これまでの「今日のコラム」(2010年 6月分)

6月1日(火) <大羽イワシの大群・・・>
大羽イワシの大群を描いたふすま絵をみた。昨夜7時30分からのNHK「クローズアップ現代」は京都の清水寺・成就院に新たに46面のふすま絵を奉納した画家、中島潔さんの特集番組であった。中島潔(1943年満州生まれ、1歳で日本に引き揚げ/私とほぼ同世代だ)は「風の画家」とよばれる詩情豊かな童画などで知られる画家で、日本画の主流をなす東山魁夷などいわばエリートの系列とは縁がない。それだけに清水寺に中島潔が描いた襖絵は歴史的な作品になると直感した。世に襖絵の数は多いが現代を象徴する襖絵として歴史に残る独自性と美しさ、精神性を持つ。中でも金子みずずの詩「大漁」に触発されて描いたというイワシの大群の襖絵8面の迫力はすごい!8面を並べた写真でなくて残念であるが、清水寺の「中島潔襖絵展」サイト=ここ=で概要を見ることができる。願わくば清水寺はこれらの襖絵を歴史遺産として大切に保管し、かつ今後も適宜公開をして欲しい。・・今や広く知られてはいるが金子みすずの詩「大漁」を転載しておこう:「朝焼小焼だ/大漁だ/大羽鰯の/大漁だ。 浜は祭りの/ようだけど/海のなかでは/何万の/鰯のとむらいするだろう」<大羽鰯については、たまたま私が書いた5/30のコラム=ここ=参照

6月2日(水) <昨晩、息子からの電話・・・>
昨晩、息子からの電話を妻が受けた。もし、私が電話をとっていれば以下のような会話を交わしただろうか。「○○、元気にやってる? 声が低いじゃない、風邪ひいたの。色々お金が苦しいのか、なんとかしてあげたいよ。極楽と言っても楽でないね。お金振り込んでもいいけれど三途の川は渡れるかい。ところで・・」。息子の名前を騙った(かたった)振込詐欺であることは即座に分かったが真面目な妻はまともに応対したので直ぐに電話を切られてしまった。今日は息子の14回目の月命日に当たる。気分直しも兼ねて妻と墓参りにいった。境内は新緑の真っ盛り。大樹に囲まれて雑草たちものび放題である。特に圧倒的に広範囲を占領しているのがドクダミ。ドクダミの白い花の大群の中で「ヘビイチゴ(蛇苺)」の赤い実が懸命に存在をアピールしている。・・墓前で陽光を存分に浴び、境内の植物を細かく見て回っていると、こざかしい(小賢しい)人間のことなどすっかり忘れてしまった。
 
2010-06-02@九品仏浄真寺・東京・世田谷区
6月3日(木) <友人の絵画展・・・>

友人の絵画展に行った。三鷹市芸術文化センターで開催されている10数人のグループ展で出展者はみな素人であるが画歴は10年を越すベテランばかり。毎年このグループの展覧会をみるがそれぞれの個性を存分に発揮した絵画ばかりで見ていて気持ちがよい。最近、このグループの指導に元美術学校の(著名な)先生が着任された話を聞いた。ところが学校の生徒を指導する調子でいろいろ指摘をするとグループ員と大げんかとなり、この先生、世の中言われるままに描く人ばかりでないと毎回社会勉強の連続であるという。私と友人も見解が一致したが美術ほど「指導」の難しいものはない。構図や色、バランスなどに"正解”をもって指導しようとすると返って悪くする。美術では先生が生徒の才能を駄目にした事例は数知れない。このグループが個性的で面白いのは先生の指導に反発したり言われる通りに描かないところだと納得した。・・帰路、会場の直ぐ側の八幡大神社(下連雀)に寄ってみた。入口に神社の由来と共に「三鷹」についても説明があった。これによれば「この一帯に徳川御三家の御鷹場があったことから三鷹と呼ばれた」とある。またこの地の「下連雀」の名前は、江戸時代の明暦の大火(明暦3年、1657年、当時の江戸の大半を焼失した大火災、振袖火事)を契機に江戸の大改造が行われた際、「神田連雀町」の被災者がこの地に移り住んだことからきているという。地名には歴史が詰まっている。
2010-06-03@ 八幡大神社(三鷹・下連雀)

