トップ(Home)   ダービーのトップ (Derby Home)

ダービー 115番図柄皿 (1791-95年頃)
A Derby Plate with Pattern 115 C.1791-95



 

 



 18世紀に貿易が拡大すると世界各地の植物が欧州に入ってくるようになり、英国でも大きな植物園が作られて植物学の研究が進むとともに、多くの植物誌が発刊され人気を博した。陶磁器の世界でも、そうした植物誌の挿絵を写した図柄が描かれるようになった。英国ではチェルシー(レッド・アンカー期)のいわゆる「ハンス・スローン(Hans Sloane)図柄」がその先駆けとして有名であるが、ダービーでは更に徹底して、写した植物名を裏面に書き記した皿が数多く作られた。(ダービー(D4-11)を参照。)

 そのようなダービーの植物図は、それ専用の図柄(縁模様)と合わせて皿などに描かれた。代表的な図柄は115番、197番、216番などで、本品はその115番の縁模様(金彩によるスズラン(lily of the valley)の文様)と植物図とが組み合わされた作品である。2番目の写真は、18世紀ダービーの図柄帳(パターンブック)に描かれている115番図柄である。

 本品に描かれている植物図は、William Curtisによる"The Botanical Magazine"の第3巻(1789年)に掲載されているもので、植物名はラテン語表記では'Pelargonium Acetosum. Sorrel'(ただし、皿の表記にはスペルミスあり)、英語表記では'Crane's-Bill'とされているものである。4番目と5番目の写真は、同誌の当該ページ(解説文と挿絵)である。本皿は、この挿絵をほぼそのまま写し取ったものであることが分かる。

 ダービーは1791年に"The Botanical Magazine"の1〜4巻を購入しており、115番図柄の植物図作品も1791年に制作が開始されたと考えられている。人気の図柄であったため、19世紀に入ってからも継続して描かれたが、本品に関しては金彩師ウィリアム・ロンドンの番号である「8」が記されており、1795年頃までの間に作られたものと見られる。

 なお、本品のような植物図を描いた絵付師が誰であるかについては、元絵を忠実に写したという性格上作品に個性を発揮する余地が少ないことから、絵付師を特定することは難しい。(ダービー(D5-7)及びダービー(D5-9)を参照。)


直径(D):23cm

マーク:裏面に青色で「Pelargonium Acetosum, Sorrl」及び「Crane's-Bill,」。その下に青色で「王冠、交差するバトンと点及びD」並びに「115」(図柄番号)。そのマーク右方の高台内側に青色で数字の「8」(金彩師ウィリアム・ロンドンの番号)。
Marks: 'Pelargonium Acetosum. Sorrl' and 'Crane's-Bill,' (plant's name in Latin and English), 'a crown, crossed batons, dots and D', a pattern number '115' and a gilder's number '8' (for William Longdon), all written in blue on the bottom.

参照文献/References:
- A. P. Ledger "Derby 'Botanical' Dessert Services, 1791-1811" Derby Porcelain International Society Journal II pp.79-102
- Gilbert Bradley "Derby Porcelain 1750-1798" pp.147-149 (Botanical Decoration on Porcelain) and Item 105
- John Twitchett "Derby Porcelain" Fig.233
- W.D. John "William Billingsley (1758-1828)" Coloured Illustration 14A & pp.66-67, and Illustration 42C
- John Murdoch & John Twitchett "Painters and the Derby China Works" Catalogue 37A
(2018年8月掲載)