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8月7日

外交敗北 重村智計 講談社

面白かった。
もちろんこれは、この人が知りうるところの真実だと思う。
そこには著者なりの解釈が入る。
だけどそれでも、外交における、何か普遍的なものを読み取ることが
できるから面白い。もちろんその普遍的なもの、というのも私にとって
の、だけど。

アメリカ:肝の据わったヤクザ
北朝鮮:論理のないチンピラ
日本:雰囲気に流されやすい市民

って感じかなあ。

英雄の哲学 矢沢永吉×イチロー ぴあ

永ちゃんの音楽は聞いたことがないけれど、本は好き。というわけで、
即買い。だけども予想通り(テレビの番組の書籍化)内容が薄い。
本にしては。
映像で見れば本人たちの表情もついてくるからまた違った見方ができる
んだろうけど。

一流ゆえに世間とどう折り合うか、が難しい。
イチローは、自分を見せない、と意地を張っていた時期を経て、今はイ
チローと鈴木一朗(素の本人)を使い分けることでリラックスできるよ
うになった、と言えば、永ちゃんはそういう状況を経て、今は一生矢沢
永吉を演じ切るぞ、と思えるらしい。
(うーん。ちょっと私の解釈が入っているような気もする)

その話を大変謙虚にするところが、永ちゃんの素敵なところ。

逃げ道 フランソワーズ・サガン 新潮文庫

サガンの小説でまだ読んでいないものがあったんだ。
と、思って喜んで手に取ったんだけど、私の好きなサガンではなかった
かな。

書評を書く(仕事として)ならば、「極上の娯楽小説」と書いてしまう
のが一番逃げだろうと思う。
極上の娯楽小説と言えなくもないし、それが一番わかりやすい表現だと
は思うけれど、つまり、何かを得たいと思って読む本ではないというこ
とだ。

ためらいの倫理学 内田 樹 角川文庫

全部は読んでいない。
でもたぶん全部をきっちり読まないと思うので、とりあえず感想を。

「母親(あるいは妻、あるいは娘)である前に一人の女でありたい」
「集団の歯車であるより前に一人の人間でありたい」というフレーズ
はフェミニズムの基幹的主張である。これは要するに社会を解体し、
文明を捨てて野蛮に還るということである。

だよね。と思った。
一人の女として、あるいは一人の人間として存在することはとても大
切なことだとは思う。しかし、一人では生きられない。
恋愛をするにも相手が必要だし、仕事をするなら客が必要だ。
そこで相手にあわせることを「自分を殺す」ととらえるようでは、こ
の文明社会で生き残っていけない。
それは迎合する、とは違う。集団の歯車にも意思はある。

社会の中で生きていくための知恵としてではなく、それは生きること
そのものだと思う。たくさんの人の考えに触れながら、思い通りにな
らない状況の中で、自分を生かすこと。

雅子ちゃん、結婚して10年以上経って、いまだに現実と折り合えない
って、わたしはどうかと思うよ。一生「療養」するつもり? それが
あなたの望んだ人生?

あとがきは、高橋源一郎。

もしこの本が、もっとずっと前に存在し、そしてそれを読んでいたと
したら、わたしの人生はたぶんいまとはずいぶん違ったものになって
いただろう。結婚の回数を、少なくともあと二回は減らすことができ
たに違いない。

らしい。そうですか、そうですか。

骨盤教室 寺門琢己 幻冬舎

下腹部の乱れが気になるお年頃。
それは、骨盤が開きすぎているからだ! そうだそうだ、胃下垂だし!
と、この説を支持したわけだけど、つまり骨盤が開くことそのものが、
自然の摂理であって、毎日体操をして、骨盤がうまく閉じるようにがん
ばってもとても追いつかない・・・と思う。毎日体操しなかったけど。

