 

2025年5月1日
2.飛行機 と 自己主張
< 乗る前にー >
何年ぶりだったろうか?この前、いつ飛行機に乗ったか、覚えていない。コロナ禍のときはもちろん海外へは行かなかった。先日、短い北陸への国内旅行に飛行機で行った。
チェックインの時に、荷物を検査台へ置いて例の身体検査のゲート!?をくぐった。ビーツ という音がした。そうだ、すっかりこの感覚を忘れていた。
まず右、そして左の膝を手術して人工関節が入っているのだった。手術直後はドクターに書いてもらった証明書とレントゲン写真を持ち歩いて、すぐそれを取り出せるようにしていたのに。「靴を脱いでもらって」と係員同士が声をかけあって、わたしを何度も検査する。「アノー、わたし 膝の関節を手術していますので、そのせいだと思います」 今更だが、そう 伝えた。
もっと早く、ちゃんと云うべきだったのに。自分の頭がチャンと回転していない証拠だ。帰りの飛行場では、すぐにゲートをくぐる前に自己申告して、スムーズだった。
< 乗ってからー >
短い飛行時間だったが、飲み物のサービスがあった。「お水・お茶・コーラですが、、」と選択を聞かれた。
――そして、其の時 私はもう50年も前の出来事を思い出していた。1970年代の半ば、まだ日本では男女雇用均等法以前のこと。同じような雇用機会均等法がアメリカで施行されたので、その現状を視察する研修旅行に行った。わたしはメーカーから転職して、小さなコンサルタント会社に転職したばかりの事だった。
まだ20代半ばのヒヨコだった。
サンフランシスコのカルフォルニア・ファースト・バンクに視察にいったとき、コーヒーブレークの時間がきた。ツアーメンバーは20数名、そこへ銀行のスタッフが大きなワゴンをゴロゴロ引いて登場した。そして、メンバーのひとり一人に「あなたは何がいいですか?」と訊いて、飲み物を提供し始めた。ワゴンにはコーヒー・紅茶・コーラ・オレンジジュース etc . etc .
その時、私は「ひとり一人に出すより、コーヒーならコーヒーを一斉に出してくれていいのになあ。手間も省けるし、時間の節約にもなるし、、。なんあだか、こちらの人に申し訳ない」という気持ちだった。それを、そっとそばにいた先輩に言ったら、次のようにピシャと言われたのだった。「この国ではね、みんな同じ・一緒は通用しないのよ。一人一人が自分の好みがある、それに答えるのがサービスだ、という考え方ね。それと自分の意見がない人はダメ、どんな意見でも自分の意見をもって表明することが大切なのよ」と。
ついつい、わざわざひとり一人に希望を訊いて飲物をサービスするなんてーーと考えていた。私は、「ここでは みんな同じで一緒でいいーはアメリカでは通用しない」ということを ハッキリと思い知らされたのだった。
自己主張 といったら オーバーだろうか? 否 自己申告というには あまりにも 狭い。必要な時には キチンと自分の意見を言う。そういう訓練をやはり、わたし達はあまりにもしてこなかったなあーと 今さらながら気づかされた。
久しぶりに飛行機で旅をして、忘れていたあの頃のことー を思い出していた。
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