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ダービー(?) 壺 (1795年頃)
A Derby(?) Vase Ca.1795



 

 素焼き白磁の壺。胴体はカップ型で花綱のレリーフが取り付けられている。肩部には二匹の蛇がとぐろを巻いた形の取っ手があり、首は細長く上部で広がっている。脚も細く下部には四角い台座がある。マークはない。

 本品のような素焼き白磁の新古典調の壺は、18世紀終盤のダービーで多く作られた。白磁に花綱装飾の壺は多くの作例がある(ダービー(D2-8)及びダービー(D3-18)を参照)。蛇の装飾も同様で、壺の型番の131番はモデラーのジャン=ジャック・スペングラー(コラム11.ダービー窯「芸術家」列伝を参照。)が手掛けた壺と記録されているが、この131番の壺には蛇の取っ手が付けられている。また、同じく蛇の取っ手のある型番129番の壺の作例も知られている。スペングラーは1790年から1796年頃までダービーに在籍し、壺や人形を多く手掛けた。壺に関しては、型番123、124、126番も彼の手によるとされているが、作例は知られていない。本品がその一つである可能性もある。

 しかし一方で、本品はダービー作品でない可能性も捨てきれない。ダービー作品であるなら、窯印、型番、リペアラーのマークなどが刻み込まれていることが多い他、裏面にパッチマーク(丸い焼痕)が見られるのが一般的である。もちろん、全てのダービー作品にマークが記されているわけではないし、素焼き作品では釉薬の掛かった作品よりパッチマークが付きにくいということもあるだろう。しかし、それでもダービー作品である決定的証拠がない以上、断定はできない。

 ダービー以外の候補としては、19世紀に多くの壺(18世紀作品のリバイバルを含む。)を作ったコールポートやミントンが考えられる。また独自の素焼き白磁であるパリアンを生み出したコープランドや、旧ダービーを引き継ぐダービーのキングストリート工場も候補になるかもしれない。しかし、それらの窯の関連文献をいくつか当たって見たものの、本品につながる作例を見つけることはできなかった。



高さ(Height):36cm

マーク:なし
Marks:None

参照文献/References:
- William Bemrose"Bow, Chelsea, and Derby Porcelain" Chapter VI (List of Moulds, Models, etc, Belonging to William Duesbury in 1795)


(2017年4月掲載)