料理通信  7月号 料理通信社

いろいろあって、創刊に至った雑誌。
心情的には、応援していた・・・んだけど、定期購読を申し込む気には
なれなかった。やはりまずはお手並み拝見というところ。

創刊号だから、編集部が一番訴えたいものがくるんだと思う。
で、これ。
「ソワニエをめざせ!」

ソワニエって最上級顧客ってことで、ううむ、なんだかなあ。
おいしいものを食べたければ、料理人と仲良くしろと言いだしたのは、
マスヒロさんだったっけ? 
私は何が何でも一番美味しいものが食べたい、とは思わない。
だからグルメではないのだろう。
ソワニエならいい席に通してもらえる?
でもさ、普通に予約して店に入り、普通に席に座ってにこにことメニュ
ーを眺めてオーダーすればそれでいいと思う。おいしければそのままに
こにこしていられるし、まずいと呆然とするかも。でもただそれだけの
ことじゃん。
店の人にどうやれば好かれるのか、を客が研究する必要がどこにあるん
だろう?
店側にとって「ありがたい客」はいると思う。
時間に遅れない。残さない。丁寧に感想を述べる。ケチらない。
でも、媚びる必要はない。
この雑誌は、これを読まなくては、まともに客としてふるまえない読者
を対象としているの? 

たとえば古書店の主人が、態度が横柄な客に「○○という本はあります
か?」とたずねられた時、それが自分がすごく大事にしている本だとし
たら、どうするか。(こんな客には売りたくない)と考えて売らない権
利も店主にはある。
それが人対人の面白さだと思う。レストランもそうだろう。
ソワニエならば、シェフが他の人に作らせずに必ず自分の手で作ってく
れる、というけれど、それは2度3度通ううちに店との信頼関係ができ
あがってくれば自ずとそうなる。
ソワニエは目指すものじゃない。
店と人とのいい関係の中で、自然と行き着くものだと思う。

「好かれる上司になる!」という特集を、実際に好かれている上司は、
読まない。「デキる女の時間管理術」という特集を、できる女は必要と
しない。そういうこと。

 

7月17日

ライブドア監査人の告白 田中慎一 ダイヤモンド社

ライフワークのライブドア関連。
って、ライフワークなんだっけ。
でも事件前、彼のブログを愛読していたので、なんとなく親近感はあ
る。でもなんというか、この本に関しては、この人若いな〜という印
象。「なぜ粉飾を止められなかったのか」というテーマは語るほどのも
のではない。だって、普通に考えて粉飾は止められないと思う。そこに
監査人制度の問題点があるのだろうけれど(ギャラを支払うクライアン
トの悪さをどうやって指摘できるのか)、監査人制度が変わらない限
り、彼がどんなに正義感を持っていてもどうしようもない。逮捕されな
かったのは、それは彼の努力(粉飾をしないよう指導した)を買っての
ことだとは思う。でもここで語って欲しいのは、彼がどんな対応をした
かということではなく、ライブドアがどんな経過をたどって、粉飾に手
を染めたということ。どういう意図で、誰が発案して、どういう経過で
粉飾が完成していったのか。
彼の個人的な葛藤には、興味ない。それはブログのネタであって、出版
につなげるには厳しいと思うな。って出版してるけど。

カリスマはいらない。 和田勉 日経BP社

ライブドア関連に続き、今度は社長本。最近の読書傾向は実になまぐさ
い。
イケメン社長のUSEN、宇野さんは、周りに聞いても「好み」という女性
が多い。わたしも社長衆の中では一番好き。
しかしながらこの本からは、宇野さんの力量はよくわからなかった。で
もそれはきっと著者の力量の不足ではなく、宇野さんという人がそうい
う人なんだろうな。