6月4日(金) <陶芸の大作に取り組んで・・・>
陶芸の大作に取り組んでいるがなかなか成果を見せるチャンスがない。今日はまだ粘土を乾燥させる段階であるが「制作中の水流パゴダ」(陶芸)を今日の作品として表紙に掲載した。写真で見るように6層に重ねたパゴダ(仮名)である。最下部に水を溜めて水ポンプを設置する。そしてポンプを通して中央の最上部から水を流す予定である。それだけの装置であるが、見せ場は水の落下する姿、流れる様子か・・。ベースの粘土を真っ白な土(貫入土)を使ったので部分的に色化粧して遊んでいる。大物であるので一部に既に割れの入った箇所があるし、これから素焼、本焼と進むと何があるか分からない。粘土の段階で余り調子の良いことを言わずに、制作過程の作品を一つの記録として掲載した。写真は陶芸教室で撮影。バックに樹木がみえる環境がありがたい。
「今日の写真」としてまたまた野草「ムシトリナデシコ(虫取撫子)」 を掲載する。「虫取」の名は花の下の茎に粘液を分泌してアリや小さな虫をくっつけるところから来た(実は身を守っているのであり虫を捕獲して食べることはない)<net説明例=ここ>。
  2010-06-04@中目黒公園・東京/目黒区

6月5日(土) <「細川護煕展」・・・>
「細川護煕展」を見てきた(日本橋三越にて6/14まで=ここ=以後、千愛、福岡、札幌の三越を巡回予定)。細川さん(1938年生まれ)は1993年に第79代内閣総理大臣となったが1年足らずで退陣、その後還暦(60歳)を機に政界を完全に引退し、以後陶芸に徹底的に打ち込んできた人(たまたま先月5/23コラム=ここ=でも触れた)。今回、作陶10年を記念してフランス・パリの三越エトワールで開催した「細川護煕展」の帰国記念展である。あえて「作陶展」といわないのは、楽、信楽、高麗、志野など幅広い技法を駆使した陶芸作品(茶器や花器)に加えて書や他の展示物も多かったからだろう。私は細川さんの陶芸をこれまで何度か拝見し以前展覧会場で細川さんと直に言葉を交わして陶芸の事を質問したりしたこともあるので親しみを感じるのだが、今回は今までに見たことのない陶仏や灯籠、狛犬、陶板、さらには漆絵まで展示されており新たに細川さんの幅広さを知った。それにしても私の陶芸はどうしても細川流の道を進まないだろうし、細川さんは間違えても私のような陶芸は作らない。そこが創作としての”ものつくり”の楽しいところであろう。・・細川さんの話題となると時節柄昨日の菅直人新首相誕生に絡んで鳩山由紀夫前首相の今後を思う。細川さんと同じく名門の出身で首相の任期も共に1年足らず。しかし鳩山さんは既に還暦を過ぎているし(63歳)、政界を引退しても陶芸はやりそうもない・・。

6月6日(日) <iPadを使って・・・>
iPadを使ってみた。といって知人の持っているiPadを一時使わせてもらっただけである。我が家では妻がipod-toutch(6×11cmの小型)を愛用しているので、同じような操作の基本は直ぐに理解した。画面に直接触れて操作するやり方が一つの大きな特徴。これは指の静電容量を感知して作動する方式である。鉛筆や木片などで画面を触っても動かない(手袋をしていても駄目)が、手(指)の生の感触で素早く操作できることはむしろ大きな快感となる。新聞や書籍のページをめくる気持ちよさ、文字を自在に大きくして読む便利さなど一度使うと病みつきになる。アプリケーションの豊富さや通信機能の優秀さは云うまでもない。また、ノートパソコンという概念を超えて「板」の中に高性能な電池やスピーカーを取り込んでしまった技術にはあらためて感服する。<iPadの宣伝=ここ>・・実際に使ってみるとコンピュータにまた新時代が到来した感がする。技術の革新は社会に活気をもたらすが、いいと分かっていても自分のところに直ぐに導入する訳にはいかない。しばし我慢、ガマンである。

