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ダービー 植物絵皿(1815年頃)
Derby Botanical Plate Ca.1815
ダービーでは1790年代から、植物学誌の挿絵に忠実に基づく「植物絵」が描かれるようになった。ブルア期以前(すなわち1811年以前)だけでも300種類以上に及ぶ写実的な植物絵が10種類を超える縁模様と組み合わされて作られたとの研究があり、当時の人気の高さが推し量られる(ダービー(D3-21)及びダービー(D4-11)を参照)。こうした流行はブルア期に入ってからも続き、本品がそのよい一例である。花の名前は「ラナンキュラス(Ranunculus)」で、18世紀からのルールを引継ぎ、この花名が窯印とともに記されている。(文字とマークの色については、19世紀初頭までは青で記されるのが基本であったが、その後は本品のように赤が基本色となった。)皿の縁模様は、幅広の染付け青地の上に羽スクロールを中心にした金彩模様を施したものであり、アラベスク(arabesque)模様と総称される。目を引く模様ではあるが、金彩そのものはのっぺりして繊細さには若干欠ける。ブルア期ダービーで多用された模様である。
本品の花絵を描いた絵付師が誰であるかは不明である。かなりの技量を持つ絵付師であることは確かであるが、こうした植物絵は、植物学誌の挿絵を写し取った(本品の出典は確認できていないが)という性格上、絵付師の個性が出にくいという点も絵付師の特定の障害となっている。それでも、葉や茎と比べて花がバランスを失するほど大きく、質感たっぷりに描かれている点などの特徴は見られる。裏面に絵付師の番号と思われる「47」が紫色で記されているが、この番号の主は知られていない。(なお、金彩師番号は「41」(あるいは「21」)で交差バトンマークと同じ赤で記されている。41番の金彩師は不明であるが、21番であればジェイムズ・ヒル(James Hill)の番号である。)
製造年代から見てみると、マークや花の名称が丁寧に記されており1810年頃かそれ以前の作とも考えられるが、そうであれば図柄番号が記されているのが一般的であるのに本品にはそれがないこと(図柄番号は1811/12年頃まで使用されたと考えられている)、縁模様はブルア期(1811年以降)の特徴をより強く示していることなどから、ここではブルア期初期の1815年前後の作品と判断した。
それが正しいとすると、1815年頃のダービーの主要な花絵師である、ウィリアム・"クエーカー"・ペッグ(William "Quaker" Pegg)、ロバート・ブリュワ(Robert Brewer)、モーゼズ・ウェブスター(Moses Webster)、レナード・リード(Leonard Lead)などが本品の花絵を描いた可能性があるということになる。上述のような本品の特徴からすると、自由闊達な花絵で知られるウィリアム・"クエーカー"・ペッグ(コラム11を参照)の手によるものかもしれない。
直径:約22.5cm
Diameter:22.5cm (8 7/8in)
マーク:マーク:赤色で「王冠・交差するバトンに点・D」とその上に花名"Ranunculus"。赤色で金彩師番号「41(または21)」。紫で絵付師番号「47」
Mark: <Crown, CrossedBatons&Dots and D> under the flower name "Ranunculus" both painted in red. Gilder's number <41 or 21> in red. Painter's number <47> in purple.
参照文献/References:
-A. P. Ledger "Derby 'Botanical' Dessert Services, 1791-1811" Journal II, Derby Porcelain International Society
-John Twitchett "Derby Porcelain 1748-1848 An Illustrated Guide" Colour Plate51 and Colour Plate211 for examples of the botanical paintings by William "Quaker" Pegg
(2008年5月掲載)