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ざっくばらん ゆき子のおしゃべりコーナー
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2019年11月1日

3.あるセミナーに参加して  心に突き刺さったこと


 テーマは<おひとり死の現実と課題>

 

<おひとりさまの死にたちあって、、、 おひとり死の現実と課題>というセミナーに参加した。実際にある女性の最後にたちあったノンフィクション作家・松原恂子さんの生々しいレポートだった。

実はこの亡くなった女性(Aさん)、そしてこの女性を最後の3年ほどお世話した女性(Bさん)には、会ったことがある。お二人共 SSSネットワーク(松原恂子さん主催の女性の集まり)の会員で、パーティの時にBさんからAさんのことを紹介された。Bさんから事前に「こういう人が私に近づいてきて、、、」と聞いていたのだった。

この時の印象は強烈だ。

AさんはBさんの腕をしっかりと掴んで、「この人に、わたしは最後を看取ってもらうの」と大きな明るい声で言った。そういわれたときのBさんの表情が歪んでいたのをはっきりと覚えている。

 

 

Bさんはとても心優しい人だ。たぶん、SSSネットワークの何かの会合でAさんと出会い、ご近所だったこともあって言葉を交わすようになったようだ。そして、彼女の職業がケア・マネージャーだったことも 大きな意味があったのかもしれない。

 其の後何度かBさんと会うたびに相談とも愚痴ともつかない話を私はきかされていた。

「すい臓がんのAさんとどう付き合ったらいいか? ちょっと困惑しています。本人はすごく元気で、死ぬまでに悔いを残さないようにと海外旅行へ行きまくっているんですよ。娘さんもいるんだけど、絶縁状態ということですしー」と。

 

やがて、Bさんとは会う機会がなく、2年ほど時間が流れた。

そして、今年初め、Aさんはガンの術後4年目で急変して、自宅から病院へ搬送されたその日に亡くなった。

その最後の場面に SSSネットワークの主催者・松原さんが関わっていた。その時の話をセミナーで伺った。

 

  • 最初Aさんから電話で相談があったので、彼女の自宅を訪ねた。しかし、、オートロックで入ることができなかった

  • 中に入ったとき、お部屋はまるで ゴミ屋敷状態だった

  • 最後には現金が必要だった。が もはや、本人はキャッシュカードの番号を言えないほど 衰弱していた

  • 行政書士、ヘルパーさん、ケア・マネージャー、遠い親戚の方など、、多くの人が一堂に会しても、誰もイニシアチブをとらない、とれない 混乱状態だった

 

 

 

 

さて、あのBさんはどうしたのだろう?最後の場面には、、もういなかったのだろうか? 気になったが、本当のところ、この辺の事情は不明だ。
いづれにしても、<Bさんは、Aさんの件で大変なダメージを受けて このセミナーには参加できない>ということだった。

 

結果 Aさんの納骨も無事終わったのだが、彼女は何も文書に残していない(遺言書も書いていない)ことがわかった。そして、最終的には、本人が「絶縁状態です」と言っていた娘さんへすべて委ねられたということだ。松原さんによれば「絶縁状態で連絡をとらないでほしい」と言っていた本人が、娘の名前と電話番号を残していたそうだ。これをどう解釈したらいいのか、、、。Aさんの心の奥では、実の娘への期待があったのだろうか。

 

 

 

わたしの心に突き刺さったこと。

 

●なぜ、Aさんは遺言書を書かなかったのだろう? 
●生きているうちに旅行をーというエネルギー・時間があったなら、後始末の準備をどうしてしなかったのだろうか?
●Bさんへの御礼・配慮・心使いは どういう形で 表していたんだろうか?

●Bさんは、Aさんとの距離を どう保っていたのだろうか? 
●Bさんはできること・できないことを、クリアにAさんへ伝えていたんだろうか?
「何をどこまで、、」というコミュニケーションが2人の間でなされていたのだろうか?

まさにアサーション(率直な自己表現)でいう「きっぱりと断る」ことの難しさを Bさんは体験していたのではないかーと思った。

 

 

 

 

このセミナーの後半は参加者の感想交流となった。

これも 非常に興味深かった。ほとんどが シングル女性、みなさんそれなりに<準備>をしているようだ。さまざまな意見が出された。

  • 遺言信託を契約した
  • 遺言書を作成した
  • ○○システムなど、、病気になったときのケアから看取りまで面倒をみてくれるサービスについて検討中
  • 今日を契機に地元の地域包括センターにコンタクトしてみよう

ただ、それらを聞きながら、わたしの心の中には、なぜか 冷たい風が吹いていた。誰一人、周辺の方々、友人との関係を深めるーという言葉を言わない。そういう人が周りにいないのか?反対にAさんとBさんというような関係に陥らないように気をつけているということなのか?

 まだ「当分は死なない、死は身近ではない」というせいなのかー ちょっと不思議な感覚を覚えたのだった。

 死を意識したら、もっと具体的に言えば「ガンになったら」、生きることを真剣にとらえるようになるといわれる。これは全くその通りと思う。生きることを真剣にとらえるとはーどういうことをいうのか。これも一人ひとり違う、それぞれであろう。美味しいものを食べたい、旅に行きたい、映画を見たい、本も読みたい、、etc.

 わたし自身は、今もこれからも 自分以外の他者と誠実に率直に、つきあっていくことの大切さを強く意識することになった。ーこれは 私が<生きることを真剣にとらえた>結果に他ならない。

 


 




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