社長ブログを愛読しているくせに、社長ブログについては否定的な見解
を持つわたし。ある社長のブログには、若い男女からの愛に溢れたコメ
ントが多数つく。でもそれはすごく狭い世界の話でなんとなくすごく違
和感がある。
某社長が、福井総裁がなぜいけないんだ。金儲けがそんなに悪いのか、
と書いていて、ここの会社の株だけは買うのをやめよう、と思った。
社長という役職についている人がそれじゃあなあ。
金儲けがいけないのではなく、あの地位にいる人がファンドに手を出す
のが自覚不足なんだよ。そんなことすらわからない(察することができ
ない)って、致命的だと思う。
そして何かと話題のヒルズ族派手社長のブログは短期間で終了。もう
1人の少しばかり有名な若手社長のブログも短期間で終了。
何かヤバイことでもあったのかしらん。

しかしながら宇野さんのブログは、終了することなく数ヶ月以上放置さ
れたまま。即断即決な私からは信じられないけれど、そういうのらりく
らりした感じは、なんとなく好感がもてる。だって社長業の中で、ブロ
グってのは、やはりたかがブログだから。しゃかりきになる必要なんて
ないし、そこで一般読者の理解を獲得するよりも、たぶんもっと重要な
ことがある。

もしも、私があなただったら 白石一文 光文社

彼の作品は、ずっと追いかけているように思うけれども、これはどうな
んでしょうね。
恋愛の過程で「もしも、私があなただったら」と考えるのは、どうな
の? 必要なこと? 
他人の気持ちなんて、わからない。相手がどうして欲しいかなんて、わ
からない。それはたとえば、夜中に電話をしたら迷惑だろう、とか、疲
れているみたいだから、近場でのんびりデートしようとか、そういう想
像は、する。想像した上で、自分の行動を決める。だけども、人生の重
大な選択の場面で、相手の立場から物事を考えるのはとても難しい。も
しも私があなただったら、私を連れて行ったはず。なんてそんなのね。
心が通い合うという状態は、ある日突然完成するものではないと思う。
完成したとしてもそれは簡単に壊れる。
選択というのはもっと複雑だし、正しい選択なんてないと思う。あった
としてもできないと思う。

虹の彼方 小池真理子 毎日新聞社

小池先生、素敵。多作ってほんと偉い。
ぐいぐいと読ませる作品ではある。確かな読み応え。だけども、こんな
馬鹿なことをしてしまうのが恋なのかしら。
だとしたら、私は一生恋なんてできない。
冷めた恋。ほんのりと人を好きになって、なんとなく満たされたい。

愛の流刑地 渡辺淳一 幻冬舎

友人のライターから少し前にコメントを求められたのだけれど、未読。
というわけで、コメントには間に合わなかったけれども読んでみること
にした。
なんというか、素晴らしいなと思った。書く才能があるってね。
男性の妄想ワールドをここまで素晴らしく完結させることができるなん
て本当に幸せなことだ。

先日雑誌で、林真理子と渡辺淳一の対談を読んだ。双方新刊が出たばか
りなのだけど、対談では完全に林真理子が聞き役で、この作品をほめち
ぎる。
雑誌側がそういう構成にしただけなのかもしれないけれど、もし現場で
もこの通りだとしたら、女性の気持ちがわかる人では決してないという
ことだと思う。彼は誉められて喜んでいるだけ。
林さんに対して、興味を持つ。話しかける。それが人間関係のマナーだ
と思う。
「自分大好き」でかまわないけど、さも女のことがわかっている、とい
う態度がなんとなくいや。わかってへん、っちゅうねん。

中学受験バイブル 荘司雅彦 ライブドアパブリッシング

さっくりこういう本にも目を通す。
でもこれは今の時期に読んでもどうなの。
早いスタートが肝心というけれど、それはつまり、こういうこと。
幼い頃から勉強する習慣をつけましょう。
詰め込む必要はないから、ただしっかりそれだけをやっておくべきだっ
たんだな・・・下の子はそうしよう!