6月7日(月) <紫砂茶壺(しさチャフー)の名人・・・>
紫砂茶壺(しさチャフー)の名人が練り込みで作った作品を展示した「練り込み陶磁器展」を見に行った。・・といっても説明を要する。「練り込み」というのは色の違う複数の土を合わせて練り込むことにより独特の模様を付けて陶磁器を制作する技法のことで、釉薬による模様とは全く違う素材の味を出すことができる(透明釉はかける)。この展覧会(@銀座・ACギャラリー=ここ、13日まで)に出品している城田さんが実は紫砂茶壺作りの名人なのである。中国茶を入れる急須は茶壺(チャーフー)と呼ばれる独特な形状をしている(茶壺の形の説明例=ここ)。茶壺の代表的な生産地は中国の宜興(ぎこう)であり、ここで制作される茶壺は土の名をとり「紫砂壺」として珍重されるという。城田さんは日本人で初めて宜興までいって紫砂壺作りの修行をしており、その作品もすばらしい。ところが手作りの繊細な茶壺は日本では余り需要がなく、それだけに打ち込む訳にはいかないようだ。ご本人は視野を広める意味でも色々な分野のことをやる方がうれしいと話しているが、今は練り込み技法の先生をやりながら細々と(?)日本での茶壺つくりを続けている。陶芸教室で以前私たちの先生をしていた城田さん。何か自分の娘のように(私の娘より若い年齢であるが)彼女の茶壺の技がいつの日か広く認められることを楽しみにしている。
6月8日(火) <「ニゲラ」のその後・・・>
「ニゲラ」のその後を追っている。ニゲラは5月31日のコラム(=ここ)で取りあげた野草で実に奇怪な花を咲かせていたので興味を持ったのだが、花が終わった後に果実が膨らんで中に黒い種(=これが名前の由来)をつけると知った。そこで機会ある度にニゲラの生息地(近所の公園)にいって進行状況を観察しているのである。ニゲラの花もまた「花の命は短い」。わずか一週間で花はほとんどなくなり今はまさに果実が日に日に膨らんでいる真っ最中だ。下の写真の左は4〜5日前の果実。花の萎れた名残が少し残っている。右の写真は今日撮影した果実。もうすぐ種をはじき飛ばしそうに膨らんでいる。これまでは名前も知らず、"奇怪”な花の形が(5/31コラムの写真を見て欲しい)気味が悪いほどであったニゲラが、今では毎日散歩のときには一番最初に顔を見に行く親しい植物になってしまった。
 
2010-06-08@中目黒公園・目黒区 /東京

6月9日(水) <扇風機に新しい風・・・>
扇風機に新しい風が吹いている。扇風機の歴史はほぼ100年。羽根を回転させて風を送り出す単純な機構であるから翼(羽根)の形状を改善して効率を上げることもやり尽くしたし自動化するにしても大層な内容はない。技術的に扇風機はやるべき事を全て終わった枯れかかっているものと思っていた。それだけにダイソン製の「羽根のない扇風機<エアマルチプライアー>」を見たときのショックは大きかった。何だこれは・・と絶句する。25cm(または30cm)の丸い輪があるだけ羽根はない。それで輪から風が流れてくる(ダイソン扇風機のページ=ここ)。回転する羽根が見えないのに風がくること自体が驚異で仕掛けが分かると技術的によくここまで完成させたと感心する。何より意外性とデザイン性(もちろん安全性も)が抜群であるので欲しいところだが問題は価格である。もう一つ従来型扇風機の新しい風でいえば、バルミューダデザインのグリーンファン(紹介例=ここ)も興味深い。これは二重構造のファンを使用することにより静かで豊かな風量を作りだしている。それにしてもグリーンファンもダイソンに負けず劣らず高価である。・・これらの商品を自分で購入するか否かはさておいて、新しい風に触れるだけでも爽やかになるのは確かである。

6月10日(木) <紫陽花(アジサイ)の季節・・・>
紫陽花(アジサイ)の季節となった。このところ花のサイズが5〜10mmの小さな野草ばかり見ているためか紫陽花に目をやると何と巨大な花であることか!紫陽花といってもこれまた数知れぬ種類があり奥が深そうだ。そこで散歩の途中で目に付く紫陽花を片っ端から写真を撮って詳細に観察してみることにした。先ずは「ガクアジサイ」(下の写真)。ガクアジサイの本来の花は中心部のブツブツみえるところ。確かによくみると10本ほどの雄しべと3〜4個の花柱(雌しべの柱頭と子房の間の柱)がみえる。周辺の白い花は装飾花でこれが「額縁」のように囲んでいるのでガクアジサイの名がついた。この装飾花の花弁(はなびら/3〜4枚ある)は「萼(がく)」であるという。「ガク」というと一般的には花びらの付け根(外側)にある葉のようなものを思うが、この花弁自体が花を支える役目を持った「ガク」である訳だ。それにしても何故ガクアジサイはこのような形状となったのか・・。一つの植物でさえ見れば見るほど不思議が増える。

2010-06-10@中目黒公園・目黒区/東京

6月11日(金) <都庁の展望台・・・>
都庁の展望台が意外にいいよ・・。外国からの客人が京王プラザホテル(新宿)に宿泊するので、どこか近所で案内する場所がないか調べていて直ぐ隣の東京都庁に展望台があることに気がついた。今日はその下調べで昼の時間に都庁・北展望室に上ってみたのである。都庁の第一本庁舎の45階(地上202m)には北展望室と南展望室の二つの展望台があり(エレベータの乗り場も北と南で異なる)、360度の展望が楽しめるだけでなく、ゆったりとしたスペースで飲食もできる。何より入場無料がうれしい。それと北展望室は夜の11時までやっている。ホテルから歩いて行き東京の夜景を眺めるには絶好である。・・人の接待を考えながら本当は自分が一番楽しんでいる・・。
2010-06-11@東京都庁北展望室より

