2022年3月1日
3.<紹介します・私の友人>
― その19 大原 延恵さん 2
令和の大学生についての一考察
~キャリアコンサルタントのつぶやき
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大原 延恵
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〜もくじ〜
【大学生の数は?】
【デジタル化は進んでいるが、、、】
【卒業後のキャリア】
【大学生と接していて思うこと】
現在、私は大学というフィールドで2つ仕事を担当しています。2つの大学でキャリアコンサルタントを、別の大学ではゼミを持ち、2-4年まで担当して卒業論文まで指導しています。
そんな私が、令和の大学生について、気づいたことを書いてみました。したがって、あくまで私の身の回りの大学生についての一考察です。
さて、これをお読みになっているあなたは現代の大学生にどのようなイメージを持っていますか?
【大学生の数は?】
令和3年度文部科学省の発表によると、大学全体の在学生数は、291万8千人、うち学部学生は、262万6千人で、過去最多だそう。学部学生に占める女子学生の割合は、45.6%で過去最高となりました。
進学率(18歳人口)でみると、1962年:10%、2000年:39.7%、2009年:50.2%でした。そして、2020年度の大学進学率は、54.4% これも過去最高となりました。
専門学校、短大などへの進学を含めると、高校卒業後、8割以上の学生が、進学して高等教育を受けていることになります。新型コロナウィルスの影響で、減っていますが、2020年5月現在で約13万5千人の留学生が日本の大学で学んでいます。
【デジタル化は進んでいるが、、、】
1)筆記用具、テキスト持参不要
リモート授業が増えたせいもあるのか、パソコン、タブレット端末、スマートフォンを使わない学生はほとんどいません。私が授業を担当しているA大学は、1年生、2年生にタブレット端末の配布をしていますので、全員持っています。
B大学では、授業が始まると、かなりの確率で、パソコンを開きます。A大学は、スマートフォンを開く学生が多いです。
A大学で使用するテキストは、平井ゆき子著の「ビジネスコミュニケーション」です。昨年まで、学生に購入してもらっていましたが、リモート授業になったため、自分で学内サイトにアクセスして、デジタルでみてもらう方式に変更しました。
このやり方は対面授業になっても、続けています。授業中、私の話を聞きつつ、スマホ画面をみることになります。授業終わりのコメントシートも、スマホ入力にしたので、紙も筆記用具も使用しなくてもかまいません。そのためか、筆記用具を持たずに学校にくる学生が多くなって、紙に何かを書いて提出してもらおうとすると、教員である!!私がペンを用意することになります。
2)出席管理と授業中のやり取り
出欠は厳しく管理されていて、欠席が多いと、どんなに試験ができても、単位は出ません。A大学は、学生証を教室のあるポイントにかざして、出席となります。遅刻もはっきり記録されます。図書館に入館するにも学生証が必要なので、学生証は必須の持ち物です。さらに、座席についたら、座席の番号を記録して報告するという、新型コロナ感染拡大防止に務める形式になりました。
B大学は、座席のQRコードを読み込んで、出席&座席の記録となります。パソコンやスマホ上で質問を入力するとリアルタイムで教員のところに、データが飛びます。どの席に座っている誰からの質問かわかる仕組みです。それをみて教員は、その場で、回答することができます。大教室では、手をあげて質問するより、質問のハードルが下がっているようで、気軽に質問してくれます。
その流れで、リモート授業中に、チャットで、「今、よく聞こえませんでした」などと、書き込みもしてもらい、活発なやり取りが、対面とは異なる形でできるようになりました。
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アクリル板設置&マスク着用での授業風景
ゲスト講師は友人・人材コンサルタントの西村孔江さん、
テーマは「学生にも必要な労働法の基礎知識」 |
3)コミュニケーションは さまざま
デジタルを便利に使っている功罪と言えるのでしょうか。学生は、文字を書かない、メールを書かないので、そのあたりのいわゆる常識が育っていません。
自然と育つわけではありませんから、教育するしかありません。学生からのタイトルなし、名前なしのメールには、丁寧に返信しています。チャットで「今日、授業ありますか?」と気軽に問い合わせがあったりします。
リモート授業のコミュニケーションは、「こんにちは。見えていますか?聞こえていますか?」の挨拶から始まります。そして、名前をお互いに確認します。対面授業では、私は名乗りますが、学生は、座席に座っている状態ですので、コミュニケーションの取り方が変わりました。授業途中に呼び掛けて返事がないと、「〇〇さん、顔を出してください」と声をかけることになります。後から、「寝ていました」とチャットが来ることがあります。
リアルタイムのリモート授業で、顔を出すか、出さないかも、問題になります。家族がリモートワーク中の学生は、風呂場から授業に参加していました。背景がタイルだったので、わかりました。
毎年得意なコミュニケーションの種類を授業で取り上げていますが、今年<電話が最下位>になりました。誰からかかってきているかわからない電話には出ない、というのが学生の言い分でした。そう言いながら、いきなりLINE電話(ビデオ通話)をかけてくる学生もいるのです。
4)ノート、メモをとることは?
