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ダービー 壺 (1774年頃)
A Derby Vase Ca.1774

 

 チェルシー・ダービー期の洋梨型の壺。ダービー(D2-21)と同型である。八角形の台座の側面に型番が刻み込まれている。読みにくいのだが「25」または「35」である。(最初の写真に写っているのだが、ほとんど見えないと思う。)

 胴体の両面に描かれているのは川辺の風景画である。珍しい作例ではあるが、同じ絵付師によると思われる作品(カップ等)も知られている(下記参照文献)。製造年代については、1760年代のチェルシー作品であるとの見解もあるようだが(おそらく、金色の錨マークがあることが大きな根拠だと思われる)、Stephen Mitchellは、1770年代の作品で、絵付師はザカライア・ボアマン(Zacharaiah Boreman. 「コラム11」を参照。)ではないか、また絵付けが行われた場所はチェルシー(ダービー傘下の)、あるいは、ロンドンの独立の絵付け工房だったのではないかとしている。(ボアマンは、少なくとも1773年頃まではチェルシーに所属していた。その後1783/84年にダービーに移ってくるまでの間、チェルシーに在籍し続けていたのか、それともロンドンの別の場所で働いていたのかは不明。)

 本品にも金色の錨マークはあるが、裏面にパッチマークもあり、ダービー(D2-21)でも論じたように、1774年のダービーのロンドン店舗カタログに掲載されている形状であること、壺の型番が刻み込まれていることからも、明らかにダービーの1770年代の作品である。



高さ(Height):16cm

マーク:台座側面に刻み込みで「25(または35)」。裏面穴の中に金色の錨マーク。裏面にパッチマーク。
Marks:"25 (or 35)" incised on a side of the base. A gold anchor in the hole of the bottom. Patch marks on the bottom.

参照文献/References:
- Stephen Mitchell"The Marks on Chelsea-Derby And Early Crossed-Batons Useful Wares 1770-c.1790" pp.45-46 and Plate 28
- The Chelsea Society"Chelsea China from Private Collections" (Exhibition Catalogue) Item 128 (p.21 and the Back Cover)


(2017年3月掲載)