世田谷一家殺害事件  斎藤寅 草思社

一気に読んだ。怖い。すごく怖い。そういう思いで殺人を犯すならなん
でもありだ。

 

5月14日

中学受験で子供と遊ぼう 高橋秀樹+牧島博子 文春文庫

学力が伸びる塾の活かし方子供の活かし方

中学受験 はじめの一歩から

中学受験 偏差値40からの大逆転合格法

週末一気に4冊読んだ。
一般的な考え方からすると、今からではとても間に合わないそうだ。
そうなのかな、とは思うけれど、勉強するのは私じゃなくて息子。
私なら、やろうと決めたら一直線。何が何でも間に合わせると思うけれ
ど、息子はなあ・・・。

でももちろん本には、「間に合わない」とは書いていない。
だけど、立て続けに見学した進学塾の先生たちの顔色を見ていれば、そ
れがけっこう厳しいことだとわかる。
どこの塾も積極的には受け入れてくれない。

息子がなぜかいきなり「受験しよっかなー」と言い出し、あらあららら
らと焦ったわたし。これまで母親らしいことをまったくしてこなかった
引け目もあり、少しは応援してやろうかと。
何が何でも私立、と思うわけではないけれど、目標に向かって努力する
ということを体験してほしいと思う。

秋の森の奇跡 林真理子 小学館

すっかり恋愛小説づいている。
別に、恋がしたいわけじゃないんだけど、ジャンルとしては一番好き。

そして、林真理子。
彼女の小説には、よくレストラン経営者というのが出てくる。
これは彼女が実生活でよく出会うからなのかしら。
エネルギッシュで女性にもマメ。
そして主人公は必ず美人。
加えて、からだもいい、ということを必ず男性に言わせる。
あなたは美人だ。でもからだはもっと素晴らしい、とかなんとか。
うーん。うーん。うーん。

ベッドの中での男の人の幻想ってあると思う。
でもまた女の幻想ってのもあるんだろうなと思う。
40歳を過ぎた女性が、ベッドの中であなたのからだは最高だと言われた
ら、それはもう最高の気分だろう。
でもそれは甘いよ。
からだの品質、ということにこだわるところがいかにも林真理子だなあ
と思う。でも実際は、そうじゃないところになまめかしさがある、と思
う。

この小説は40代女性をターゲットにした女性誌で連載していたもの。
不倫とか浮気じゃなくて、恋愛がしたい、とつぶやく主人公。
読者はうっとりしてしまうだろうけれど、不倫と浮気と恋愛にどういう
違いがあるんだろうか。

その人のことが大好きで大好きでたまらない。
それがすべて。
大好きでたまらない心との格闘が楽しいんだ。

 

 

5月6日

40 翼ふたたび 石田衣良 講談社

初・石田衣良。
40歳くらいの男性をいっぱい知っているけれど、彼らの心のうちをのぞ
いて見たことはない。でもなんとなく、主人公の吉松喜一は、自分が思
うよりも歳を取っているように感じた・・・いやしかし、客観的に考え
ればそうだよな、そんな老け具合だろうな。
わたしは、彼らのいい面とだけ付き合っているのかもな。
篠田節子の『女たちのジハード』の40男版。
ストレートないい小説。

きみの歌が聞きたい 野中柊 角川書店

夜の公園 川上弘美 中央公論

結論から言うととても好き。2冊とも。
たまたま同時に購入して、続けて読んでしまったけれど、できれば違う
タイミングで読むべきだったろうなあと思った。
あまりに似ていて、ふたつを異なる小説として味わうことができなかっ
たのがとても残念。

心が通い合わないけれど、波風を立てずに夫婦でいつづける夫婦。
年下の男の子。女友達。
静かで激しいもの。絶望の中にある希望。退屈した心に寄り添う快楽。

わたしも、うんと年下の男の子と付き合ってみるかな、とふと考えた。
そういえばある人からも言われたな。れんちゃん、これからは年下だよ
って。
しかし、年下の男の子というのは無防備すぎる。
自分が無防備でいたいわたしは、責任感のある男の人が好き。
2つの小説の彼女たちは、年下の男の子の前で、自分が自由だと思えた
んだろうか。
ただなんとなく、でも頻繁に抱き合う、恋とも呼べない関係。
心よりも体を求められるほうがきっとラクなんだろうな。それでいてな
んとなく満たされるんだろうな。
からだが満たされるという感覚がわからないでもないけれど、でも叶わ
ないからこそ憧れるのは、心が満たされる関係だ。

