リバプールでは、1750年代中盤に三つの窯で磁器製造が開始された。すなわち、ウィリアム・チャファーズ(William Chaffers)、サミュエル・ギルボディ(Samuel Gilbody)、そしてウィリアム・リード(William Reid)の各窯である。その後も経営者が変遷しつつ、多くの磁器窯が活動を継続し19世紀まで至った。各窯の作品については研究が遅れていたが、20世紀後期の研究や発掘によって次々と新事実が解明され、それ以前の作品判定は大きく見直された。かつてウィリアム・リード窯の作品だと考えられていたものは現在ではロンドンのライムハウス窯の作品であることが判明しており、かつてウィリアム・ボール(William Ball)窯作品と考えられていたものも、ロンドンのヴォクソール窯作品であるとされている。さらに、20世紀の最晩年までウィリアム・チャファーズ窯作品と考えられていたものの多く、そしてサミュエル・ギルボディ窯の作品だと考えられていたものの一部が、窯跡発掘の結果、ともに実はウィリアム・リード窯の作品だと判明している。このように紆余曲折の歴史を辿ってきた(あるいは、依然として辿りつつある)リバプール各窯であるが、逆に言えば、それゆえに英国磁器における重要な地位を占めるこれらの窯が、常にホットな研究対象であるという面白さもあるのである。
以下、リバプールの各磁器窯を列記しておく。(なお、現時点では以下の各窯のうちWilliam BallとZachariah Barnesの両窯の作品は存在が特定されていない。)
Shaw's Brow工場
・Richard Chaffers 1755-1765年頃
・Philip Christian 1765-1778年頃
・Seth Pennington 1778-1805年頃
Shaw's Brow工場(上記Chaffersの工場に隣接)
・Samuel Gilbody 1755-1761年頃
Brownlow Hill工場(1756-1767年頃)及びPark Lane工場(1767-1772年頃)
・William Reid 1756-1761年頃
・William Ball 1761-1763年頃
・James Pennington 1763-1772年頃
Copperas Hill工場(1770-1779年頃)及びFolly Lane工場(1779-1800年頃)
・John Pennington 1770-1786年頃
・Jane Pennington 1786-1794年頃
・Thomas Wolfe 1796-1800年頃
Haymarket Pothouse工場
・Zachariah Barnes 1781-1800年頃
Herculaneum社 1796-1840年頃(「ハーキュラネウムのページ」を参照)
参照 ref |
写真/image | 作品/title | 製造年代 circa |
LP1 | フィリップ・クリスチャン コーヒーポット Philip Christian Coffee Pot |
1765-70 | |
LP2 | ジェイムズ・ペニントン ソースボート James Pennington Sauceboat |
1765-70 | |
LP3 | セス・ペニントン ピクルス皿 Seth Pennington Pickles Dish |
1780-90 | |
LP4 | ジョン・ペニントン クリーム差し John Pennington Cream Jug |
1775-85 | |
LP5 | フィリップ・クリスチャン コーヒーカップ A Philip Christian Coffee Cup |
1770-75 | |
セス・ペニントン ソーサー |