トップ(Home) ダービーのトップ (Derby Home)
ダービー ペアの花差し(1790年頃)
A Pair of Derby Flower Pots Ca.1790
逆円錐型の一対の壺である。この形は、1774年のダービー窯のロンドン店舗カタログに「ダイスカップ型のフラワーポット」として記載されている(ダービー「D3-16」参照)。ただし、本品自体の製造年代はそれよりかなり遅い。交差バトンマークが記されているので1784年以降ということになるし、図柄についても、金彩模様や薄いピンク(あるいは肌色)の地色などによる同様の図柄が導入されるのは1786年以降のことである。金彩師番号の3番(William Cooperの番号)が記載されているが、取っ手などの青地(この青は染付けではなく、上絵である。)を担当した職人の番号は記載されていないことから、1780年代中盤というよりは、終盤から1790年代前半にかけて作られたものだと考えられる。
本品で特に興味深いのは、裏面に複数のマークが刻み込まれていることである。具体的には、"No77"、"2 Size"、"△"、そして"773"である。(ペアの両方に同じように刻まれている。)
最初の"No77"は型番である(ダービー「D3-16」参照)。
次の"2 Size"は、この形には複数サイズがあり、本品は2番目のサイズであることを示している。上記1774年のカタログに掲載されている作品の高さは6インチ(約15cm)とされているので、それが一番大きいサイズで、本品(高さ11cm。ダービー「D3-16」は12cmだが同サイズと見ていいであろう。)は2番目ということになる。
その次の"△"は、リペアラーであるJoseph Hillが使用したマークである。
最後の"773"は難物である。型番77と何か関係があるのか、何らかの通し番号か、あるいは素地が作られた年が1773年だったのか、いずれも推測の域を出ず、実際のところは不明である。(ダービー(D3-22)及びダービー(D3-24)を参照。)
高さ(H):11cm
マーク:裏面に暗褐色で「王冠、交差するバトンと点及びD」及びマーク左下の高台内側に数字の「3」。裏面に刻んだ「No77, 2 Size, △, 773」。裏面に3つの眼跡。
Marks: <Crown, CrossedBatons&Dots and D> painted in puce on the bottom. A gilder's numeral <3> painted in puce near the foot rim. Incised <N77, 2 Size, △, 773> on the bottom. Three stilt marks on the back.
(2014年2月掲載)