ソファに横になって本を読んでいたわたしに、夫が「れんちゃんは、ニ
ューヨークで何してた?」と問い掛ける。
泣いてた、と正直に答えた。
わたしは、怒りをパワーに変えるタイプだけど、哀しみは恨みにスイッ
チしないから、パワーにつながらない。
もったいないと思う。哀しんでばかりいるのは。

ライブドアとの戦いの日々 
こいつら初めからインチキだった!!
Nikaidou.com編 

そういう情緒的な暮らしの反面、お風呂でアロマオイルをたらしながら
こういう本を読む。
いやはや。
ほりえもんのことを心情的に応援していたわたし。
手のひらを返してこれを手に取ったわけではなく、どういう人なんだろ
う、という興味があって。
しかしまあやはり、というかいろいろやばいことがあったんだろうな。
お金を手にする、というのは大変なことだと思う。

ヒルズ黙示録 検証・ライブドア 大鹿靖明 朝日新聞社

というわけでこいうのも読んでみたりとか。
こちらはとても読み応えがあり、社会がよくわかる。ような気がする。
ライブドアに限らず、お金の仕組みもさまざまな人の人物像も社会の人
脈というものも。

ひとつ思ったこと。服装なんて関係ない、と言っていたほりえもんはい
つもTシャツで通したけれど、人に会うときの心構えとして、それは間
違っていたんじゃないかな。
社長として君臨する場ならいいでしょう。自分を見せるだけで。
だけど、社会で生き残っていくには、自分を見せるだけじゃだめ。人を
しっかり見る必要のある場面もいっぱいある。
上に行こうとしているならなおさらだ。
相手に心を開かせるために必要なのは、服を着替えることだったんじゃ
ないかしら。
それはとてもカンタンなことだったと思うよ。

星をつかむ料理人 吉野建・源孝志 新潮社

この本を出してから、さらなる時を経て、ようやくひとつ星を手にした
吉野さん。印象に残ったのは、「不遇のパリ時代」について。
あの時代があるから今があるとは思わない。
あの時代がなかったら、今ごろ自分はもっと上に行けたはず。
と、その時代を無駄だったと言い切っていた。

いつも思う。
なんでもかんでもきれいごとにするなよって。
江原さんのスピリチュアル論的に言えば、無駄などひとつもないらしい
から、それに従うなら、意思を強固にする期間だったのだろう。
でもわたしは、吉野さんが怒っている姿勢がすごく好き。
「いや、あれも僕にとっては必要な時間だったんです」なんて言われて
もちっとも面白くないもん。

人生なんて、反省や後悔だらけだと思う。
だって常に前を見ていれば、反省や後悔はつきもの。
後ろしか見ていないから、反省しないんだと思う。
失敗がないんじゃなくて、失敗と認めないんだと思う。

 

4月15日

顔のない裸体たち 平野啓一郎 新潮社

ある雑誌でやっている書評ページで、少しだけ出世して、大きな記事を
担当させてもらえることになった。まずは本を選ばなくては。
というわけで、平野啓一郎の新作を読んでみた。
ああしかし。
間違っても書評で紹介できる内容ではなく。

出会い系が悪いとは思わないし、セックスだけが目的の関係ってのもそ
れはそれで気楽なのかもしれないし、人それぞれに好みはあるのだろう
と思う。でもしかし。読後感がとても悪い。
初めて読んだ平野啓一郎がこれってのは、たぶんわたしの読書人生的に
間違いなのだと思う。

