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■クリアランスレベルの問題

 ●信頼できない安全性

【原子力安全・保安院の主張】
「被曝量が一般人の年間許容量の100分の1になるように算出されます。」

「一般に、放射性核種の濃度が極めて低く人の健康への影響が無視できることから、放射性物質として扱わない基準を『クリアランスレベル』と呼びます。」
(原子力安全・保安院のパンフレットから引用。右イラストも)

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【しかし、実際には‥】
 放射能にはこれ以下ならば安全であるという値は存在しません。上の計算のもとになっている考え方においても、決して影響がゼロとなる基準を定めているわけではありません。

 具体的には、過失や不正が一切なく、制度がきちんと運用されたとしても、100万人に1人の割合でガン・白血病の死者を増やす程度の危険が容認されています。日本の人口1億2千万人に対して毎年120人程度の被害者が公然と見込まれています。
(ちなみに100万人に1人といえば‥ヤコブ病の発症率がそのくらいだといわれています。) 

【すなわち】
リスクは極小ではあるものの、決してゼロではないわけです。


 ●この基準さえ守られないケースだってあり得る

 上の話はあくまでも基準が守られた場合においての危険です。それに加えて、基準すら守られないケースを考慮すれば危険はますます大きくなります。

 例えば、原発の解体現場で、膨大な量の廃棄物を基準通りかどうか測定し、分別することが本当に可能なのでしょうか。また、施設から搬出されるまでの保管中に汚染しないように鍵をかけて隔離すると説明されていますが、解体工事現場でそんなことが本当に可能なのでしょうか。

 政府は、事業者が策定する「測定・判断の方法」の認可と、「測定・判断結果」の二段階で確認を行うとしています。しかし、第一段階は机上の審査だけ、第二段階は独立行政法人の原子力安全基盤機構が行う予定であり、実効性が問われます。

 さらに、実社会において「違法投棄」や「身元不明の放射線源が見つかる」などの不祥事が絶えない現実を忘れてはなりません。


 ●誰が利益を得て、誰がリスクを受け取るの?

さて、リスクの大小だけが問題ではありません。スソ切り処分の制度化によって一体誰が利益を得て、誰がリスクを受け取るのでしょうか。

利益を得るのは電気事業者です。原発の解体・処分にかかる費用が削減できます。一方、リスクを受け取るのは一般公衆、中でも現場労働者です。利益とリスクとが乖離したこの差別構造が何より問題ではないでしょうか。

*制度化を推進する人は、一般消費者も電気の受益者だと言いますが‥、消費者は世界でも最も高い部類の電気代を負担してきています。原子力は安いとさんざん宣伝しておきながらバックエンド費用をきちんと担保してこなかった責任を転嫁してはいけません。

利益を得るのは電気事業者

リスクを受け取るのは
一般公衆と現場労働者

▲このリスクは、あえて制度化をしさえしなければ避けられるものなのです‥

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■研究炉や他の施設から出た放射性廃棄物の行方は?

 ●電力会社の原発の他にも‥

 スソ切り処分は、核燃料の精錬、加工や使用済み燃料貯蔵、再処理、廃棄の事業者、核燃料物質の使用者、試験研究炉設置者、さらには米軍の原子力船にも適用されます。
 試験研究炉ではこれまでに8基が廃止され、解体工事中です。既に解体撤去された原研のJPDR炉のケースでは、金属スクラップ約1500トンが何の説明もないまま売却されています。
 「業界内での再利用」という約束は、あくまでも電力会社の原子炉についてであって、研究炉などの廃棄物がどうなるかは国会審議でも明らかにされていません。今後、監視と追求が必要です。

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 ●病院や研究所などで扱う放射能

 医療機関や研究施設で扱う放射能のごみは「原子炉等規制法」ではなく「放射線障害防止法」で規制されているため、スソ切り処分のための法改悪は今後改めて行われると思われます。

  病院など放射能ごみを出す事業所は全国に約5000、放射能を扱う研究施設は約180あります。これらの事業所で発生した放射性廃棄物は、現在「アイソ トープ協会」が回収していますが、発生箇所が多いだけに、スソ切り処分が導入された時に十分な管理が行われるかどうか分かりません。微量の放射能が市町村の収集ごみに混入することも想定されます。
 さらなる法改悪を許さない取り組みが必要です。

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