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ダービー ティーボウル (1771-77年頃)
A Derby Tea Bowl Ca.1771-77



 ダービーのやや小振りなティーボウル。ピンクのラインと緑で連続して描かれた花のコンビネーションは、チェルシー・ダービー期の特徴的な図柄の一つで、多くのバリエーションがある(ダービー「CD8」「CD13」及び「D2-24」を参照)。本品ではピンクのラインにからまる緑青(花の緑とは若干異なる色)の蔓がアクセントになっている。ただし、絵付けは、チェルシー・ダービー期の作品としては乱雑な描き方である。

 このピンクと緑のコンビネーション図柄は、下記のとおり、ダービーの1771年4月のクリスティーズでのオークションに既に登場しており、その後も1779年5月、1783年5月のオークションに出品されるなど、チェルシー・ダービー期のほぼ全期間を通じて描かれたと考えられる。一方で、1785年に導入されたパターン・ブックには、この種の図柄は含まれておらず、チェルシー・ダービー期に限定して描かれた図柄であると見られる。なお、ラインのピンク色については、当時の記述ではクリムゾン(深紅)とされている。

1771年4月のオークション:
 (Day 1) 68 A curious tea and coffee equipage, with crimson wave and green flowers, curiously ornamented with gold 10l. 10s.
 (Day 3) 41 A complete tea and coffee equipage, finely enamel'd with strings of green flowers and crimson veins, finely finished with gold handles and dentil edges 11l. 12s. 6d.

1779年5月のオークション:
 Six caudle cups, covers and stands, enamel'd with green flowers, crimson stripes and gold edge 1l. 19s.

1783年5月のオークション:
 Six elegant coffee cups and saucers enamel'd with green flowers, crimson stripes and gold edge 1l., Dr. Johnson


 なお、本品の裏面を見ると、高台が擦り切られているが、これもこの時期のダービー作品によく見られる特徴である。マークは写真では見えないと思うが、チェルシー・ダービー期の前半で使用された、金色の錨とアルファベットのDを組み合わせたマークの痕跡がかすかに残っている。



高さ(H):4.5cm
直径(D):7.4cm

マーク:金色で「錨と組み合わされたD」
Marks: A gold anchor entwined with D (rubbed off)

参照文献/References:
- Stephen Mitchell"The Marks on Chelsea-Derby And Early Crossed-Batons Useful Wares 1770-c.1790" Plate 115, M14(本品とほぼ同図柄のティーボウル)


(2016年1月掲載)