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ざっくばらん ゆき子のおしゃべりコーナー
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2018年7月1日

2.率直に頼んでみよう!! −実践編―


<プロローグ> 困ったなあ

「あれまあ」その日程を見たとたん、がっくりきました。なぜなら、私の最も苦手とする<採血>が2日 続けて行われる日程になっているからでした。
「どうしようか」とちょっと動揺はしましたが「今 考えてもしかたがないか」と、ひとまず帰宅しました。
 5月9日・10日と続けて同じ大学病院へ行き、検査を受けなければなりません。9日は変形性膝関節症手術のための検査、10日は半年ぶりに乳がんの術後・定期検査でした。

 

4月25日。思い切ってそれこそ<ダメ元で>10日の乳腺科担当医のN・Drに手紙を書きました。「毎回、、血管が細くて、何度も血管に注射器を入れていただくことになり、非常に苦痛を感じており トラウマになっています。なんとか 9日の1回で終えていただけるよう ご配慮お願いします」という内容です。

 

GWがあけ、「もしかしたらN先生から電話でご連絡があるかな、、、」という淡い期待を抱いていたのですが、返答なし。やっぱり、ダメなのかなあ、、と がっかりしました。

 

 

 

 

<そして、5月9日> ドクターに感激

朝いちばんで採血室に行き、案の定、、この日は4回目にしてやっと血液が採れました。
30代のとてもテキパキかつ感じのいい女性の検査技師さん。「申し訳ありません。次回からはわたしのスキルをもっと磨いて1回で採れるように頑張りマス」と謝るのです。実は、これは わたしにとっては ツライのです。
「あなたのせいではないですから、、、」とわたしもひたすら、低姿勢になるばかり。
思い切って彼女に訊いてみました。

 


「実は明日、また採血にこなければならないのですが、今日1回でやってもらうことは可能ですか」と。
彼女の答え「――そうですね。かなり明日の検査項目ともダブっていますね。でも、大変申し訳ないのですが 私の判断ではそれはできないんですね。あくまで私たちはドクターの指示で動いていますので、、ドクターにお尋ねください」
これも、全くの正論。たぶん、そうだろうなあーという回答でした。

 

 

 

 

そして 整形外科の診察へ。
手術の件などこまごまとした説明があって担当のK・Drから「平井さん、聞きたいこと、気になる点はありますか?」と促されました。
そうだ、このドクターに訊いてみようと、朝 採血室での顛末を話し「明日もやらなくていいようにできないものでしょうか、、?」と訴えてみました。

 

 わたしの話を聞き終わるや否や「今から、僕が採血室に訊いてみましょう」とご自分の携帯を手にしたのです。この行動の速さには、こちらがびっくり。

 

「僕の患者さんだけど、、、」と的確に採血室のスタッフに尋ね、指示を出してくれました。
「ただね、明日の採血はぼくではなく他の科のドクターの指示ですから、それを僕が取り消すことはできません。明日は採血室に行かずに、直接乳腺科に行き、事情を平井さんご自身でドクターに話してくださいね」と言われました。
このドクターのいうこともまさに正論です。「わかりました、先生のご迷惑になる対応はしませんから」と私は答えました。そして、本当に心からほっとして帰途につきました。

 

 

 

 

<次の日、5月10日は> 関門を突破してーー さすが科長!!

覚悟はしていたものの、乳腺科の診察を受けるまでにいくつか?(2つ3つ)の関門がありました。まず 受付で「先に採血をしてきてください。それから診察の予約をとります」という対応です。「採血は昨日すませていますので、今日はやりません。この件は直接わたしから先生へお話しますから」と言っても、すんなりとはいきません。


「なぜですか? 誰がOKしたのですか?」など、もちろん悪気はないのですが、事務職として、勝手に?患者が枠を逸脱している!?ことは許さない!!という態度です。
 なんとか、それも突破して診察を待っていると、今度は「平井さーん、まだ採血してませんね、、」と看護師さんがチェックにきました。この人にも、粘り強く事情を話して了解してもらいました。「そうですか。それでは事情をキチンと平井さんから先生へ説明してくださいね」とキツク念押しされました。

 

 

 

そして、診察室に入ったら「平井さん、担当医のN・Drは 昨日出産されましたよ、代わってわたしが 診ます」とT・科長が話かけてきました。
そうか、N・Drは出産でお休みだったのか、−ということは私の手紙も見ていないのだ、だから返事がなかったのかーとこの時初めて合点がいきました。同時に、あの手紙はどうなったのかしら?―― と。

 

 乳がんを発病してちょうど3年が経過しました。「検査の数値的には全く問題ないですね。次も半年後くらいに予約をとっておきましょうか?」とニコニコしてT・科長が問いかけました。
そこで、わたしは ちょっと勇気を出して先生に訊いてみたのです。
「実は さっきお話したように採血が2日続いていたので、昨日のドクターにお願いして1回で済ませていただきました。こういうことを患者が病院へお願いするのは、ご迷惑ではないですか?」
もちろん、私の本音は違います。「迷惑です、困ります」というはずもない、という確信があったから、口にできた質問ではありました。この瞬間、ここでダメ押しをしておきたい、という意識が強く働いたのですね。

 

T・科長の答えはこうでした。

 

「とんでもないですよ、どうぞ遠慮しないでなんでもおっしゃってください、患者さんのための病院ですから」

 

「そうですか、それを伺って安心しました。たったこれだけのことでも、ものすごくプレッシャーがあって、お願するのに勇気がいりましたから」と私は素直に答えました。

わたしは内心、やった!!と心の中で叫んで診察室を後にしました。

 

 

 

 

<エピローグ> 勇気を出して やってみよう

わたしの専門分野のアサーション(率直な自己表現)では<率直に頼んでみよう>という項目があります。
まずは状況・事実を説明する。次にどうしてほしいかを言う。そのときに、自分の気持ち(嬉しい・助かる・つらい・怖い)を率直に伝えることが重要であるーと話します。
今回の行為はまさにこのアサーションを体現したんだなあ、と実は今になって思っています。

 やっぱり病院という組織の中ではドクターがトップというヒエラルヒーがあるのだなあ、と身をもって実感した出来事でした。もちろん組織のリーダーであるT・科長は素晴らしい先生です。しかし、それ以上にこちらの思惑を軽々と超えて対応をしてくれたK・Drにとても好感をもちました。「こういう患者の声に耳を傾け、即応してくれるドクターがいる」そう思っただけで、なんだか勇気が湧いてきたのです。

 

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 アサーションの講義をしているとき、参加者から「もちろん解決したいとは思っているのですが、なかなかハードルが高くて、、」という声を聴きます。
その時「―― うーん、そうですね。でも もう一歩踏み込んで、あなた自身が本当にその問題を解決したかどうか自分に問いかけてみてください。まあ、いいかーと思うならそれはそれでよし。やっぱりなんとかしたい解決したいと思っているなら、勇気を出してやってみませんか」と話します。

今回は私自身が自分に何度も何度も問いかけて「やっぱり <ダメ元>になってもいいから、頼んでみよう」と決めた結果だったのです。たぶん、何も働きかけをしなかったなら、もっと後悔していたに違いありませんから。

 

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