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ナショナル・ギャラリー(米国:ワシントンDC)
National Gallery of Art (USA: Washington, DC)


 米国の首都の威信をかけた大美術館です。居並ぶスミソニアン協会の博物館・美術館群もみな威風堂々たる建物なので、特別目立ちはしませんが、連邦議会議事堂に一番近い「特等地」を占める、まさに美術の殿堂です。

 この美術館は、特に欧州の絵画と彫刻において優れたコレクションを誇っていますが、陶磁器に代表される装飾美術も重視しており、欧州とアジアなどの装飾美術作品を"Western Decorative Arts""Decorative Arts, Part II"として自ら出版もしています。

 しかし、欧州陶磁器に関しては、ルネッサンス期のイタリア陶器が中心で、18世紀以降の磁器作品は残念ながら多くありません。展示場所は、西館(本館)の1階西側です(この建物は入り口が多いので入ってどちら側と言いにくいのですが、正面入り口(2階にあります)から入ると、左手に当たります)。展示のメインが2階に集中しているせいもありますが、1階の展示は案内表示が少なく、なかなか探しにくいかもしれません。(本美術館の目玉の一つで、同じく1階にある、フェルメールを含むオランダ絵画の展示室だけは、親切な案内表示が出ていて、イタリア陶器はその近くにありますので、この案内をたどっていくとよいでしょう。脱線しますが、ここにはフェルメールの絵画が4点あります(真贋論争のある1点を含む)。ニューヨークのメトロポリタン美術館(5点)とフリック・コレクション(3点)と合わせて、全部で30数点しかないとされるフェルメール作品の約3分の一をこの二都市だけで見ることができます。)


 話を陶磁器に戻すと、フェルメールの絵が飾ってある隣の部屋に、常設では唯一の18世紀欧州磁器だと思われるマイセンの作品があります。これはケンドラー作の白鳥像に金の蝋燭立てを何本も巻きつけるようにとりつけたもので、ペアで展示されています。同じ部屋には、中国・清代の鯉を模した青磁の壷にフランスで金装飾を施した作品も置かれています。

 実は、本美術館収蔵の陶磁器では、何と言っても中国・清代の康熙帝、雍正帝の時代を中心とした作品群が圧倒的に充実しています。展示場所は同じく西館の1階西側ですが、幾部屋も使って多様な作品が並べられています。大きな作品(壷など)が多いことも特徴の一つかもしれません。磁器人形も要注目です。


 なお、いくら陶磁器展示が1階に集中しているからと言っても、この美術館の真髄である2階の絵画を見ないわけにはいかないでしょう。「首都の威信をかけた」コレクションは、ここにあります。陶磁器を見た後で、ゆっくりと堪能してください。なお、西館(本館)の隣に近現代美術中心の東館(新館)もありますし(陶磁器はありませんが)、反対側の隣の敷地には彫刻庭園もあります。

(2006年1月執筆)