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ロウストフト 受け皿 (1775-85年頃)
A Lowestoft Saucer Ca.1775-85



 

 ロウストフトの銅板転写(釉薬下の青)で絵付けした受け皿(ソーサー)。図柄は、もともとウースターで人気だった「フェンス・パターン(fence pattern)」を写したものである。

 フェンス・パターンは風景画の一種で、植物、島、鳥などが描かれているが、右下にジグザグなフェンスが配されていることから、この名称で呼ばれている。この図柄はウースターでは1765-85年頃に用いられ、釉薬下の銅板転写図柄の中で最も人気のあったもので、いくつかのヴァリエーションがある。また、カーフリー、ロウストフト及びダービーでコピーされた。

 ロウストフトで銅板転写が導入されたのは1771年頃とされている。本品の図柄は、基本的にウースター図柄の忠実なコピーであるが、ユニークなのは図柄の左側に島のプリントが2つ配されている点である。通常は1つしかなく、2つあるものは珍しい。

 なお、本品の裏面、高台の外側すぐのところに焼成時の支えの痕(stilt marks)が2か所ある。ロウストフト製磁器には口縁部分にこの痕が見られることが多いとされるが、高台付近に見られるものもある。ちなみに、本品では高台付近の2つとちょうど三角形をなすあたりの口縁上に小さな焼痕(あるいは欠け)があり、これも焼成時の痕かもしれない。

 裏面高台内側に、灰色と薄緑の中間のような色で"GB"と書き込まれている。これは、ブルー&ホワイト作品の研究者で長くダービー磁器国際学会の会長を務めたギルバート・ブラッドリー(Gilbert Bradley)氏のコレクションだったことを示すモノグラムである(リバプール「LP2」を参照)。

マーク:裏面高台外側に目痕。(ギルバート・ブラッドリーのモノグラム。)
Marks: Stilt Marks on the back outside of the foot rim. (Collector's monogram "GB" for Gilbert Bradley.)
直径(Diameter): 12.2p
参照文献/References
- Geoffrey A. Godden "Lowestoft Porcelains" Chapter III (pp.94-102 and Plates 131-132)
- Geoffrey A. Godden "Godden's Guide to English Blue and White Porcelian" pp.295-304 and Plates 366-368
- Sheenah Smith "Lowestoft Porcelain in Norwich Castle Museum Volume 1 Blue and White"
- Lawrence Branyan, Neal French & John Sandon"Worcester Blue & White Porcelain 1751-1790 (New Edition)" II.B.9 (p.337)
- The Caughley Society "Caughley Blue & White Patterns" E18 (p.153)

<他窯のフェンスパターン作例/Examples of "Fence pattern" by other manufacturers>
- ウースター:http://collections.vam.ac.uk/item/O336817/tea-bowl-and-worcester-porcelain-factory/
- カーフリー:http://www.britishmuseum.org/research/collection_online/collection_object_details.aspx?objectId=29560&partId=1&searchText=caughley&images=true&page=1
- ダービー:http://collections.vam.ac.uk/item/O165370/spoon-tray-william-duesbury-co/



(2017年5月掲載)