6月12日(土) <「本日のはやぶさ君」・・・>
「本日のはやぶさ君」の情報が時々刻々インターネットで中継されている(宇宙航空研究開発機構の特設ページ=ここ、はやぶさの解説=ここ)。「はやぶさ君」とは明日13日深夜に地球へ帰還する小惑星探査機のことで、着地予定のオーストラリアから帰還の様子が生中継される(=ここ=など)。「はやぶさ」のことはマスコミでは余り取りあげないが、単なる科学的な探査を超えて今一大ロマンが実践されているという興奮を覚える。地球出発が2003年5月。地球と火星の間にある小惑星イトカワに着陸(イトカワは500mほどの小惑星なので引力も極小で逆に着陸が難しい/太陽光の圧力で降下)そしてし岩石の試料を採取したのが2005年末、その後また地球へ向かって戻る。その間の距離は”45億km"、イオンエンジンなど新型エンジンを組み合わせ飛行し続けて7年間! しかも、その間順調ではなく制御不良、通信途絶、エンジンの故障など幾多のトラブルに見舞われながら奇跡的に回復させて地球に帰還しようとしている、正に「不死鳥」なのである。・・日本の若者はマスコミが流すつまらぬ政治騒動などではなくインターネットで是非「はやぶさ」のロマンを見て欲しい。これは未来の夢物語でなく日本で成し遂げつつある現実なのである。

6月13日(日) <スウェーデン放送交響楽団・・・>
スウェーデン放送交響楽団のメンバーとして来日した夫婦に久しぶりに再会した。中国の上海での演奏会(万博記念)の後、昨晩日本に到着したスウェーデン放送交響楽団が23年振りの来日と聞いて感無量である。前回メンバーの中に私の友人(スエーデン人)の娘婿さんが入っており自由時間に歌舞伎座の立ち見席で一緒に歌舞伎をみたりした覚えがある。あれから23年か・・。娘さんにスエーデンの友人宅で会ったのは30年も前だろうか。今回は夫婦共にオーケストラのメンバーとなって来日したのである。東京都庁の45階展望室で東京の夜景を眺めながら一緒に飲食をしていると歳月の隔たりをすっかり忘れてしまった。友人の娘夫妻との縁が実に自然であるのがまたうれしい。

6月14日(月) <オーケストラのリハーサル・・・>
オーケストラのリハーサルを初めて見学させてもらった。場所は東京文化会館大ホール。団員専用の入口からはいりバイオリンやコントラバスなどの運搬用の箱が並んだ部屋を通りステージに出る。しばしステージから客席を眺めた後客席に降りてリハーサルを待った。楽団はスエーデン放送交響楽団、指揮者は若き天才指揮者として評判のダニエル・ハーディング。約1時間ほどのリハーサルであったが、ハーディングとこの交響楽団のつくり出すすばらしい音の響きに息をのむ連続であった。マーラー、シュトラウス、モーツアルトと、どの曲も続けて聴いていたいところであるがリハーサルは小気味よく進行して終了した。今現在(夜の8時)、東京文化会館ではまさに本番中。雨の中を今朝からリハーサルの直前まで妻と私が都内を観光案内した団員の夫妻も元気に演奏していることだろう。・・下の写真は夫妻と行った明治神宮の菖蒲園で撮影した。
2010-06-14@明治神宮

6月15日(火) <「ドーナツ型花器/上絵加筆」・・・>
「ドーナツ型花器/上絵加筆」(陶芸)を今日の表紙に掲載した。最近はこのような以前制作した作品の「改造」を頻繁に行っている(ただし家の小さな電気窯に入るサイズに限る)。このドーナツ型花器は2004年12月に制作したもので、今回上絵の具で帯状の模様を付けた。以前着色していたブルーの帯にも上描きして雰囲気を変えた(前回の作品=ここ)。新しく作り直せばいいのでないかと言われるがある時点で完成した作品であってもどうしてもそのまま残すのが許せなくなって思い切って「改造」するのである。ところが結果は自分で満足するケースもあるが必ずしも「改良」されるか否かは分からない。歴史に残る画家が絵画を描いた後で熟慮の末に動物を加筆したとか、逆に描いていた動物を塗り込んで消してしまったとかの事例をみたことがあるが、第三者の感覚ではどちらがベターか微妙である。陶芸でも他人がどう感じるかは分からないが、最終的に自分がやりたいようにやればよいと割り切ることにしている。
「今日の写真」は「ビョウヤナギ」(下)。中国原産の植物で楊貴妃と玄宗皇帝が暮らした未央宮(びおうきゅう)の ヤナギの葉に似ているので「未央柳」とか「美容柳」の漢名があると解説されている。それにしてもすごい雄しべである。この花が咲くといよいよ夏が訪れる・・。
  2010-06-15@渋谷区/東京 の路傍にて