文藝春秋 4月号

もちろん春樹さんの文章が読みたくて。
それは、怒りと悲しみと諦めとのバランスのよい、春樹さんらしい文章
だった。

そして何気に目にとまったのが、三田誠広の文章。
どんなに飲んでもちゃんと電車に乗って家に帰る、というところにいた
く感心。私なんて、電車が動いていてもすぐにタクシー・・・しかも彼
の家より遠いのに。
しかしそれより何より、は?と思ったのが、小田急高架反対運動につい
て。それに関わることになんら異論はないけれど、小田急側の「地下化
するよりも高架のほうが安いから」という言い分が、十分な試算にもと
づいていない、と考える人が、なぜ、高架によって大切な資産の価値が
半減する、とそんなざっくりした被害状況の説明で済ませるのかしら。
高架になれば、それはもちろん多少資産価値は下がると思う。
でもそれは、線路から近ければ近いほど著しいだろうけれど、離れれば
離れるほど影響を受けない。実際一番近い人でも半分までは落ちないと
思う。
まるで「世間を知らない主婦」が書いた文章のように思えた。
男の人は主婦が意見を言うと、すぐに世間を知らない、なんて馬鹿にす
るけど、作家も変わんない。
専業主婦でも世間を知る人はいっぱいいるし、作家でも世間を知らない
人はいっぱいいる。

ひなた 吉田修一 光文社

すごく時間をかけて読んだ。
丁寧に、というわけではなく合い間合い間にちらりちらりと。
まあ普通に面白かった。
淡々としたところと物語的に盛り上がるところと、それがうまくかみあ
わさっていて。
が、しかしなぜかこの人の書いた本は、二度読む気がせず、比較的すぐ
にブックオフ行きになる運命にある。すみません。なんでかしらね。

 

3月26日

青山娼館 小池真理子 角川書店

ずいぶんと前に読んだのだけれども、わたし的には小池真理子ベスト
な作品。
性よりも愛が崇高だとは思わないし、愛のないセックスがくだらない
とも、お金の絡むセックスがいけないとも思わない。
だけどもすべてを割り切れるかといえばそうでもない。
お金をもらっているけれど、でもちょっと好きだったり、ただの好奇
心でセックスしたけれど、なんとなくあとで会いたくなったり、そう
いうことってあるとおもう。
そういう微妙な感じを描くのが小説だと思う。
小池作品のぱっきりとした感じがこれにはなくて、わたしは好きだっ
た。

だけどもひとつ、それはないだろう、と思ったのは、主人公が子ども
を母親に預けて仕事をしていたこと。
現代の働く母親が、保育園よりも、飲んだくれで男にもお金にも生活
にもだらしない実母に預けるほうが安心だと考えるのは、不自然。
そこまでの血縁信奉も、保育園に対する不信感もないと思う。
その設定は、ちょっと古い考え方だと思った。

人、旅に出る 新井敏記 講談社

『SWITCH』インタビュー傑作選だそうで、最初のヴィム・ベンダース
のインタビューはよかった。
でも、全般的にはどうも好きになれず、完読できず。
インタビューものには様々な手法があると思うけれど、わたしは物語
風のものってのが好きじゃない。
必要以上に物語を描こうとしすぎて、安っぽくなる。
アーティストに、創作上の秘密なんてないと思う。それは凡人の考え
方で、他人にない何かが、それとわかる状態で存在するわけじゃない。

凡人と天才の線引きなんてない。
素敵な人は素敵。素敵の種類は無数。
何か光るものを持っている人は存在するし、それをうまく光らせた人
が成功するのだとは思うけれど、結果(その人の実績)があるから、
その人のやることが特別に思えるだけ。
幼い頃から非凡だったとか、日常生活の中に狂気が潜んでいるだとか、
そういう切り口って本当にうさんくさい。
(新井さんの切り口がそうだと言い切るわけではない。ただ雑誌など
のインタビュー記事にありがちなうさんくささにはうんざり、なのだ)