授業中にメモをしっかり取る学生もいますが、スマホで写真撮影というのが多いです。特に、課題を出した時、紙でも配布して、ネット上でいつでも確認できるようにするのですが、それよりも、写真で記録しています。締め切りを忘れる学生は、課題を映した写真をスマホの待ち受け画面にしていました。
5)卒業論文 というけれど
参考文献、参考論文は、ネット上で調べていて、公開されている論文を中心に調べているようです。図書館利用が制限されなくなっても、その傾向は続きました。手書きではないので、そのままコピーすることもできるようになり、お手軽なのかもしれません。出典があきらかであれば、論文への引用可能です。
ところが、大学発行の論文集などではなく、ネットニュースや個人のホームページからひろってきたものは、後日アクセスすると、削除されていることがあり、大混乱になることもあります。著者や出典元がはっきりしないものは、引用不可にしているのですが、それでも、被害?はあとを絶ちません。
多様な意見を知るにはよいのですが、責任をもって発信している情報をしっかり拾うのは、やはり訓練が必要と感じています。デマやフェイクニュースに騙されないように、自分の頭で考えたり、現場を見に行ったり、体験したりすることも大事にしてもらいたいです。
【卒業後のキャリア】
やりたいことがはっきりしている学生は、卒業後、組織に入らずに、起業するためにアルバイトをするという進路を選ぶこともあります。現代の若者は有名企業、大企業志向だと言われることもありますが、私が関わる大学生は、必ずしもそうではありません。ユーチューバー、アイドル、eスポーツ選手などとして活躍している大学生もいます。
ゼミを担当するA大学で、起業についての講義をゲストにお願いしました。その際、「思い浮かぶ起業家は?」の問いかけがありました。私たちが予想していたのは、スティーブ・ジョブズ、マークザッカーバーグ、イーロン・マスク、孫正義、前澤友作でした。一方、学生から名前が挙がったのは、渋沢栄一(大河ドラマの放映中でした)、松下幸之助もありました。
なぜか?すぐにスマホで検索したからではないかと推測されます。それも、大学生の情報リテラシーです。一番人気(全グループが名前を挙げました)は前澤友作でした。
やりたいこと、なりたいものがはっきりしている学生は、大学入学時に、学習目標もはっきりしていて、就職活動も早めに動いています。
将来のことを先送りしている学生は、入学後二極化します。やりたいことが見つからないまま3年生になると、迷走する傾向があります。ここで、うまく周りに働きかけることができたら、進んでみたい道をみつけて1歩踏み出せるようです。ここでも 正に学生自身のコミュニケーション力が試されます。
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一番人気だった前澤友作さん(2021/12/12のヤフーニュースより) |
【大学生と接していて思うこと】
自分の常識が必ずしも、今の大学生の常識ではないのだということが、常に気づかされます。自分自身の思い込みを捨ててなぜだろう?と考えて、そして大学生本人に聞いてみることにしています。
夏休みの宿題の提出が遅れている学生が、提出日欄に9月30日などと、こちらが指定した期限よりも遅い日付を書いてきます。さらに、内容も当初の提出日以降でないと書けない内容を書いてきたりすると、どっと脱力します。
勉強は好きじゃないし、大学もいやだけれど、卒業はしたいから単位は欲しいです。と、はっきり言う学生もいます。
ホワイトボードに、私が間違った字を書くと「違うよ~」と叫んでくれますし、下手な字を書くと「読めないじゃん」と言われます。
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学位記授与式の日のゼミ学生とのショット |
高校卒業後、半分の学生が大学に進学する時代です。大学生であることが特別なことではない状況です。選択科目も多いので、自身が望まないまま進学してきてしまうと、目標を見失って、退学してしまう学生も多いようです。学費をアルバイトで稼いでねん出したり、借金したり(奨学金)しているのに、自ら学ぶ姿勢がないと、迷走してしまいます。
私自身は大学業界に転職する前から、大学生との関りはずっとありますが、ここ5年ほどで特に学生を取り巻く状況が激変した印象があります。
情報収集はSNSのタイムラインに流れてくるものが中心で、手の先に辞書(スマホ)があって、すぐに調べられる状況です。得意な分野には、ものすごく詳しく、興味のないことの無知っぷりとの落差が激しく、こちらが戸惑います。私自身が学生との関り方にも工夫が必要だと感じています。
学生は、私の知らないことをたくさん教えてくれる私の先生たちでもあります。私自身も大学生と、楽しく一緒に成長しているところです。
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