6月16日(水) <今夜のハーディング指揮、スエーデン放送交響楽団・・・>
今夜のハーディング指揮、スエーデン放送交響楽団の演奏会は生涯忘れることはないだろう。演奏に感動するとはどういうことなのだろうか、流れる音楽と合わせて今日は色々な思いが頭の中を去来した。指揮者、ダニエル・ハーディングは1975年イギリスのオックスフォード生まれでケンブリッジ大学在学中に指揮者としてデビュー。その後若き天才指揮者として英国の交響楽団以外にベルリン・フィル、ウィーン・フィルを指揮するなど華々しい経歴を持つ(Daniel Hardingのwebsite=ここ<日本語>)。2007年からはスエーデン放送交響楽団の音楽監督を務めている。今日の演奏会ではその若き指揮者と団員が心を一つにして音楽を作り上げているのが感動的だった(音楽に限らず一致団結して何かをつくり出す姿は何と美しいことか。昔、NHK交響楽団が若き指揮者小澤征爾をボイコットしたような陰湿さが微塵もない)。ハーディングは自分の音楽でやりたいことが明確だ。音楽性、迫力、歯切れの良さ・・全てが魅力的。演奏会の最後の曲目はマーラーの交響曲第一番だった。思えば50年前頃、私はマーラーに凝って「大地の歌」とか当時数少なかった交響曲のレコードを集めていた。交響曲一番は中でも何十回とレコードで聴いた曲であるが生のオーケストラは今日が初めてか。私がレコードを聴いていた時代に生まれてもいなかった指揮者が同じ曲を新鮮な解釈で聴かせてくれるのがクラシック音楽の醍醐味でもある。そういえばスエーデン放送交響楽団で今回中心的に演奏していた知り合いのご夫妻も明日スエーデンに帰ってしまうと二度と会うことはないかも知れない・・。
2010-06-16@東京オペラシテイ

6月17日(木) <ギャンブル・・・>
ギャンブルにはおよそ興味もないが世の中には賭け事が好きな人は多い。相撲界はいま野球賭博で揺れている。これは専ら暴力団の資金源とつながるルートと係わったところが間違いであろう。賭博は刑法で禁止されていることは言うまでもない。賭博罪(刑法185条)で罰金または科料に処されるが、「ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」とあり、ジュースや食事を提供する程度では罪にならない。しかし実際には賭け麻雀、賭けゴルフなどで現金がやりとりされるのは周知の事実だし、公営ギャンブルではないパチンコで直接換金はできないが景品交換所で景品を現金化する抜け道を設けてあるのを誰でもが知っている。<もし警察幹部が真面目に賭博罪の適応を考えると即再就職先がなくなるとか・・> 一方で競馬、競輪、競艇、宝くじに至るまで公営ギャンブルは国や地方自治体の貴重な財源であるのも確か。いずれにしてもギャンブルはクリーンなところで楽しむ程度がよろしいようで・・。先日、オバマ米国大統領がキャメロン英国首相と電話会談をした際、サッカーのワールドカップで米国が英国に敗れたら「最高のビール」をご馳走しようと米国の勝ちに賭けたそうだ。結果は1-1の引き分け。確率だけで勝負が決まらないギャンブルとしてワールドカップの日本-オランダ戦(引き分け)にビールを賭けてみるか・・。
6月18日(金) <「今日の作品」・・・>
「今日の作品」にまた昔の作品のリニューアルを掲載した。表紙の「棒立方体/上絵追加」(陶芸)は2006年10月に制作した「棒立方体」(=ここ)を上絵の具を塗って焼成し直したものである。以前は棒の色を白で仕上げていたが土色との斑模様が気に入らないので今回は黒系統とした。色を塗布した後、家の窯を使い780度の温度で焼成することができるので窯に入るサイズであれば以前制作した作品でも容易に色を変えられる訳である。部分的に金属的な風合いを出したのは成功と思っているが、完成品の改造を始めるとクセになる。今後、リニューアルの誘惑にはできるだけ打ち勝って新しい作品に挑戦するように自分には言い聞かせている・・。
「今日の写真」は アカスジカメムシの写真を掲載。このムシ、セリ科の植物が大好きだとか。確かに食べているのはセリ科の薬草・ハーブであるフェンネル(もしかすると「ディル」か)。
  2010-06-18@中目黒公園/東京

