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モンゴメリ日記

封印が解かれるまでおよそ100年

日記出版までの長い道程、多くの人の協力

KEISEN
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モンゴメリの学校の裏の森(当時)
カナダ・オックスフォード大学版1巻収録図版 日本語版版権 立風書房

モンゴメリの夢、アンの夢

 L.M.モンゴメリ(1874-1942)は「赤毛のアン」の作者としてあまりにも有名であり、モンゴメリの育ったカナダのプリンスエドワード島がアンの島として広く親しまれているのはファンの皆さんはご存知のことでしょう。プリンスエドワード島のキャベンデイッシュ村はアンのアボンリー村と多くのイメージを共有し、モンゴメリが少女時代を過ごした世界が、アンの世界に多きく重なっているようです。
 モンゴメリは若い頃から作家を志し、日記を書きつづけていました。「赤毛のアン」と「モンゴメリの少女時代」は重なることも多く、「赤毛のアン」の創作にあたってはその日記が貴重な創作ノートになっていたことが、日記を読むと良く理解できます。アンはモンゴメリが作り上げたのですが、モンゴメリ自身の姿、モンゴメリの夢、がアンの形となって反映されています。痩せポッチでそばかす顔、地味な服を着た少女が一人駅に降り立つところから「アン」は始まり、それは、両親と離れてさ寂しく暮さなくてはいけなかったモンゴメリの心象風景だったかもしれません。
 モンゴメリ日記を 読むと、「アンに託したモンゴメリの夢」「アンに語らせた自分自身の思出」を知ることができます。モンゴメリ日記はもう一人のアンを知る貴重な日記です。また日記の中のモンゴメリはアンほど、明るく快活ではなかったようでもあります。モンゴメリの色々な悩み、悲しみを乗り越え、アンというキャラクターに明るい希望を投影し たのでしょうか。
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 モンゴメリの日記は遺言により公開が禁じられていましたので、長い間、その存在さえ知られていなかったというのが実情でした。モンゴメリの伝記は出版されていましたが、モンゴメリ本人が書き綴った日記が読めるようになったのはつい最近のことです。 モンゴメリ日記はアンを解き明かす貴重な鍵とも言えます。モンゴメリの夢と希望も理解することができます。モンゴメリの悲しみ、アンの悲しみも知ることもできます。また、大人になったモンゴメリの人生は決して平坦なものではなく、仕事の悩み、、愛の悩み、についてはそのまま現代にも通じるところが多くみられます。モンゴメリ日記は、アンを生みだしたモンゴメリを通し、もう一度、モンゴメリのアンを知ることができる貴重な日記です。
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よみがえる日記

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モンゴメリ30歳
カナダ・オックスフォード大学版1巻収録図版
日本語版版権 立風書房
 モンゴメリによれば、9才の頃から日記を書いていたという事です。しかし最初の頃の5年分の日記は本人の手により焼却されてしまいました。現存している日記は14歳のときから書き綴られた10冊の手書きの日記帖です。
 この日記は本人の遺言により1992年まで公開を禁じられていました。世界中の数多くの「赤毛のアン」の読者は、目を通す事はおろか、その存在さえも知り得ることのない封印された日記だったのです。
日記が書かれてから長い年月が経過し、遺言による公開可能な時が到来しました。この時を待ち、10冊の日記は、やや重複した内容等が読みやすく編集され、カナダ・オックスフォード大学出版局により出版される事となりました。 メアリー・ルビオ/エリザベス・ウオーターストン 編集)。1908年に「赤毛のアン」が出版されてから90年あまり後、世界中の「赤毛のアン」のファンに、モンゴメリーから「もう一人のアン」が時を越えてプレゼントされたのです
 「赤毛のアン」は世界中の少女に親しまれた楽しい物語ですが、それを執筆したモンゴメリの女性そしての喜びと苦悩の生涯は、読者にまた別の感動を読者に与えます。

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日記の発見と出版までの道のり

 1981年、カナダのゲルフ大学(University of Guelph)はモンゴメリの日記草稿 (1874-1942まで記述)とスクラップブックを、モンゴメリの息子でトロント在住の医師のマグドナルド氏(Dr.E.Stuart Macdonald)より譲りうけました。モンゴメリは日記草稿を彼女の息子に託し、出版については遺言とともに息子の判断にゆだねたのです。個人的な理由によりマグドナルド氏は日記草稿については死の2年前まで明らかにしていませんでした。ゲルフ大学に託された後、1992年まで、その日記は公開されませんでした。

