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デウィット・ウォラス装飾美術館(米国:ウィリアムズバーグ)
The DeWitt Wallace Decrative Arts Museum (USA: Williamsburg, VA)


 ワシントンDCの南側に隣接するヴァージニア州は、「新大陸」で英国人が最初に入植した地であり、また、ワシントンやジェファーソンなど米国独立時の指導者を多く輩出した地でもあります。このヴァージニアのかつての州都であるウィリアムズバーグには、植民地時代の街並みが”Colonial Williamsburg”として保存・再現されており、その一角にこの美術館があります(ただし、美術館の建物自体は現代建築ですが)。

 ここは一言でいうと、米国及び英国のアンティークを展示している美術館で、家具、衣装、武器、銀器などが揃っています。18世紀の英国磁器は、この美術館の目玉の一つです。特にチェルシーとウースターの作品は充実しており、それぞれJohn C. Austin著”Chelsea Porcelain at Williamsburg”チェルシーの参照文献のページを参照。)とSamuel M. Clarke著“Worcester Porcelain in Colonial Williamsburg”ウースターの参照文献のページを参照。)にまとめられて出版もされています。英国の外で18世紀の英国磁器作品をこれだけ収集・展示している所は少ない上に、集められた作品の質も極めて高く、その道では一目も二目も置かれている美術館です。

 例えば、チェルシーの「山羊と蜂の水差し(Goat & Bee Jug)」(コラム2の「チェルシー」のページを参照。)は、英国磁器の製造年を確定できる最初期の作品として重要ですが、この美術館では、白磁のものと他色彩を施したものの両方を見比べることができます。(ちなみに、この「山羊と蜂の水差し」はメトロポリタン美術館やボストン美術館にもありますが、前者では件の”American Wing”に何の解説もなしに置かれています。いつまであるか分かりませんが。)また、マイセンの影響を受けたチェルシーの「猿の音楽隊(10体)」も、他ではほとんど見られず、要注目の作品です。

 ”Colonial Williamsburg”を訪れても、この美術館に足をのばす人はそう多くないようで、ゆったりと作品を鑑賞することができるのは大きなメリットです。展示方法にも工夫があり、一部作品は自動回転台に載せられて、後ろ側まで見ることができるようになっています。また、磁器展示室以外にも、例えば家具の展示室にも磁器作品がさりげなく置かれていたりして、美術館全体を通じて楽しむことができます。


(2006年1月執筆)