6月19日(土) <「天地明察」・・・>
「天地明察」を読み終えた。いま読了した心地よい余韻に浸りながらできるだけ多くの人にこの名作を紹介したい気持ちでいっぱいである。まず今年、2010年の本屋大賞一位にこの本が選ばれたことがうれしい。この種の真っ当な本に感激して推奨する人が多い社会は健全である。次に作者、冲方 丁(うぶかた とう)さんが1977年生まれと若くしかも幼少時、シンガポールとネパールなど外国で過ごしながらこの本のように日本文化の神髄に通じていること、更に小説を書くだけでなくコンピュータ制作者、アニメ制作者というマルチタレントであるのもうれしい。小説「「天地明察」の内容を「江戸時代前期の碁打ち、渋川春海が囲碁研鑽の一方で天文、数学、暦学などを独習し、ついには新しい暦を作る物語」などといってもピンとこない。何が何でも本を読むことをお勧めするが、ウェブで作者の冲方 丁さん自身が説明しているサイトも面白い(=ここ)。”作家も、学者も、棋士も、ライターも、書店員も・・<主婦もリタイアした人も全ての人に>本読み心を轟かせる勇気百倍のエンタテインメント!”という宣伝文句は大袈裟ではない。
「今日の写真」は昨日掲載した「フェンネル」にイモムシがいたので撮影したもの。キアゲハの幼虫であろうかセリ科のフェンネルを食べるとはグルメ・・。
2010-06-19@中目黒公園/東京
<明日から小旅行のため2〜3日コラムやすみます>

6月22日(火) <富士山・・・>
富士山の見える場所に三日間ほど滞在した。富士山は十分に知っているようで実は極めて断片的にしか見たことはないし周辺の自然や施設にも一部しか訪れたことはなかった。今回は梅雨時にしては天候に恵まれて富士山を色々な方向から見ることができたし樹海や風穴.氷穴などの自然、古き富士山信仰の霊泉である忍野八海(おしのはっかい)、リゾートの温泉に至るまで各所に行くことができた。そこであらためて富士山の大きさ、神秘さ、多様性を思い知らされる。風穴や氷穴の奥ではこの時期零度の寒さに震え、紅葉台では富士山を正面にして樹海に囲まれた360度の眺望に歓声を上げた。富士山とその周辺は世界遺産に登録されてもされなくても、貴重な自然遺産であることは間違いない。今日の写真には山中湖近辺での夕暮れ写真(6/21)と花の都公園での”小さなお花”の写真を掲載する。
 
2010-06-22@山中湖近辺

6月23日(水) <雨後の筍(タケノコ)・・・>
雨後の筍(タケノコ)とはよく言ったものである。今日は雨の合間に狭い共同庭の一角で数本の細い筍をとった。長さが数センチから30センチほどのもので気がついた時に抜かなければあっと言う間に大きく成長して簡単に除去できなくなる。今の時期には毎年筍の生長に驚嘆させられる。何しろタケノコによっては一日、24時間で120cmも成長する。平均で1時間5cm、昼間の成長は倍となり1時間10cmになることもあるという。親竹が光合成で溜め込んだ栄養分を無数の強大な地下茎を通してタケノコに集中的に栄養補給できるからそれほど早く成長できるとは解説されているが、まだまだ知り得ない神秘がありそうだ。この驚異的な成長のメカニズムを更に深く研究すれば面白いだろう。・・今晩の夕食にはもちろん有り難くタケノコをいただいた。
「今日の作品」として表紙に「 枇杷(びわ)」(水彩)を掲載した。山中湖への小旅行で一緒に行った友人夫妻から枇杷を頂戴したので旅行中に山並みをバックにして描いたもの。


