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ダービー 2枚の319番図柄皿 (1806-11年頃)
Two Derby Plates with Pattern 319 C.1806-11







 2枚のダービーの植物図の皿。植物誌の挿絵から写されたもので、裏面に植物名が記入されている。(ダービー(D3-21)ダービー(D5-7)及びダービー(D5-9)を参照。)

 元絵はどちらも、Henry Andrewsが発行した"The Botanist's Repository"という植物誌の第2巻(1800年)に掲載(図版97及び105)されているものである。植物名は、左側の皿に描かれているものがラテン語名がVaccinum Formosumで英語名がRed-twigged Whortle-berry、そして右側の皿に描かれているものがラテン語名がVaccinum Crassifoliumで英語名がThick-leaved Whortle-berryとされている。(ただし、後者の皿には英語名の記載がない。)

 3番目と4番目の写真は、この植物誌の該当する挿絵である。縦に伸びる元絵を丸皿にうまく収まるようにアレンジしているため、一目見ただけでは同じ絵だとは感じないかもしれないが、よく見比べると写しであることが分かる。

 縁模様は青い帯と金彩であるが、ダービーのパターンブックの319番である。この319番図柄が導入されたのは1806年以降と考えられる。図柄帳(パターンブック)に、これに近い番号では、310番図柄がJoseph Torkingtonによる図柄だと記載されているが、Torkingtonが修業期を終えて正式に金彩師となったのは1806年頃だと考えられている。

 ダービーの交差バトンマークの色は、1784年に導入されて以降、基本的に暗褐色(puce)で記載されていたが、1806年頃に基本色が赤に変更された。例外は、植物図や風景図で名称も併せて記された作品で、もともとマークは青で記載されていたが、1806年以降も引き続き青で記され、赤に変更されたのは1811年頃だと考えられている。

 ダービーの植物図と組み合わされた主要な図柄(縁模様)は、115番、197番及び216番であるが、他にもいくつもあり、本品の319番もその一つである(パターンブック内の319番には'Blue border & Plants same as 216'との書き込みがある)。しかし、319番はあまり多くは描かれなかった図柄のようであり、私は他の作例を知らない。植物図絵に関するA.P. Ledgerの論文(下記参照文献)では、12種類の図柄の合計約740作品を取り上げているが、319番図柄については具体的作品数がゼロとされている。


直径(D):25.8cm

マーク:裏面に青色で「Vaccinum Formosum./Red-twigged Whortle-berry.」(左の皿)及び「Vaccinum Crassifolium.」(右の皿)。その下に青色で「王冠、交差するバトンと点及びD」並びに「319」(図柄番号)。
Marks: 'Vaccinum Formosum./Red-twigged Whortle-berry.' (left plate; plant's name in Latin/English) and 'Vaccinum Crassifolium.' (right plate; in Latin only), 'a crown, crossed batons, dots and D', a pattern number '319', all written in blue on the bottom.

参照文献/References:
- A. P. Ledger "Derby 'Botanical' Dessert Services, 1791-1811" Derby Porcelain International Society Journal II pp.79-102


(2018年9月掲載)