もうちょっと別の描き方はないものかしらね。

しかし心に残ったのが、借金まみれの勝新太郎の言葉。
収入はあっても所得がない。

ううむーー。
無駄の中から何かが生まれて来るんだよ、と言ってカッコいいと思わ
れた時代は過去だということを、わたしは認識すべきだろう。

 

2月5日

誰よりも美しい妻 井上荒野 マガジンハウス

これは好き。
このどうしようもない時間の流れ方が。
読んでいる時間がとても幸せに感じられる数少ない小説だったけれ
ど、わたしがそこまで浸れるってことは、恐らくとても個人的な事
情で、誰もがそう思うわけではないんだろうなあ。

こういう男の人って、確かにいるんだろうな。
でも幸か不幸か、わたしの周りにはいない・・・というか、いても
見過ごしている?
わたしは、こういうタイプの男の人にはたぶんぜったいに惚れない。
浮気してもいいよ、束縛するのはきらいだしね、というのは、単に
理念で、現実には、浮気しなさそうな人しか好きにならないのかも
しれない。
この前、女友達に「あのね、男の人って毎晩帰ってくるからって浮
気してないとは限らないのよ。昼間だって何してるかわかったもん
じゃないわ」と教えられた。みんな苦労してるんだ。

私一人 大竹しのぶ 幻冬舎

あーわたしもそれ、買おうかと思ったんだけど、買うほどじゃないか
なと思ってやめたのよね!とある人から言われたけれど、買うほどの
ものよ、これは。

いやはや、だって素敵だもん、しのぶさん。
前に何かの記事で、瀬戸内寂聴さんが、大竹しのぶと一緒にいると楽
しすぎて、仕事をする気になれない。だから別れたんです、と野田さ
んが言っていた、と語っていたけれどもそんな事情もわかるような気
がした。

だけどもまあ、さんまちゃんとは、合わないでしょう。それはまった
く。野田さんもまあ、付き合ってみるとつまんない男なのでしょう、
たぶん。それでまあやはり服部さんが、永遠の恋人なのでしょう。
きっとね。

それにしても、束縛するのが好きで、嫉妬深いのに、なぜか私は一緒
に暮らすといやになってしまう・・・という告白には声を出して笑っ
た。

赤塚不二夫のことを書いたのだ!! 武居俊樹 文藝春秋 

これは仕事で読んだ本。だけども、心に残ったので記録。
あんなに絶頂期にあった漫画家でも、編集者や出版社に翻弄される
んだ、ということに素直に驚く。わたしなんてこれしきで、ぶーぶー
言っているようじゃ、甘いんだな、と。
編集者のために書いている、というような言葉がどこかにあって、
それもまたそうだよね、と思った。
その先の読者を意識しなくちゃ、とは思ってもやっぱりいつも編集
者のために書いているような気分にわたしもなるから。
理不尽なことはいっぱいある。
でもそれが人生なんだなあ、としみじみした。

恋愛について、話しました。 岡本敏子×よしもとばなな
イースト・プレス

これはずいぶんと前に読んだんだけど、いつもアップする前に忘れ
てかけなかった。ま、単純につまらなかったからだと思う。
なんで、ばななちゃんはこうも説教くさくなってしまったのか。
それも自分を守るためなのか。
ゆがんでいるものは、世の中にいっぱいある。子供の教育だって、消
費のシステムだって、雇用の形態だって、とにかくゆがみはどこにで
も転がっている。でもじゃあ正しく生きることが大切なのかと言うと
どうなんだろう。
正しく生きる、と意識することは、どうなんだろう。
自分だけは、このゆがみきった世の中で、正しく生きるんだ、と決意
することはどうなんだろう。
わたしは、自分の生き方の中に正しさなんて、まったく求めていない。
だからばななちゃんの言い分にうなずけないんだな、と思った。