6月24日(木) <デンマーク戦・・・>
デンマーク戦が7時間後に迫った。言うまでもなくサッカーワールドカップ南アフリカ大会である。デンマーク大使館の前を歩いていると「デンマーク対日本」のポスターが目に付いたので「今日の写真」として記録した(下)。このポスターをよく見ると開催日時が「24日27:30(日本時間)」と書いてあるのが面白い。確かに25日am3:30より分かり易いかもしれない。ところで私はデンマーク大使館の前は毎日のように通るけれどもデンマークには行ったことがない(コペンハーゲン空港には降りたことはある)。デンマークというとアンデルセン、シンプルなデザインの家具、名品玩具のレゴ、ロイヤルコペンハーゲンの陶磁器などを思いつくがよくは知らない。そこでデンマークをあらためて調べてみた。デンマークの人口は550万人余(東京都の半分以下)であるが”世界最高水準の社会福祉国家で、国民の所得格差が世界で最も小さい”。そのせいか「幸福度」が世界トップクラスとの記事もある。一方で当然のことながら18歳から32歳までの男子には徴兵制があり強力な軍隊も有する。国全体で九州ほどの面積でありドイツの北に陸続きになった半島も領土であるが首都のコペンハーゲンは島にある(スエーデンに極めて近い)。・・対戦相手の国のことを知っても戦いに有利になることはないかも知れないが親しみが持てる。勝敗は時の"運”。今晩は早く寝て早朝の結果をみようか・・。<<結果は日本3-1で勝利、決勝トーナメント進出決定>>
2010-06-24@デンマーク大使館にて

6月25日(金) <創作のアイデイァ・・・>
創作のアイデイァは外に出て歩くにかぎる。今日は国立新美術館で開催されている公募展を見た後(友人が絵画を出展している)、東京ミッドタウンに寄った。特に目的があったわけではないがガレリア3Fのサントリー美術館の横にある店を見ていると突然陶芸のアイデイァが3件続いて浮かんできた。忘れないように側の長いすに腰掛けてメモ帳に書き付けたが、確かにこのところ陶芸作品のネタが切れていると自覚はしていた。このアイデイァが実現するかどうかは未だ分からないが人間の脳というものはほんの少しの刺激で突如反応するから面白い。ミッドタウンに来たときには時間があれば必ず”檜町(ひのきちょう)公園”にも立ち寄る。この公園はミッドタウンに隣接した地にあり、檜町は江戸時代に毛利家の下屋敷があった場所で公園になったところは大名屋敷の中でも名園とされた庭園であったとのこと。「今日の写真」に公園風景を掲載するが、赤坂のど真ん中にこんな贅沢な場所が残っているのが奇跡のように思える。ただし公園の紫陽花をみていても”創作のアイデイァ”はもう浮かばなかった。
 
2010-06-25@檜町公園/東京・赤坂

6月26日(土) <テニスの史上最長試合・・・>
テニスの史上最長試合がサッカーワールドカップの熱気の影で行われていた。ウィンブルドン選手権男子シングルス一回戦でイスナー(米国)とマユ(フランス)が実に11時間5分を戦った(イスナーが勝利)。5セットの内訳はイスナーからみて(1)6-4、(2)3-6、(3)6-7、(4)7-6、(5)70-68。日没順延が2回あり三日目の24日に決着が付いたが、ウィンブルドンではセットカウントが2対2の後、最終セットはタイブレークがなく2ゲーム差がつくまで戦うのでこのようなことが起こる<3、4セットは6-6の後、7ゲーム先取のタイブレークで決着している>。この結果を見るともし全セットがタイブレークなしのルールであったとすると20時間でも30時間でも戦ったかも知れない。タイブレークがないと大会の時間管理もできないというタイブレークの意味まで教えられた「歴史的試合」だった。・・今日の私のテニスなどタイブレークどころか、ゲームカウント5-5で「引き分け」という気楽なルールです・・。
「今日の作品」に「かご形花器」(陶芸)を掲載。陶芸教室では大物を制作中なので合間に家の窯で焼成した小さな新作品。


6月27日(日) <土佐藩を脱藩した坂本龍馬・・・>
土佐藩を脱藩した坂本龍馬が薩摩藩、長州藩の調整役となり薩長同盟を成立させたとか、薩摩藩-土佐藩の軍事同盟、薩土同盟に尽力したとか、幕末にはどこの藩の人間であるかが大問題であった。明治の時代になっても○○藩出身の肩書きは人の評価や好みに大きな影響を持った。最近、インターネットの書き込み(もちろん日本人の書き込み)で未だに中国人や韓国人にいわれのない偏見を持っている人間がいるのに驚いたことがある。もっとも一方では中国や韓国で日本人というと無条件に不快を覚える人もいるのは確かだし、欧米でも黄色人種ということだけで差別する人はいる。いつの時代も出身地や肩書きだけで人を決めつける人間はなくならない。それでも今やさすがに薩摩、長州といって偏見を口にする人はいない。あと100年もすれば"国”の感覚も今とはずいぶん変わった形態になるに違いない。100年後のサッカーのワールドカップはどうなっているだろう。自分の国やあるゾーンを応援して大騒ぎするお祭りが継続していることは間違いないだろうが・・。
「今日の写真」はウオーキングの途中で見つけた「ストケシア」の花。北アメリカ原産のキク科の宿根草で別名「瑠璃(るり)菊」。梅雨入り前後に花が咲くというが正にいま花盛り。
2010-06-27@中目黒公園/東京

