213 and Plate126
-John Twitchett "Derby Porcelain" Plate144
-Arthur Lane "English Porcelain Figures of the 18th Century" Plate71
-F.A. Barrett & A.L. Thorpe "Derby Porcelain" pp.39-40 (ピエール・ステファンによる作品)
-Nightingale "Contributions Towards the History of Early English Porcelain" appendix p.52 (1778年5月のオークション・カタログ)
-Frank Hurlbutt "Old Derby Porcelain" Plate11 and Plate17
-Bernard Rackham "Catalogue of the Herbert Allen Collection of English Porcelain" No.114 (Plate 30)

（2010年4月掲載）