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ジェイムズ・ペニントン・リバプール ソースボート(1765-70年頃)
James Pennington's Liverpool Sauceboat Ca.1765-70



 

 

 ジェイムズ・ペニントン(James Pennington. 各々が別の磁器窯の経営者となったペニントン三兄弟(ジャイムズ、ジョン、セス)の長兄。)は、リチャード・チャファーズ(Richard Chaffers)窯のパートナーの一人だったが、1763年に独立して自らの窯を持った。独立当初は、それまでウィリアム・リード(William Reid)窯、ウィリアム・ボール(William Ball)窯が使用していたブラウンロウ・ヒル(Brownlow Hill)の建物を工場として継続使用していたが、1767年にはパークレーン(Park Lane)に工場を移転させている。(リバプールの各窯については、同じ工場(場合によっては同じ職人たちも)を使用していても、経営者が変わるごとに別窯になったとして、区別して議論することが多い。しかし、このブラウンロウ・ヒル工場についても、経営者変遷に伴う作品の変化については厳密な研究はまだこれからであるという点には留意が必要である。)

 本品は、全面にレリーフ模様の入ったソースボートで、両側横の枠内や内側の縁その他に染付け(釉薬下の青)で装飾が施されている。レリーフは、スクロール模様、花、縦縞などが組み合わされた複雑なものであり、他にもフィリップ・クリスチャン、ジョン・ペニントンなどの窯でも用いられた地模様だとされている。取っ手は基本的にはループ型であるが、上部に親指掛けがあり、下部には軽くキックが入る。素地はボーン・アッシュ(骨灰)入りであるが、色合いはかなりくすんで灰色がかっており、また黒い灰のような粒が少なからず混じっている。

 両脇の染付けによる絵付けは、大分にじんでいるが中国的な風景画である。内側の縁には菱形の格子模様が、内底には花と葉の模様が、そして注ぎ口部分の内と外にも植物の模様(恐らく)が描かれている。青はかなり深みのある濃い色合いである。

 本品には窯印や職人のマークはないが、高台上に薄緑で"GB"というモノグラムが書き込まれている。これは、Blue and Whiteの大コレクターで、ダービー磁器国際学会の会長を長く務めたギルバート・ブラッドリー(Gilbert Bradley)が、自らの収集品に書き込んだコレクターズ・マークである。(コラム13「Blue and White 宣言」及びロウストフト「LT5」を参照。)


マーク:なし
Mark: None
長さ(L):16.8cm
文献/Literature
- English Ceramic Circle "British Sauceboats 1720-1850" (CD) No.49
- Bernard M. Watney "Liverpool Porcelain of the Eighteenth Century" p.40, figs.140-141, plate14d; p.75, fig.299; fig.332


(2010年9月掲載)