ゲティ・センター(米国:ロサンゼルス)
The Getty Center(USA: Los Angeles, CA)
ロサンゼルス郊外の一つの山の斜面全体を使った白亜の現代要塞、初めて訪れるとゲティー・センターはそんな感じに見えます。でも頂上まで登ると(もちろん歩いて登る必要はありません。トラムもありますし、少し離れた駐車場からはシャトルバスで頂上まで連れていっていくれます。)、そんないかめしい感じは完全に消えうせます。水が流れる広場に大理石の建物が点在し、まるでおしゃれな大学のキャンパスのようです。家族連れの人たちはピクニック気分で食事をしています。また、山頂からの眺めは格別で、向かいの山腹に建つハリウッド風の豪邸群を眺めているだけでも気分がよくなります。
この点在している建物が美術館になっており、それぞれが東西南北の方角名を冠したパヴィリオンと呼ばれています(個々の建物はそれほど大きくはありません)。ここの収蔵品は、欧州絵画、彫刻、装飾美術などが主体です。
陶磁器の中でもっとも充実しているのは、サウス・パヴィリオンに集められているヴァンサンヌ/セーヴル作品で("Vincennes and Sevres Porcelain - Catalogue of the Collection"という立派なカタログも出版されています。)、壺やビスケット像などの装飾品から皿やカップなどの実用品まで幅広く展示されています。特に印象に残ったのは、ブーシェ風キューピッド図(ダービー「D2-13」参照。)が紫の単色で描かれたポプリ入れ、山羊の頭部を取っ手にした濃紺地の新古典主義の壺、花絵のじょうろなどです。フランス物では他にサンクルー、シャンティー、メネシーなどの作品があります。マイセン作品は壺や人形が中心で、特に白磁の大きな動物象(きつね、七面鳥)は迫力があります。中国や日本の作品も同じくサウス・パヴィリオンにいくつか展示されています。
イタリア陶磁器はウエスト・パヴィリオンと、ノース・パビリオン(ここにはガラス作品も)で見ることができます。磁器人形や陶器の食器などが主体です。
残念ながら英国磁器は展示されていないようでしたが、収蔵品にはダービーのビスケット人形(スペングラー作(コラム11参照)。本当はこれが目当てだったのですが。)などが含まれているようなので、展示替えがあれば見ることができるのでしょう。
郊外とはいえ車でならロサンゼルス市街から30分もかからないほどですし、正面入口まで路線バスも走っているようです。あまりの人気で道路が渋滞し駐車場も不足しているのが難点ですが、そもそも駆け足で見て回るような場所ではないので、時間に余裕を持って、くつろぎながらの鑑賞をお勧めします。
(2008年9月執筆)