日記を送り出した2人の女性

 カナダのゲルフ大学にはメアリー・ルビオ(Mary Rubio)と エリザベス・ウオターストン(Elizabeth Waterston)の2人の女性の文学研究者がいました。この二人の努力によってモンゴメリ日記は出版への道をたどる事ととなります。日記草稿がケルプ大に帰属し、出版されるに当たってはマリー・ルビオがカナダの女性文学、児童文学研究で功績を残し、モンゴメリの息子、マグドナルド氏ともモンゴメリ関連研究での個人的信頼が非常に厚かったこともあるでしょう。エリザベス・ウォーターストンも児童文学、英文学の研究者であり、最近カナダのラジオ局でモンゴメリ日記についてエリザベスが語るインタビューが放送されています。

モンゴメリ日記の草稿

ORG  出版された「モンゴメリ日記」の現存している手稿です。リーガルパッドに手書きで綴られています。この日記はモンゴメリが長い間に書き綴った日記を、後日、自ら書きなおしたものです。はるか時の彼方の読者に読んでもらうことを考え、日記を書き直したのでしょうか。その当時の写真等が手稿に挟みこまれています。写真は「赤毛のアン」が出版された時にその喜びを綴った日記原稿です。



カナダ・オックスフォード大学版1巻収録図版
写真資料「モンゴメ日記1」 日本語版版 立風書房


出版された日記

 

カナダ・オックスフォード大学の出版局では、2005年5月現在5巻の日記が出版されています。5巻目では1942年のモンゴメリ没年まで収録されましたので、これが最後の巻になるのでしょうか?
 出版関係の方のお話ですと、晩年の頃の日記ではモンゴメリ周囲の人たちについての赤裸々な記述も多いらしく、関係者が存命という環境もあるので、出版についてはデリケートが問題が多く、出版が遅れた状況もあるのではないだろうか?ということでした。この5冊はいづれもハードカバー本ですが、2000年の4月に400Pあまりのペーパーバック(一巻目のみ?)も出版がされ、1巻目のハードカバー版は入手困難です。
 日本では現在、立風書房が翻訳権をもち、現在カナダ・オックスフォード大学版の1巻目にあたる部分が翻訳出版されています。原著がかなり厚い本なので、翻訳は4冊に分冊され、3冊までが出版されています。最近、原著1巻目の最後の部分(日本版4冊目にあたります)の翻訳も完了されたということで、4冊目の早い時期の出版が期待されます。原著の特徴は、写真等の図版が多く収められていることです。翻訳版と対訳しながら、両方を楽しまれる事をお勧めします。
 この本はアメリカでも「赤毛のアン」のファンの厚い層に支えられているようで、インターネットの書籍通販で有名なamazon.comのホームページ上でも紹介が出ています。日本からの注文も可能です。読者の読書レビューも多く掲載されていますので、モンゴメリファンにとっては興味深いぺージといえます。日本での未出版部分についての内容も多少知ることができます。

 

日記の著作権を守る

 

封印された日記の出版に時間が必要であった事の理由については、関係者が日記の著作権を守っていきたいという流れもあったようです。 モンドメリが亡くなってから60年以上経過しているので、そのまま日記原稿が公にされれば、著作件が失われたフリーの日記となってしまう?という危険もあり、新らしく再編集が行われ、新しい著作物として出版されたという事でしょう。関係者の熱意と苦労が偲ばれます。

 

 

カナダ・オックスフォード大学出版局版 日記表紙

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カナダ・オックスフォード大学版1巻
日本語版版権 立風書房

ORGCOVER
並べてみると可愛い1巻(左端)から4巻(右端)まで

既にカナダ・オックスフォード大学出版局で刊行されている日記リスト
1, The Selected Journals of L.M. Montgomery 1889-1910
2, The Selected Journals of L.M. Montgomery 1910-1921
3, The Selected Journals of L.M. Montgomery 1921-1929
4, The Selected Journals of L.M. Montgomery 1929-1935


ようやく出ました。2004年12月刊行の最新刊(最終巻?)です。

5, The Selected Journals of L.M. Montgomery 1935-1942



Lucy Maud Montgomery 
Editor by Mary Rubio, Elizabeth Waterston
Oxford University Press
ISBN-0-19-50505-X


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