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ダービー 赤紫地ティーボウル (1770-75年頃)
Derby Claret-ground Tea Bowl Ca.1770-75
チェルシーの伝統を引き継ぐ赤紫地(クラレット。深紅(クリムゾン)と呼ばれることもある。)と白地部分とが交互に配され、赤紫地には金彩で蔓と葉が、白地には吊り下げられる形で青緑の花と葉が描かれている。金彩は若干ぼったりした感じだが、素地はかっちりと焼き上げられており、小振りな中にもチェルシー・ダービー期の魅力がよく表われた作品である。
Stephen Mitchellの研究によれば、本品の花絵(緑単色)は、いわゆる"Dot Rose Painter (DRP)"によるものとされている(ダービー「D1-7」及びダービー「D2-32」を参照)。裏面には(かなり薄くなってしまっているものの)金彩による「Dと組み合わされた錨」マークが記されており、そのマークの描き方(おそらくMitchellが参照した作品と本品とは同一金彩師による)も踏まえると、本品はダービー窯で絵付け・金彩まで行われたものと考えられている。DRPはダービー近郊の独立絵付け工房で働くとともに、ダービー窯にも雇われていたのではないかと推論されているが、そうであれば、本品は彼がダービー窯において絵付けを行った作例ということになる。
なお、かつてGerald Cokeが、この図柄はダービー素地にJames Giles工房で絵付けをしたものと主張していたが、近年この主張には疑問が持たれており、Mitchellもかなりの論拠を示してGiles絵付け説に否定的な見解を提示している。
マーク:裏面に金色で「Dと組み合わされた錨」
Mark: <Anchor interlaced with D> painted in gold on the bottom
直径(D) :8p
文献/Literature
- Stephen Mitchell "The Marks on Chelsea-Derby Porcelain And Early Crossed-Batons Useful Wares 1770-c.1790 First Supplement" pp.7-8 and Pl.127iv(a)-(f)
- Gerald Coke "In Search of James Giles" Pl.53(a) (p225)
(2010年7月更新)