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ざっくばらん ゆき子のおしゃべりコーナー
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2016年4月1日

2.ちょっといい話


1) 自慢していい!!息子さん

「あのね、平井さん うちの息子ことなんですけどね。もちろん、社会人になって もういちおう一人前なんですが、、、。この子は ずーーと 小学校・中学校・高校・大学と行ってきて“一度も学校に行きたくない”と思ったことがないんですって!? そしてね、今は、会社に行っているんですけど やっぱり“会社に行きたくない”って 一度も思ったことがない、というんですね。“それって、あんた!! 馬鹿じゃないの”っていうんですけどね」



60歳というその女性は ケラケラと明るく笑って言った。実はこの息子さん本人と数年前に会ったことがあった。まだ大学生だった。とても素直で、まっすぐな印象だった。その彼は今や大手家具販売会社に就職して、常に営業マンとしてトップの成績をあげているそうだ。

「どうして? 馬鹿なんかじゃないでしょう!! すごく前向きで何事もポジティブなとらえ方ができるなんて。うらやましい。自慢していい!!息子さんだと思いますよ」
と私は応えた。




2) 30年ぶりに再会した飲み屋のマスター 

「なんだか、働きたくなっちゃったんだよね」と 彼は言った。

大学から家に帰る道は歩いて15分くらいである。“今日はお天気もいいし、ちょっと違う道を歩いてみよう”と 少し遠回りをしてみたときのこと。
「初ひめ」という名前の居酒屋が目に留まった。“えー!? あの初ひめかな?”と 思った。今から30年くらい前に、表通りに同じ名前の店があったのだ。そこへ 疲れた時など夕ご飯を食べに何年か通っていたのだった。

 わたしの仕事のスタイルも変わり、いつの間にかその店もなくなり“もう あのマスターも引退しただろうなあ”と思っていたのに。同じマスターかどうかも、わからない。
ある夜、意を決して暖簾をくぐってみた。なんと そこには少し年をとったけれど、まぎれもなく“あのマスター”がいたのだった。そして、わたしのことを覚えていてくれたのだった。“あの頃”の話でしばし、話の花が咲いた。

 それにしても、若々しいけれど、、、おそらく70代の後半にはなっているはずだ。
「ねえ、どうして 店を閉じて悠々自適だったのに、また 去年から店を始めたの?」と訊いてみた。「うーん、そうなんだよね。のんびりしようと5年くらいのんびりしてたんだけど、どういうわけかな? なんだか、また 働きたくなっちゃったんだよね」という答が返ってきた。へーえ、それにしても!? 私の胸の中の??は解けない。また今度、お店が暇そうなときに、じっくり「どうして?」と 訊いてみよう。





3) ただ挨拶を交わすだけなのに、、、

野暮用で2月から3月上旬にかけて、月曜日から金曜日まで週5日毎朝決まった時間に決まった道を歩くことになった。その道の途中で大きな病院が工事中だった。大体 朝9:00前後にその工事中の横を通る。いつも、ガードマン?というか 工事のそばの道を警備している男性2人と会った。

最初はこの2人のうち若い、30歳くらいの男性が「おはようございます」と挨拶をしてくれた。もちろん、わたしにだけではないと思うが。
なんとなく、私は気恥ずかしくて<会釈>を返していた。しかし、2週間目くらいから わたしも声に出して「おはようございます」と挨拶できるようになった。相手がどうであれ、声に出して挨拶するのはやっぱり勇気がいる。でも、彼はめげずにやる。それに引きずれて、もう一人の中年の男性もボソボソではあるけれど挨拶するようになった。

 わたしは 信号待ちをしているときに、彼らの姿が見える。その後“よし”と気合をいれて挨拶しよう、と決めて大きな声と笑顔でできるようになった。
すこしずつ、時間の流れとともに気持ちが変化していくことー その挨拶というそれだけの小さな交流がとても嬉しい出来事だった。

――― そして とうとう5週目の水よう日の朝のこと。「実は わたしがこの道を通るのは今週の金曜日でおしまいです。 長かったですが、、、やっと終わりです」と思い切って、この若いほうの男性に話しかけた。「そうですか、長い間 お疲れ様でした」と 丁寧に頭を下げたのだった。それは 、こちらが恐縮するほどだった。これ以上は お互い言葉を交わすこともなかった。




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