6月28日(月) <花の名前・・・>
花の名前を覚えようとウオーキングの途中で目についた花の写真を撮り、家で名前を調べてみる。花の名をコラムに掲載をすることもあるが掲載しなくても自分で名前を納得すると交際範囲が増えたような満足感を覚える。ところがインターネットの検索で調べても名前が分からないこともある。今日は名前を確認できなかった花の写真を(下)に掲載してみた。最近は野草の可憐な花に興味があったのだが、この花は道路まではみ出して咲いており、まるでトウモロコシの周りに花をいっぱい付けたような花のかたまりはグロテスクにさえ見える。検索では色や季節(夏)などをキーワードとしてみたが発見できず、この”多くの花の塊”をどのようなキーワードで表現するべきか分からなかった。名前が分からないとどうも欲求不満で後々まで気になってしまう。どなたか名前を教えていただければうれしい・・。
<<名前は「房藤空木(ふさふじうつぎ)」でした。お教えいただいてありがとうございました!!>>
2010-06-28@目黒区/東京

6月29日(火) <石鹸でもなしソープでもなし・・・>
石鹸でもなしソープでもなし、入浴剤と一括して呼ぶこともできない。頭から足の先まで身体を洗う「洗剤」全般の話をしたいのだが「洗剤」というと一般的には洗濯や食器の洗い物などで使う「洗剤」を連想してしまう。とにかく、頭髪用にはシャンプー、リンス、トリートメント。また、シャンプー・イン・リンスとかコンデイショナーも。ボデイー用としてはボデイーソープ、洗顔用にはまた洗顔用ソープ、泡石鹸など。ハンドソープもある。温泉テーマパークや銭湯にいくと更に炭シャンプー、アロマ○○、薬用○○なども加わる。身体一つ洗うのにどうしてこんなに多くの種類が必要なのか。昔は身体を洗うのに石鹸一つあれば十分だったなどというと顰蹙(ひんしゅく)を買うかも知れないが・・。それにしても贅沢なものだ。何にしても汚れをとるメカニズムは「洗剤」の中に含まれる界面活性剤が水に馴染みやすい親水基と油に馴染みやすい親油基の双方からできているために汚れを分離させて水の中に混ざりやすくするのだと中学校の教科書にもでている。身体用の「洗剤」は界面活性剤の効果でただ洗浄力が強ければよいと言うわけにはいかないので肌(あるいは頭髪)への影響をいかにベストの状態にするか洗剤メーカーが知恵を絞ったのであろう。人それぞれであるから”お肌が弱い方”、”毛根が敏感な方”など様々であることは分かるが、私の場合、肌は鈍感そして頭髪は既にない。実際には今でも石鹸一つで用は足りる。それが特に理由なく植物性の石鹸のほかシャンプー類がところ狭しと並んでいるのを眺めて、やはり”これでよいのか”と考えてしまう。

6月30日(水) <「揖保の糸」・・・>
「揖保の糸」のテレビコマーシャルを懐かしくみる季節となった。「揖保(いぼ)の糸」は兵庫県の手延そうめん(素麺)の商標で、揖保川(いぼがわ)の流域で生産されるのでその名がつく。場所は兵庫県の姫路市から西の岡山方面へ向かうと赤穂浪士の里、赤穂市があるが、丁度姫路と赤穂の中間位置にある龍野市がこの「揖保の糸」の産地である。私は子供の頃姫路で育ったので、夏というと「揖保の糸」。そうめんはこれしか知らなかった。そういえば子供の頃には蕎麦もラーメンも食べたことがなかった。この際「そうめん」と「ひやむぎ」、「うどん」の違いはなんだっけ?と疑問に思って調べるとJAS(日本農林規格)で規定されている。「揖保の糸」のような"手延べ”の場合、直径が「そうめん」は1.3mm未満、「ひやむぎ」は1.3mm〜1.7mm、「うどん」は1.7mmを越すものである(機械製麺の場合、角網状、丸状棒に分けて細かく規定しているが大略は手延べと同等)。それぞれの産地の味は小麦粉と水の違いで差がでるのだろうか。・・と書きながら、そうはいっても「揖保の糸」をもう何年も食べていないことに気がついた。「揖保の糸」のホームページ(=ここ)を見ると「そうめんのおいしい食べ方レシピ集に焼きそうめんまで紹介してある。東京でもたまにはそうめんを食べてみようか・・。

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