下流社会 三浦展 光文社新書

じつはこの人のことを、ちょっとバカにしていたというか。
すみませんです。赤の他人から、単なる感覚でバカにされることもある
ってのは、本を書く人にとっては避けられない事態なのです。
何が言いたいのかわからないじゃん、とか、中身がない文章をテクニッ
クだけで長くしようとしてない?とか、あれこれ思ったりしたことが過
去あった。
だけども、これは面白かった。批判もいろいろあるようだけど、なるほ
どな、と思える部分があって、それは単純に興味深かった。

「個性を大切に」なんて考えて、自分の生き方にこだわるのが下流。
現実と折り合いながら前に進んでいける人が上流。

ばななちゃんは、自分の生き方にこだわっていても、才能があるから、
それを貫ける。ばななちゃんの姿に憧れても才能のない人は、行きつく
場所がない。

 

1月15日

砂漠 伊坂幸太郎 実業之日本社

行きつけのヘアサロンのお兄ちゃんが、いつも熱心に読書している
(話し掛けないでねというオーラを発散しながら)わたしに、勧め
てくれたのが、伊坂幸太郎。
でもこの本は、彼の本流の作品ではないのかも。
遠い過去となった自分の学生時代について、「懐かしい」と思う気
持ちすら湧いてこないことが、面白かった。
作品は、まあふつう。

水曜の朝、午前三時 蓮見圭一 新潮社

いちいち帯にけちをつけつつも、けっこう帯に惹かれて(というか
騙されて)買うことが多いのだな。
しかしううむ。帯にあったような「涙が止まらない」状態にはなら
ない。恋愛小説って難しいよね。

まぼろしのロンリヴィル エラン・クロバンド 中田香訳 
求龍堂 

求龍堂の本は何とはなしにチェックしてしまう。
これはずうっと面白かったんだけど、オチがこれかい、という感じ。

ふらんす 80年の回想 1925-2005 白水社

大学生の頃、フランス語が好きだった。けっこう熱心に勉強したの
だけれどわたしには、語学の才能がないのだ。まったく。
好きだけど、才能がないってものは、いっぱいあって、語学はその
最たるもの。あと音楽。ピアノも手が小さい、ということを差し引
いても才能がないことは明白。
そう考えれば書くことは、まだマシだと思う。

そしてふらんす。学生の頃時おり買って読んだ。
映画も、そういえばこの頃はフランスものが好きだった。勝手にし
やがれ、とか。六本木WAVEのシネヴィヴァンも好きだった。緑
の光線とか、肉体の悪魔とか。小説もこれがまた、サガンが好きだ
ったのだ。
というような思い出がどどどっと流れ込んできて、なんとなくしみ
じみした。

80年の回想となっているけれど、実際には1925〜1979までの本誌
に掲載された記事を再編集したもの。つまりわたしは初めて読む記
事ばかり。
朝永さんのサガンについてのエッセイや、若かりし頃の吉田秀和氏
の「私の履歴書」など、なかなか面白かった。

大学卒業後、わたしの興味はイタリアに移ったのだけれど、とりあ
えずフランス語のレッスンを開始。20年ぶりの邂逅。

クリスマス・ストーリーズ 角川書店
奥田英朗、角田光代、大崎善生、島本理生、盛田隆二、蓮見圭一

基本的にアンソロジーというのを買ったことがなかったのだけれど、
男性作家(しかもおっさん)多数の、「クリスマス」ってのが、な
んとはなしに気にかかり、買ってみた。

いや、しかしな。やっぱり無理があるのでは。男性作家陣。
蓮見さんは、どうしてこんな手法にしたのかしら。よくわからない。

自殺同盟軍 鈴木剛介 角川書店

まあふつうに面白く。でもまあふつう。

執筆前夜 CW編集部編 新風舎

酒井順子さんの、書き続けるコツ、がえらいな、と思った。
締め切りを守ること、面白くないのに、まあいいやと思わないこと、
あと、毎日少しでもいいから何かを続けること、たとえば古典を読
むとか・・・だそうだ。

 

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