資料1
インターネット上の子どもポルノの80%が日本発信又は日本製造だとする説について
以前、児童買春児童ポルノ法成立に向けた運動において、日本が世界の子どもポルノの80%を発信又は製造している子どもポルノ大国だということが盛んに言われてきました。特にストップ子ども買春の会の共同代表である宮本潤子さんは、現在でもこれを過去の日本の状況として紹介しています。
けれども、幾つかの論文等を検討した結果、そのような発言の根拠はかなり不確かであることが分かりました。宮本さんは内閣府男女共同参画局の女性に対する暴力に関する専門調査会で次のように述べています。
(以下引用)
「○宮本説明者 ポルノに関していえば、1998年当時、インターポールの担当者などから全世界にインターネットを通じて出回っている児童ポルノのうち、商業的なものの80%は日本発信又は日本製造だというふうなところまで言われたくらい、この数字に は少し限定がつきますけれども、それくらいの状況が日本にありましたが、この法律施行前後におきまして、特に法律の 施行から何カ月かたった後ですけれども、複数の信頼のおける海外の調査機関及びエクパットの関連グループから、日本のポルノが数十%から数%に激減したという評価の声が届きました。」
(引用元)http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/boryoku/gijiroku/bo13-g.html
宮本さんは「日本製造又は日本発信」という具合に「製造」と「発信」を同列に扱っていますが、この二つには大きな違いがあります。子どもポルノが日本から発信されていたからといって、それを日本人が製造、発信しているとは限らないからです。韓国では最近サーバーが海外から子どもポルノ発信に利用されるという事態が発生しています。
(以下引用)
「『児童ポルノ天国』汚名を被る危機
このように、韓国国内のホームページを無作為に選んで児童ポルノの写真や動画像を掲載する海外アダルトサイトが増えている。韓国が『児童ポルノ天国』という汚名を被る危機に瀕している。 」
(引用元)http://japanese.joins.com/html/2002/1010/20021010200358400.html
それでは、実際にインターポールの担当者はどのように報告したのでしょうか。ストップ子ども買春の会ユースαが今年の三月末に開いた集会では、宮本さんは一九九八年に行われたユニセフ国際フォーラムに訪れたインターポールの担当官の話として、前述の専門調査会の時と同じ内容の発言を行ったそうです。
ところが、一九九九年二月に日本ユニセフ協会などが中心になって国会に提出した児童買春児童ポルノ処罰法の早期成立を求める要望書には、同じユニセフ国際フォーラムでのインターポールの報告を引用して、「各国の努力に報い、国際的連携に参加できうる内容をもった法の成立こそが、世界でインターネット上の子どもポルノの発信元の80%を日本が占める(インターポール報告 98.12.4.ユニセフ国際フォーラム)という危機的状況に応える最低限の第一歩です。」と書かれています。
http://web.archive.org/web/20010429042007/http://www.mmpmoo.com/stop/newsletter14ecpat.html#Anchor-59125
つまり、インターポールの担当者は元々「日本から発信されている」と報告したのに、宮本さんはこれを「日本製造又は日本発信」と言い換えている可能性があります。
一方、アイルランドのコーク大学では、応用心理学のマクスウェル・テイラー教授が中心となってインターネット上の子どもポルノについて研究しています(資料3を参照)。その調査結果をインターポールによる子どもポルノの定義(資料2を参照)と比較すると、インターポールは「子どもポルノの80%が日本製造」と報告していないのではないかという印象を受けます。
なお、インターポールが用いている子どもポルノの定義は、ストップ子ども買春の会が監修した「インターネット上の子どもの安全ガイド(資料7参照)」に書かれており、コーク大学の研究は同会が出席した国際会議で発表されています。
さらに「日本から発信」という点についても、日本から大量の子どもポルノを発信していたのは海外の子どもポルノ業者だということをアメリカのNGOであるガーディアン・エンジェルスの創設者であるスリワ氏などが言っています(資料4)。
以上をまとめると、日本が世界の子どもポルノの80%を発信又は製造している子どもポルノ大国だとする説は、海外の子どもポルノ業者が日本のサーバーを利用して大量の子どもポルノを発信していたという事実を大幅に誇張したものである可能性があります。